38 / 42
第三十八話 大魔王 その四
しおりを挟む
オリバはエレナの呼びかけに答えない。
口から血を流して目を閉じている。
「だから言ったのに。このスキルに弱点なんてないってね。オリバ君だけじゃなくて、キミたちふたりも生きて返さないよ。楽しかったけど、ボクの秘密を知っちゃったからね」
ケロンデウスはオリバたちに向かって近づいてくる。
あやつを倒す方法はないものかっ!?
ここでわらわたちは全滅してしまうのか……。
目を覚まさないオリバの顔を見つめながらエレナは焦る。
ふとオリバの耳に目が留まる。
エルフのように長くなったその耳に。
「ルナ! 大魔王を倒せるかもしれぬ!! どうやってオリバにエルフの生命力を与えたのか教えるんじゃ!!」
エレナは顔をルナに向ける。
「はぁ!? こんな時になに意味わかんないこといってるのよっ! 大魔王が近づいてくるわっ! 早くそこから逃げてっ!!」
ルナが怒鳴る。
「ダメじゃ、逃げられん! 意識を失っているオリバをこの場に残せるわけなかろうっ!! わらわは魔力が切れてもう魔法は使えぬ。早くその方法を教えてくれいっ!!」
「意味わかんないけど……キスよ! キスして口から生命力をオリバに移したのよ!」
釈然としない顔をしつつもルナは答える。
「そうかっ! ……ええい、ままよっ!!」
エレナはそう吐き捨て、すぅっと深呼吸し目を閉じる。
オリバに覆い被さった。
エレナの唇がオリバの唇に触れる。
ケロンデウスがふたりの前に来た。
「おやおや。こんなときに悠長だね」
キスしているふたりを見下ろしながらケロンデウスは喋り続ける。
「まあ、楽しませてもらったし、キミたちの最期くらい選ばせてあげよう。キスしながらふたりで一緒に死ぬのもロマンチックかもね。それじゃあ、さようなら!」
ケロンデウスは右手を振り上げ、ふたりに向かって振り下ろした。
…………。
「なにっ!!」
ケロンデウスは驚きの声を上げ、折れている自分の右手を不思議そうに見つめる。
オリバは床に倒れたまま右拳を天井に向けて突き立てている。
オリバの拳がケロンデウスの攻撃を打ち返したのだ。
オリバは立ち上がる。
左の瞳は青色になり髪は銀色に輝く。
右目は薄緑色、左目は青色。
エルフのように長い耳。
氷の民のような銀色に輝く髪。
今のオリバはエルフと氷の民を足し合わせたような姿だ。
「上手くいきおった! わらわの生命力をそなたに移せたぞ! エルフがスピードや攻撃回避に優れた種族ならば氷の民はその硬さが武器じゃ。オリバよ、今のそなたの拳はすべてを砕けるぞ!」
エレナは体が半透明になっている。
生命力をオリバに移したからだ。
「俺の勝ちだ!」
オリバは右拳をケロンデウスに打ち込む。
ケロンデウスは左腕で防御するがオリバの拳がケロンデウスの左腕を折り曲げる。
「肩メロン・タックル!!」
氷の民の生命力で究極に硬くなったオリバの右肩がケロンデウスの胸に食い込む。
「ゲッ!! ゲロッ……」
ケロンデウスは口から真っ黒い液体を吐き、床に膝を着いた。
オリバは攻撃を止めない。
ケロンデウスの再生能力は高い。
ここで一気に倒すしか勝ち目はない。
オリバはケロンデウスの左膝を蹴り、ケロンデウスを仰向けに倒す。
「これでトドメだっ!!」
オリバは天井高く飛び上がる。
天井を思いっきり蹴り、勢いをつけてケロンデウスの真下に急降下する。
拳を強く握り、右腕を後ろに引き絞る。
両腕が折れ、脚も破壊されているケロンデウスにオリバの攻撃はかわせない。
オリバは凄まじいスピードでケロンデウスに近づく。
ケロンデウスの腹が急激に膨らむ。
オリバに向かって何かを吐き出した。
真っ赤な風船のような巨大な虫がオリバの視界に広がる。
オリバがその虫を左手で跳ねのけた瞬間――
耳をつんざく破裂音とともに強烈な閃光が城中に広がった。
眩しくて何も見えない――
オリバは全力で右拳を打ち放つ。
オリバのパンチは床に大きな穴を作った。
……しかし、そこにケロンデウスの姿はない。
「いやー、今のは本当に危なかったよ。やるね、オリバ君。このボクが身の危険を感じたよ。随分と前に風船虫を捕食しておいて良かった。触れると猛烈な光を発して破裂する虫さ」
ケロンデウスはオリバの前に立っている。
まだ体の傷は回復しきれていない。
「無駄だ。俺に同じ手は通用しない」
オリバはケロンデウスを睨む。
「問題ないさ。もうあれを使う必要はない。今からボクは奥の手を使うからね! 目覚めよ! ドラゴンの王・暗黒竜!!」
ケロンデウスの体がさらに一回り大きくなる。
全身が固い鱗で覆われ、目は炎のように赤く輝く。
背中からは漆黒の翼が飛びだし、ドラゴンのような尻尾が生える。
「これがボクの最終形態だ! 閻魔と暗黒竜の力を獲得した魔王、それがボクだ! すべての魔王を統べる真の王と謳われる大魔王さっ!!」
ケロンデウスはドラゴンのような尻尾を鞭のようにして床を何度か叩いた。
地震が起きたかのように大地が揺れる。
「な、なんじゃあれは……。あんな魔力見たことがないっ!! 漆黒の魔力の中に青色と赤色の魔力が混じっておる! こんなことが起こりうるのか……」
エレナが呆然と大魔王を見つめる。
「オリバ君、キミはエルフと氷の民から生命力を分けてもらいその体になった。ボクは閻魔と暗黒竜を捕食してこの体になった。どっちが世界最強か決着をつけようじゃないかいっ!!」
ケロンデウスは尻尾を地面に打ちつけ大きな音をだした。
その音が戦いの合図だ。
ケロンデウスは渾身の右パンチをオリバに打ち込む。
オリバも渾身の右パンチを打ち放つ。
ケロンデウスの拳がオリバの胸にめり込み、オリバの拳はケロンデウスの頬を捉える。
「ぐはぁ……」
オリバは血を吐いて後ずさる。
ケロンデウスも牙が折れダメージを受けている。
だが、傷はすぐに回復してゆく。
自然治癒力が飛躍的に高くなっている。
「ボクのほうがずっと強いみたいだね。キミのその力は長く持たない。借りてる生命力を使い果たしたらおしまいさ。でもボクは数時間この体でいられるよ。ダメージを受けてもすぐ治癒する。キミの負けだよ、オリバ君」
ケロンデウスは勝ち誇った声で言い、オリバに詰め寄る。
ふたりは激しい殴り合いを繰り広げる。
しかし、オリバが二発攻撃するたびにケロンデウスは三発攻撃してくる。
ケロンデウスは防御を一切せず攻撃に専念してくる。
オリバはケロンデウスの顔や首など急所を攻撃するがダメージを与えてもすぐ回復してしまう。
オリバの傷はどんどん増える。
ケロンデウスは無傷だ。
「ルナ、エレナ! 今すぐ逃げろ! こいつには勝てないっ!!」
オリバはケロンデウスと殴り合いながら叫んだ。
大魔王に勝てる可能性が一切ない――
俺の体もそろそろ限界だ……。
オリバは殴り合いの中で大魔王との圧倒的な実力差を実感する。
「なにバカなこと言ってんのよっ!! あんたを置いて逃げられるわけないでしょっ!」
ルナが怒鳴る。
「そうじゃ! そなたを置いて逃げるなんて真似、できるわけなかろうっ!」
エレナも続く。
「頼む! 俺の最期の頼みだ! 逃げてくれっ!!」
オリバが悲痛な声で叫びこう続けた。
「ケロンデウスの秘密を知ってるのは俺たち三人だけだ! お前たちふたりは逃げ帰ってこいつの秘密を世界に公開してくれっ! こいつに勝てる方法が見つかるかもしれない。今の俺じゃこいつに絶対勝てない。犠牲はひとりで十分だ!!」
「ふざけないでっ! あんたを見殺しにしろっていうの!? 何もできずにお父さんとお母さんを見殺しにした私に、今度はあんたを見殺しにしろっていうの!?」
ルナは目に涙を浮かべて怒鳴った。
「ルナ、落ち着くのじゃ! オリバが正しいぞ! 魔力の切れた魔法使いふたりがここにいて何になる!? 足手まとい以外のなにものでもなかろう!」
エレナがルナをなだめる。
「いやよっ! いやっ!! 絶対ここから動かない! オリバを見捨てて逃げるくらいなら、ここで死んだほうがマシよっ!!」
ルナは叫ぶ。
その瞳から涙が流れる。
乾いた音が響いた。
エレナはルナの頬を叩いた。
「……いきなりなにすんのよっ!! 私のことなんて何にもしらな……」
ルナはエレナの顔をみて言葉を失った。
エレナは泣いていた。
青く澄んだ瞳から大粒な涙がとめどなくこぼれ落ちる。
「わらわだってこんな選択しとうない! 惚れた男を見殺すなぞしとうないわっ! わらわひとりの命ならオリバとともにここで最期を迎えたいっ! じゃが……わらわは氷の国の女王。氷の民を守る義務がある。ケロンデウスの秘密を世界に広めなくてはならぬのだ!! ルナよ、そなたもエルフの村の長じゃろう! 自分だけの命だと思うでないぞっ!!」
エレナは拳を強く握り、泣きながら歯を食いしばる。
「……わかったわよ。私はエルフの村の長、ルナ・バレンタイン! 村人の命は私が守るっ! ……行きましょう!」
ルナは覚悟を決める。
たとえこの先一生、オリバを見捨てたことを後悔しようとも、村長としての役目を果たそうと。
ふたりは泣きながら扉に向かって走りだす。
「逃がさないよ」
ケロンデウスは漆黒の翼で羽ばたき、ふたりを追った。
口から血を流して目を閉じている。
「だから言ったのに。このスキルに弱点なんてないってね。オリバ君だけじゃなくて、キミたちふたりも生きて返さないよ。楽しかったけど、ボクの秘密を知っちゃったからね」
ケロンデウスはオリバたちに向かって近づいてくる。
あやつを倒す方法はないものかっ!?
ここでわらわたちは全滅してしまうのか……。
目を覚まさないオリバの顔を見つめながらエレナは焦る。
ふとオリバの耳に目が留まる。
エルフのように長くなったその耳に。
「ルナ! 大魔王を倒せるかもしれぬ!! どうやってオリバにエルフの生命力を与えたのか教えるんじゃ!!」
エレナは顔をルナに向ける。
「はぁ!? こんな時になに意味わかんないこといってるのよっ! 大魔王が近づいてくるわっ! 早くそこから逃げてっ!!」
ルナが怒鳴る。
「ダメじゃ、逃げられん! 意識を失っているオリバをこの場に残せるわけなかろうっ!! わらわは魔力が切れてもう魔法は使えぬ。早くその方法を教えてくれいっ!!」
「意味わかんないけど……キスよ! キスして口から生命力をオリバに移したのよ!」
釈然としない顔をしつつもルナは答える。
「そうかっ! ……ええい、ままよっ!!」
エレナはそう吐き捨て、すぅっと深呼吸し目を閉じる。
オリバに覆い被さった。
エレナの唇がオリバの唇に触れる。
ケロンデウスがふたりの前に来た。
「おやおや。こんなときに悠長だね」
キスしているふたりを見下ろしながらケロンデウスは喋り続ける。
「まあ、楽しませてもらったし、キミたちの最期くらい選ばせてあげよう。キスしながらふたりで一緒に死ぬのもロマンチックかもね。それじゃあ、さようなら!」
ケロンデウスは右手を振り上げ、ふたりに向かって振り下ろした。
…………。
「なにっ!!」
ケロンデウスは驚きの声を上げ、折れている自分の右手を不思議そうに見つめる。
オリバは床に倒れたまま右拳を天井に向けて突き立てている。
オリバの拳がケロンデウスの攻撃を打ち返したのだ。
オリバは立ち上がる。
左の瞳は青色になり髪は銀色に輝く。
右目は薄緑色、左目は青色。
エルフのように長い耳。
氷の民のような銀色に輝く髪。
今のオリバはエルフと氷の民を足し合わせたような姿だ。
「上手くいきおった! わらわの生命力をそなたに移せたぞ! エルフがスピードや攻撃回避に優れた種族ならば氷の民はその硬さが武器じゃ。オリバよ、今のそなたの拳はすべてを砕けるぞ!」
エレナは体が半透明になっている。
生命力をオリバに移したからだ。
「俺の勝ちだ!」
オリバは右拳をケロンデウスに打ち込む。
ケロンデウスは左腕で防御するがオリバの拳がケロンデウスの左腕を折り曲げる。
「肩メロン・タックル!!」
氷の民の生命力で究極に硬くなったオリバの右肩がケロンデウスの胸に食い込む。
「ゲッ!! ゲロッ……」
ケロンデウスは口から真っ黒い液体を吐き、床に膝を着いた。
オリバは攻撃を止めない。
ケロンデウスの再生能力は高い。
ここで一気に倒すしか勝ち目はない。
オリバはケロンデウスの左膝を蹴り、ケロンデウスを仰向けに倒す。
「これでトドメだっ!!」
オリバは天井高く飛び上がる。
天井を思いっきり蹴り、勢いをつけてケロンデウスの真下に急降下する。
拳を強く握り、右腕を後ろに引き絞る。
両腕が折れ、脚も破壊されているケロンデウスにオリバの攻撃はかわせない。
オリバは凄まじいスピードでケロンデウスに近づく。
ケロンデウスの腹が急激に膨らむ。
オリバに向かって何かを吐き出した。
真っ赤な風船のような巨大な虫がオリバの視界に広がる。
オリバがその虫を左手で跳ねのけた瞬間――
耳をつんざく破裂音とともに強烈な閃光が城中に広がった。
眩しくて何も見えない――
オリバは全力で右拳を打ち放つ。
オリバのパンチは床に大きな穴を作った。
……しかし、そこにケロンデウスの姿はない。
「いやー、今のは本当に危なかったよ。やるね、オリバ君。このボクが身の危険を感じたよ。随分と前に風船虫を捕食しておいて良かった。触れると猛烈な光を発して破裂する虫さ」
ケロンデウスはオリバの前に立っている。
まだ体の傷は回復しきれていない。
「無駄だ。俺に同じ手は通用しない」
オリバはケロンデウスを睨む。
「問題ないさ。もうあれを使う必要はない。今からボクは奥の手を使うからね! 目覚めよ! ドラゴンの王・暗黒竜!!」
ケロンデウスの体がさらに一回り大きくなる。
全身が固い鱗で覆われ、目は炎のように赤く輝く。
背中からは漆黒の翼が飛びだし、ドラゴンのような尻尾が生える。
「これがボクの最終形態だ! 閻魔と暗黒竜の力を獲得した魔王、それがボクだ! すべての魔王を統べる真の王と謳われる大魔王さっ!!」
ケロンデウスはドラゴンのような尻尾を鞭のようにして床を何度か叩いた。
地震が起きたかのように大地が揺れる。
「な、なんじゃあれは……。あんな魔力見たことがないっ!! 漆黒の魔力の中に青色と赤色の魔力が混じっておる! こんなことが起こりうるのか……」
エレナが呆然と大魔王を見つめる。
「オリバ君、キミはエルフと氷の民から生命力を分けてもらいその体になった。ボクは閻魔と暗黒竜を捕食してこの体になった。どっちが世界最強か決着をつけようじゃないかいっ!!」
ケロンデウスは尻尾を地面に打ちつけ大きな音をだした。
その音が戦いの合図だ。
ケロンデウスは渾身の右パンチをオリバに打ち込む。
オリバも渾身の右パンチを打ち放つ。
ケロンデウスの拳がオリバの胸にめり込み、オリバの拳はケロンデウスの頬を捉える。
「ぐはぁ……」
オリバは血を吐いて後ずさる。
ケロンデウスも牙が折れダメージを受けている。
だが、傷はすぐに回復してゆく。
自然治癒力が飛躍的に高くなっている。
「ボクのほうがずっと強いみたいだね。キミのその力は長く持たない。借りてる生命力を使い果たしたらおしまいさ。でもボクは数時間この体でいられるよ。ダメージを受けてもすぐ治癒する。キミの負けだよ、オリバ君」
ケロンデウスは勝ち誇った声で言い、オリバに詰め寄る。
ふたりは激しい殴り合いを繰り広げる。
しかし、オリバが二発攻撃するたびにケロンデウスは三発攻撃してくる。
ケロンデウスは防御を一切せず攻撃に専念してくる。
オリバはケロンデウスの顔や首など急所を攻撃するがダメージを与えてもすぐ回復してしまう。
オリバの傷はどんどん増える。
ケロンデウスは無傷だ。
「ルナ、エレナ! 今すぐ逃げろ! こいつには勝てないっ!!」
オリバはケロンデウスと殴り合いながら叫んだ。
大魔王に勝てる可能性が一切ない――
俺の体もそろそろ限界だ……。
オリバは殴り合いの中で大魔王との圧倒的な実力差を実感する。
「なにバカなこと言ってんのよっ!! あんたを置いて逃げられるわけないでしょっ!」
ルナが怒鳴る。
「そうじゃ! そなたを置いて逃げるなんて真似、できるわけなかろうっ!」
エレナも続く。
「頼む! 俺の最期の頼みだ! 逃げてくれっ!!」
オリバが悲痛な声で叫びこう続けた。
「ケロンデウスの秘密を知ってるのは俺たち三人だけだ! お前たちふたりは逃げ帰ってこいつの秘密を世界に公開してくれっ! こいつに勝てる方法が見つかるかもしれない。今の俺じゃこいつに絶対勝てない。犠牲はひとりで十分だ!!」
「ふざけないでっ! あんたを見殺しにしろっていうの!? 何もできずにお父さんとお母さんを見殺しにした私に、今度はあんたを見殺しにしろっていうの!?」
ルナは目に涙を浮かべて怒鳴った。
「ルナ、落ち着くのじゃ! オリバが正しいぞ! 魔力の切れた魔法使いふたりがここにいて何になる!? 足手まとい以外のなにものでもなかろう!」
エレナがルナをなだめる。
「いやよっ! いやっ!! 絶対ここから動かない! オリバを見捨てて逃げるくらいなら、ここで死んだほうがマシよっ!!」
ルナは叫ぶ。
その瞳から涙が流れる。
乾いた音が響いた。
エレナはルナの頬を叩いた。
「……いきなりなにすんのよっ!! 私のことなんて何にもしらな……」
ルナはエレナの顔をみて言葉を失った。
エレナは泣いていた。
青く澄んだ瞳から大粒な涙がとめどなくこぼれ落ちる。
「わらわだってこんな選択しとうない! 惚れた男を見殺すなぞしとうないわっ! わらわひとりの命ならオリバとともにここで最期を迎えたいっ! じゃが……わらわは氷の国の女王。氷の民を守る義務がある。ケロンデウスの秘密を世界に広めなくてはならぬのだ!! ルナよ、そなたもエルフの村の長じゃろう! 自分だけの命だと思うでないぞっ!!」
エレナは拳を強く握り、泣きながら歯を食いしばる。
「……わかったわよ。私はエルフの村の長、ルナ・バレンタイン! 村人の命は私が守るっ! ……行きましょう!」
ルナは覚悟を決める。
たとえこの先一生、オリバを見捨てたことを後悔しようとも、村長としての役目を果たそうと。
ふたりは泣きながら扉に向かって走りだす。
「逃がさないよ」
ケロンデウスは漆黒の翼で羽ばたき、ふたりを追った。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる