【朗報】体型に自信のなかったこの俺が、筋トレしたらチート級の筋肉になった! ちょっと魔王倒してくる!【ラノベ】

ネコ飼いたい丸

文字の大きさ
31 / 42

第三十一話 穴の中

しおりを挟む

「それじゃ、『せーのっ!』でこの穴に飛び込むわよっ!」

 ルナが掛け声をかける。

 ふたりは手をつないだまま、穴の中に飛び込んだ。

 …………。

 穴の中は真っ暗で何もみえない。

 オリバはルナのほうを振り返る。

 ルナの体は魔法の淡い光で輝いている。
 オリバの体も淡く光っている。

 この穴の中に光は存在しないみたいだ。
 何も見えない。
 何も聞こえない。

 ふたりはトロトロした真っ黒な液体の中を下へ下へ落ちていく。
 堕ちていく。

 …………。

 ふたりは落ち続ける。

 …………。

「何か来るわよっ!」

 数時間は落ち続けただろうか。
 突然、ルナがささやいた。

 オリバは全神経を集中させる。

 もの凄く大きなものがふたりの前をゆっくり横切っている。

 それが何かは分からない。
 ただ目の間を通り過ぎている。

 ふたりの存在に気づいていないみたいだ。

 オリバたちは息を殺してそれが通り過ぎるのを待つ。

 …………。

 下へ下へ落ち続けながら、それが通り過ぎるのを辛抱強く待つ。

 …………。

「……どっかへいったみたいだな」

 オリバがささやく。

「ええ。あれは魔物だろうけど、こんな水の中で戦うのは避けたいわ」

 ルナは息を吐いて安堵する。

 ふたりはなおもどんどん底へ沈んでいく。

 岩みたいにごつごつしたものの上にふたりは降り立った。

「穴の底に着いたのかしら?」

 ルナが周りをキョロキョロする。

「かもな。でも、周りは真っ暗で何も見えないし、これからどうするか……」

「待って! 何か変よ! 魔物の気配を感じるっ!! こんな暗闇であたりを照らせば私たちの存在がバレて危険だけど……それでもやるわよ!」

 ルナは魔法を唱え、杖の先端から強烈な光を発する。

 あたり一面が照らされる。

 オリバは上を見上げた。

 そこには巨大は歯が規則正しく何層にも並んでいた。

 足元にも目を向ける。

 オリバたちは巨大な歯の上に立っていた。

「まずいわっ! ここは魔物の口の中よ! 歯が下りてくる!! 魔法は間に合わないっ! オリバ、防いで!」

 ルナが怒鳴る。

 オリバは魔物の歯を両手で受け止める。

 魔物はオリバを噛みちぎろうと、さらに噛む力を強める。

 オリバの体がどんどん沈んでいく。

 オリバの尻が魔物の下の歯に着きそうになる。

「うおぉぉぉおーー!!」

 オリバは向こう側の筋肉を総動員させる。

 魔物の歯を少しずつ押し返し、オリバの膝も伸び始める。

 しかし、オリバは魔物の歯を完全には押し返さずに、またしゃがみ込んだ。

 そしてもう一度、魔物の歯を押し返す。

「オリバ! 何やってるのよ!? こいつは私たちを食べるつもりよ! 早く逃げるのっ!!」

「わかってるっ! でも……こいつの噛む力は脚のトレーニングにちょうどいいんだ! 今日は脚の筋トレ日だ。しゃがんで立ち上がるこのトレーニングがスクワットって種目だ!」

 オリバは目を輝かせながらスクワットを続ける。

「アホかっ!! 命の危険が迫ってるのよ? 私が魔法でやっつけるわっ!」

 ルナは杖を前にだした。

「あっ、ちょっと待ってくれ! あともう1セットだけ……」

 オリバが言い終えないうちにルナは魔法を発動する。

「催眠魔法! ネムリープ!!」

 ルナの杖から光が発せられる。

 魔物は口を大きく開いたまま動かなくなった。

「ぐっすり眠ったみたいね。ほら、さっさとここから抜け出すわよ」

 ルナはそう言い、ふたりは魔物の口から抜け出す。

 魔物の正体は目がない大きなウナギのような怪物だった。
 口を開けてぐっすり眠っている。

「キモっ! これがさっき私たちの前を横切ったやつの正体ね。私たちに気づいてたのね」

 ルナが苦々しく言った。

「でも俺たちは無事だし、脚のトレーニングもできたし、まあいいじゃん。先を急ごうぜ」

 オリバは元気よく言い、ふたりはさらに水の底へ沈んでいく。

 ほどなくして、白く光る穴が見えてきた。

 真っ暗な世界にぽっかりと光る穴が空いている。

「あれが出口よ!! あそこから邪悪な魔力が流れ出てるわっ!」

 ルナは光る穴に向かって泳いでいく。

 オリバもルナと手を繋いだままルナについて行く。

 穴から光が溢れ出ており、眩しくて穴の向こう側は見えない。

 ふたりは手を繋いだままその穴の中に入る。

 …………。

 穴をくぐり抜けると、ふたりは大地の上に立っていた。
 もう水の中ではない。

 空はドス黒い雲で覆われ、稲妻が雷鳴とともに地上に降り注いでいる。
 数多あまたのドラゴンが火を噴きながら空を飛び回っている。


 ふたりの目の前には漆黒の巨大な城がそびえ立っていた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。 古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。 これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。 その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。 隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。 彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。 一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。 痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

処理中です...