1 / 17
第1話 追放
しおりを挟む「ノーズよ。おぬしは勇者にふさわしくない。今すぐこの場から立ち去るがよい!」
ハイデン国王の威厳に満ちた声が城内に響き渡る。
「えっ……いま、なんとおっしゃいましたか?」
国王の言葉が理解できずに俺は思わず聞き返す。
「お前はもう必要ないと言っているのだ! おぬしのスキル名を言ってみよ!!」
国王は軽蔑の眼差しを俺に向ける。
「鼻毛無双で――」
「そんなスキルの勇者がいるかっ!! 勇者は国の顔! 他国に笑われるじゃろう!」
俺の言葉をさえぎる国王。
「……人気もたしかに大事です。ですが、勇者の仕事はモンスターを倒すこと。俺はこの鼻毛無双で誰よりも多くのモンスターを倒してきました!」
数百年前から恐れられた龍の王・黒龍も討伐した。
南部にある人類未踏の最難関ダンジョンも攻略した。
この王国の歴史上、俺はもっとも武功を上げた勇者と言いきれる自信がある。
「我が王国内に強いモンスターはもうおらぬ。最難関ダンジョンも攻略済みじゃ。これから重要になるのは武力ではない! 国民に支持される、人気のある勇者じゃ!!」
「これからもっと人気がでるように努力します! どうかチャンスをください!!」
「人気がでるじゃと……おぬしは鏡を見たことがあるのか?」
「もちろんございます。何か問題ありますでしょうか?」
手渡された鏡で自分の顔を確認する。
いつもと変わりない。
「何が問題かじゃと!? おぬしの鼻をよーく見てみろ!!」
鼻に注目してもう一度鏡を覗き込む。
「いつも通りです。何も問題が見当たりません」
「鼻毛が飛び出ているだろう! ハ・ナ・ゲがっ!! 鼻毛が飛び出ている勇者なんぞ聞いたことがない!!」
「これは飛び出ているのではありません! 敢えて鼻から出しているのです。鼻毛は俺の武器。いつどこで敵に襲われても対処できるように、使い勝手の良い鼻毛を一本だけ出しているのです!」
「黙れ!! 鼻毛が飛び出ていることに変わりない!! HA・NA・GEが!!」
「この鼻毛のおかげで敵の襲撃を何度もしのいでおります! この鼻毛は鼻毛ナンバー074『推しの毛ん』といいます!」
「知るかっ!」
「程よいコシとしなやかさを持ち、攻防一体に優れた中太鼻毛となります」
「おぬしの鼻毛に興味はない!!」
顔を真っ赤にする国王。
「鼻毛は平等です。絶世の美女にも、国を治める国王様にも鼻毛は生えています。鼻毛は人間の一部です。逆に言えば、人間は鼻毛の一部です」
「人間は鼻毛の一部!?」
「はい。昔の哲学者がこう言いました。『人間は考える鼻毛である』と」
「それは『人間は考える葦』じゃろう!?」
「そうとも言います。俺が言いたいことは、鼻毛を忌み嫌う必要はないということです。鼻毛は私たちの役に立っています。鼻毛によって私たちは生かされているといっても過言ではありません」
「過言じゃ!!」
「鼻毛を一本抜いてみてください。痛いです。人はそうやって痛みを知って、他人の痛みも分かる優しい大人になれるんです」
「黙れ! さっきからこの神聖な謁見の間でハナゲ、ハナゲと連呼しおって! 鼻毛の話はもうたくさんじゃ!!」
怒りで鼻の穴を大きく膨らませる国王。
心なしか国王の鼻毛たちが悲しんでいる気がする。
国王は高齢ながら端正な顔立ちをしている。その容姿ゆえに女性からの支持が高い。
しかし、見た目で人を評価するところが以前から気にはなっていた。
「ノーズよ、いますぐこの国を去れ! この国にお前のような鼻毛が飛び出た勇者は不要!! これが最後の通告じゃ!」
親衛隊が俺の周りを取り囲む。
「……わかりました。今すぐ国を出ます……」
国王に逆らえば反逆者として投獄。
俺に選択肢はない。
やりきれない気持ちを押し殺し、それだけ言って城を去った。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました
黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった!
これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。
地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。
魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。
これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。
「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる