23 / 37
第23話 第3階層 ボス その2
しおりを挟む「さて、そろそろ私の番とさせていただきますよ」
リーマン鈴木はメガネを外し、目を大きく見開く。
「みんな、気をつけろ! 仕掛けてくるぞ!!」
ハヤトは防御態勢をとる。
「いや~~~それにしても、最近の女子高生は発育がいいですね~」
リーマン鈴木はホノカ、レナ、リンの胸や足を凝視する。
「最低っ! 無遠慮に私の体を見てくる! ……え、私のライフが!」
レナのライフが70になる。
ホノカとリンのライフも70になる。
レナは急いで盾で体を隠す。
ホノカとリンもレナの後ろに隠れる。
「見るのはタダですから! これが私のスキル『がん見』です! 精神ダメージを与えるので防御力は関係ありませんよ。いやー愉快ですね! うひゃひゃひゃ、昭和、昭和!」
リーマン鈴木は満足げに笑う。
「最低のオヤジねっ! 恥を知りなさいっ!!」
レナはリーマン鈴木を睨みつける。
「恥ですか? ジロジロ見て欲しいから、そんなセクシーな恰好をしているんでしょう? 見てあげてるんですから、むしろ感謝して欲しいものですね~」
「くっ……完全に開き直ってるのがまたムカつくわ!!」
レナは歯ぎしりする。
「あのくしゃみを防がないとリーマン鈴木に近づけない。魔法でどうにかならないか?」
ハヤトはヨウスケに目配せする。
「う、うん! やってみるよ! ランダム魔法!!」
ヨウスケのマジックポイントが70になる。
杖の上に文字が浮かび上がる。
『魔法:風切りのマント』
『発動条件:中学時代に考えた中二病的な名前とその効果を述べよ』
「えぇっ! 恥ずかしい! 黒歴史を引っ張り出すなんて!」
ヨウスケは耳を赤くする。
「やったぜ、相棒! 風切りのマント! このマントをまとえば風を無効化できる! あの馬鹿でかいくしゃみもへっちゃらだぜ!」
「バロン君……ボクは魔法を使うたびにどんどん痛い人になっていく気がするよ……」
遠い目をするヨウスケ。
「大丈夫よ、ヨウスケくん。安心しなさい。だってあなたは既に痛いもの。痛い人がもっと痛い人になったところで、一般人からしたら大差ないわ」
「リンさん!? ボクもその一般人なんですけどっ!?」
「はいはい。そうですね。ヨウスケくんの言う通りです。まったく……『そっち側の人間』はいつもそう言うのよねぇ」
リンはタメ息をつく。
「『そっち側の人間』ってなにっ!?」
「相棒! 早く発動条件をクリアするんだ! 魔法はまっちゃくれねぇぜ!!」
「わ、わかったよ、バロン君! なんか釈然としないけど、ボク頑張るよ! 2年B組 飯田 陽介、中学時代に考えた中二病的な名前とその効果を発表します!!」
ヨウスケは顔を赤くする。
大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「永遠悪夢剣! この剣に切られたものは一生、悪夢を見続けます!!」
……
静寂が訪れる。
「お、おう……その……相棒は良くやったぜ……。人によって感じ方はそれぞれだしなっ! ユニークなネーミングセンスだとオイラは思うぜっ!!」
「恥ずかしいー! こうなるって分かってたけど!!」
ヨウスケはしゃがみこんで両手で顔を隠す。
「と、とにかくっ! 中二病的な名前にはちげえねぇ! 発動条件クリアだ! いくぜ! 風切りのマント!!」
バロンは叫ぶ。
ハヤトたちの周りに緑色の光が集まってくる。
光は形を変え、緑色のマントとなる。
「ナイス、ヨウスケ! これで攻撃できる!」
ハヤトはリーマン鈴木に突撃する。
「ハッ……ハッ……ハックショォォォーン、ウェ~イ!」
リーマン鈴木はクシャミをする。
「クシャミのバリエーションを増やしてきたっ!? でも、俺たちにはもう効かないぞ!」
ハヤトは爆風の中を潜り抜ける。
リーマン鈴木にパンチを打ち込む。
「ほいっ!」
リーマン鈴木はハヤトのパンチを広げた新聞で受け止める。
「もらったでゴザル! 永遠悪夢剣!!」
ハヤトの後ろからレンタロウが飛びだす。
リーマン鈴木の頭に刀を打ち下ろす。
「あいたっ!」
リーマン鈴木のライフが90になる。
髪の毛が数本抜け、バーコード頭がさらに薄くなる。
「あぁっ! 私の大切な髪の毛がっ! ダメージを受けると髪の毛が抜ける仕様なんです」
リーマン鈴木は悲しそうに床に落ちた抜け毛を見つめる。
「レンタロウくん! ボクの黒歴史で遊ばないでよっ!!」
ヨウスケは涙目になる。
「固いことを言うなでゴザル。発表してしまった以上、もうみんなの永遠悪夢剣でゴザル。プークスクス!」
レンタロウは頬を膨らませて笑う。
「油断しましたねぇ。ここからは本気でいきますよ。これ以上、髪を失うわけにはいきませんから」
メガネ越しにリーマン鈴木は鋭い視線をハヤトたちに投げる。
ポケットからネクタイを取り出して頭にまいた。
「これで戦闘能力アップです。攻撃力と防御力が格段に向上しました。さっきみたいにはいきませんよ!」
リーマン鈴木は不敵の笑みを浮かべる。
「あ、あいつ、やりやがった……漫画の世界でしか見たことない伝説の儀式・頭ネクタイ!! こいつはヤバいぞ!!」
ハヤトの額から冷や汗が流れる。
「ほんとね……見てっ! リーマン鈴木から溢れ出るダメ人間オーラ!! 近づくだけでこっちまでニートになりそうよっ! あいつ、帰りの電車で絶対に缶チューハイ飲んでるわよっ!!」
レナは目を大きく見開く。
「当然です。電車は動く居酒屋。電車内で缶チューハイと唐揚げさんを食べる! これが私の生きがいです。社内ニートをしたあとの酒は上手いですよ~」
リーマン鈴木はヨダレを袖でぬぐう。
「こいつやっぱり最低でゴザルっ! 武士道に反してるでゴザル!」
「元気がいいですね、レンタロウくんは。あなたを見ていると私の若い頃を思いだしますよ」
リーマン鈴木は満面の笑みをレンタロウに向ける。
「だから拙者はリーマン鈴木殿と全然似てないでゴザルよっ!!」
「いいえ、瓜二つです。今もまるで、鏡に向かって話しているようです」
リーマン鈴木は満足気に頷く。
「ハ、ハヤト殿! こいつを早くやっつけてくれでゴザル! いくら拙者でも精神ダメージがでかいでゴザルよ!!」
レンタロウはハヤトに泣きつく。
「では……そろそろいきますよ」
リーマン鈴木はハヤトを見つめてニヤリとする。
丸めた新聞紙をハヤトに向かって打ち下ろす。
ハヤトは左腕で新聞紙を受け止める。
リーマン鈴木は左手でハヤトの頬にビンタを打ち込む。
ハヤトは右腕で防ぐ。
「フッ……私には腕が三本あるんですよ」
リーマン鈴木はニヤリとする。
頭を大きく横に振る。
頭についているネクタイが鞭のようにしなりハヤトの胸に直撃する。
「ぐあぁっ!」
ハヤトは後ろに吹き飛ばされる。
ライフが60になる。
「ハヤト先輩っ!! 一発必中!」
ホノカは矢を射る。
「無駄だと言ってるでしょう。ハッ……ハッ……ハックショォォォーイ! あ~こんにゃろうっ!」
リーマン鈴木はくしゃみで矢を弾き返す。
「ヨウスケくん。魔法をバンバン使うわよ。あいつはこのダンジョンのボス。魔法を出し惜しみする必要はないわ。具現化! 魑魅魍魎!!」
リンは『四字熟語辞典』を開く。
マジックポイントが70になる。
ページからぬらりひょん、座敷わらし、ろくろ首、雪女、子泣き爺と次々に妖怪が溢れ出す。
「オレっち頑張るニャン! リーマン鈴木に突撃だニャン!!」
腹巻を巻いたオレンジ色の猫型妖怪が叫ぶ。
妖怪たちはリーマン鈴木に襲い掛かる。
「ヘッ……ヘッ……ヘックショォォォオーーン! チックショー!」
リーマン鈴木が妖怪たちに向かってクシャミをする。
爆風で先頭にいた妖怪たちが吹き飛ばされる。
後方にいた子泣き爺と雪女は爆風をきり抜ける。
「おぎゃぁ! おぎゃぁ!」
子泣き爺はリーマン鈴木に抱きついて泣き始める。
「なっ、体が重いっ!! 動けないっ……」
リーマン鈴木の両足が床にめり込む。
「わらわの雪で永遠に眠るがよい……」
雪女の口から吹雪が発生し、リーマン鈴木に直撃する。
「くっ……! なんて冷たい雪! ちゃんと働いている社員が私を見る目みたいに冷たい!!」
リーマン鈴木は震える。
ライフは60になり、バーコード頭がいよいよ薄くなる。
「しかしっ!! 着物の谷間もいいですね~」
リーマン鈴木は鼻の下を伸ばしながら雪女の胸元を凝視する。
「えっ……ひゃぁ!!」
雪女は顔を赤くして胸元を両手で隠す。
吹雪が止まる。
「隙ありっ!!」
リーマン鈴木は頭を強く横に振る。
頭に巻いていたネクタイがブーメランのように回転しながら雪女に向かって飛んでゆく。
「きゃぁあっ!!」
ネクタイが雪女に当たり、雪女は煙となって消える。
ネクタイの勢いは衰えない。
弧を描きリーマン鈴木のもとに戻ってくる。
リーマン鈴木にしがみ付いている子泣き爺にネクタイがヒットする。
「オギャ!!」
子泣き爺は短い悲鳴をあげて煙となる。
「今度はボクの番だ! ランダム魔法!!」
ヨウスケのマジックポイントが40になる。
杖の上に文字が浮かび上がった。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった
久遠翠
ファンタジー
平凡こそが至高。そう信じて生きる高校生・神谷湊に発現したスキルは【1日1回ガチャ】。出てくるのは地味なアイテムばかり…と思いきや、時々混じるSSS級の神アイテムが、彼の平凡な日常を木っ端微塵に破壊していく!
ひょんなことから、クラス一の美少女で高嶺の花・月島凛の窮地を救ってしまった湊。正体を隠したはずが、ガチャで手に入れたトンデモアイテムのせいで、次々とボロが出てしまう。
「あなた、一体何者なの…?」
クールな彼女からの疑いと興味は、やがて熱烈なアプローチへと変わり…!?
平凡を愛する男と、彼を最強だと勘違いしたクール美少女、そして秘密を抱えた世話焼き幼馴染が織りなす、勘違い満載の学園ダンジョン・ラブコメ、ここに開幕!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる