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第23話 第3階層 ボス その2
しおりを挟む「さて、そろそろ私の番とさせていただきますよ」
リーマン鈴木はメガネを外し、目を大きく見開く。
「みんな、気をつけろ! 仕掛けてくるぞ!!」
ハヤトは防御態勢をとる。
「いや~~~それにしても、最近の女子高生は発育がいいですね~」
リーマン鈴木はホノカ、レナ、リンの胸や足を凝視する。
「最低っ! 無遠慮に私の体を見てくる! ……え、私のライフが!」
レナのライフが70になる。
ホノカとリンのライフも70になる。
レナは急いで盾で体を隠す。
ホノカとリンもレナの後ろに隠れる。
「見るのはタダですから! これが私のスキル『がん見』です! 精神ダメージを与えるので防御力は関係ありませんよ。いやー愉快ですね! うひゃひゃひゃ、昭和、昭和!」
リーマン鈴木は満足げに笑う。
「最低のオヤジねっ! 恥を知りなさいっ!!」
レナはリーマン鈴木を睨みつける。
「恥ですか? ジロジロ見て欲しいから、そんなセクシーな恰好をしているんでしょう? 見てあげてるんですから、むしろ感謝して欲しいものですね~」
「くっ……完全に開き直ってるのがまたムカつくわ!!」
レナは歯ぎしりする。
「あのくしゃみを防がないとリーマン鈴木に近づけない。魔法でどうにかならないか?」
ハヤトはヨウスケに目配せする。
「う、うん! やってみるよ! ランダム魔法!!」
ヨウスケのマジックポイントが70になる。
杖の上に文字が浮かび上がる。
『魔法:風切りのマント』
『発動条件:中学時代に考えた中二病的な名前とその効果を述べよ』
「えぇっ! 恥ずかしい! 黒歴史を引っ張り出すなんて!」
ヨウスケは耳を赤くする。
「やったぜ、相棒! 風切りのマント! このマントをまとえば風を無効化できる! あの馬鹿でかいくしゃみもへっちゃらだぜ!」
「バロン君……ボクは魔法を使うたびにどんどん痛い人になっていく気がするよ……」
遠い目をするヨウスケ。
「大丈夫よ、ヨウスケくん。安心しなさい。だってあなたは既に痛いもの。痛い人がもっと痛い人になったところで、一般人からしたら大差ないわ」
「リンさん!? ボクもその一般人なんですけどっ!?」
「はいはい。そうですね。ヨウスケくんの言う通りです。まったく……『そっち側の人間』はいつもそう言うのよねぇ」
リンはタメ息をつく。
「『そっち側の人間』ってなにっ!?」
「相棒! 早く発動条件をクリアするんだ! 魔法はまっちゃくれねぇぜ!!」
「わ、わかったよ、バロン君! なんか釈然としないけど、ボク頑張るよ! 2年B組 飯田 陽介、中学時代に考えた中二病的な名前とその効果を発表します!!」
ヨウスケは顔を赤くする。
大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「永遠悪夢剣! この剣に切られたものは一生、悪夢を見続けます!!」
……
静寂が訪れる。
「お、おう……その……相棒は良くやったぜ……。人によって感じ方はそれぞれだしなっ! ユニークなネーミングセンスだとオイラは思うぜっ!!」
「恥ずかしいー! こうなるって分かってたけど!!」
ヨウスケはしゃがみこんで両手で顔を隠す。
「と、とにかくっ! 中二病的な名前にはちげえねぇ! 発動条件クリアだ! いくぜ! 風切りのマント!!」
バロンは叫ぶ。
ハヤトたちの周りに緑色の光が集まってくる。
光は形を変え、緑色のマントとなる。
「ナイス、ヨウスケ! これで攻撃できる!」
ハヤトはリーマン鈴木に突撃する。
「ハッ……ハッ……ハックショォォォーン、ウェ~イ!」
リーマン鈴木はクシャミをする。
「クシャミのバリエーションを増やしてきたっ!? でも、俺たちにはもう効かないぞ!」
ハヤトは爆風の中を潜り抜ける。
リーマン鈴木にパンチを打ち込む。
「ほいっ!」
リーマン鈴木はハヤトのパンチを広げた新聞で受け止める。
「もらったでゴザル! 永遠悪夢剣!!」
ハヤトの後ろからレンタロウが飛びだす。
リーマン鈴木の頭に刀を打ち下ろす。
「あいたっ!」
リーマン鈴木のライフが90になる。
髪の毛が数本抜け、バーコード頭がさらに薄くなる。
「あぁっ! 私の大切な髪の毛がっ! ダメージを受けると髪の毛が抜ける仕様なんです」
リーマン鈴木は悲しそうに床に落ちた抜け毛を見つめる。
「レンタロウくん! ボクの黒歴史で遊ばないでよっ!!」
ヨウスケは涙目になる。
「固いことを言うなでゴザル。発表してしまった以上、もうみんなの永遠悪夢剣でゴザル。プークスクス!」
レンタロウは頬を膨らませて笑う。
「油断しましたねぇ。ここからは本気でいきますよ。これ以上、髪を失うわけにはいきませんから」
メガネ越しにリーマン鈴木は鋭い視線をハヤトたちに投げる。
ポケットからネクタイを取り出して頭にまいた。
「これで戦闘能力アップです。攻撃力と防御力が格段に向上しました。さっきみたいにはいきませんよ!」
リーマン鈴木は不敵の笑みを浮かべる。
「あ、あいつ、やりやがった……漫画の世界でしか見たことない伝説の儀式・頭ネクタイ!! こいつはヤバいぞ!!」
ハヤトの額から冷や汗が流れる。
「ほんとね……見てっ! リーマン鈴木から溢れ出るダメ人間オーラ!! 近づくだけでこっちまでニートになりそうよっ! あいつ、帰りの電車で絶対に缶チューハイ飲んでるわよっ!!」
レナは目を大きく見開く。
「当然です。電車は動く居酒屋。電車内で缶チューハイと唐揚げさんを食べる! これが私の生きがいです。社内ニートをしたあとの酒は上手いですよ~」
リーマン鈴木はヨダレを袖でぬぐう。
「こいつやっぱり最低でゴザルっ! 武士道に反してるでゴザル!」
「元気がいいですね、レンタロウくんは。あなたを見ていると私の若い頃を思いだしますよ」
リーマン鈴木は満面の笑みをレンタロウに向ける。
「だから拙者はリーマン鈴木殿と全然似てないでゴザルよっ!!」
「いいえ、瓜二つです。今もまるで、鏡に向かって話しているようです」
リーマン鈴木は満足気に頷く。
「ハ、ハヤト殿! こいつを早くやっつけてくれでゴザル! いくら拙者でも精神ダメージがでかいでゴザルよ!!」
レンタロウはハヤトに泣きつく。
「では……そろそろいきますよ」
リーマン鈴木はハヤトを見つめてニヤリとする。
丸めた新聞紙をハヤトに向かって打ち下ろす。
ハヤトは左腕で新聞紙を受け止める。
リーマン鈴木は左手でハヤトの頬にビンタを打ち込む。
ハヤトは右腕で防ぐ。
「フッ……私には腕が三本あるんですよ」
リーマン鈴木はニヤリとする。
頭を大きく横に振る。
頭についているネクタイが鞭のようにしなりハヤトの胸に直撃する。
「ぐあぁっ!」
ハヤトは後ろに吹き飛ばされる。
ライフが60になる。
「ハヤト先輩っ!! 一発必中!」
ホノカは矢を射る。
「無駄だと言ってるでしょう。ハッ……ハッ……ハックショォォォーイ! あ~こんにゃろうっ!」
リーマン鈴木はくしゃみで矢を弾き返す。
「ヨウスケくん。魔法をバンバン使うわよ。あいつはこのダンジョンのボス。魔法を出し惜しみする必要はないわ。具現化! 魑魅魍魎!!」
リンは『四字熟語辞典』を開く。
マジックポイントが70になる。
ページからぬらりひょん、座敷わらし、ろくろ首、雪女、子泣き爺と次々に妖怪が溢れ出す。
「オレっち頑張るニャン! リーマン鈴木に突撃だニャン!!」
腹巻を巻いたオレンジ色の猫型妖怪が叫ぶ。
妖怪たちはリーマン鈴木に襲い掛かる。
「ヘッ……ヘッ……ヘックショォォォオーーン! チックショー!」
リーマン鈴木が妖怪たちに向かってクシャミをする。
爆風で先頭にいた妖怪たちが吹き飛ばされる。
後方にいた子泣き爺と雪女は爆風をきり抜ける。
「おぎゃぁ! おぎゃぁ!」
子泣き爺はリーマン鈴木に抱きついて泣き始める。
「なっ、体が重いっ!! 動けないっ……」
リーマン鈴木の両足が床にめり込む。
「わらわの雪で永遠に眠るがよい……」
雪女の口から吹雪が発生し、リーマン鈴木に直撃する。
「くっ……! なんて冷たい雪! ちゃんと働いている社員が私を見る目みたいに冷たい!!」
リーマン鈴木は震える。
ライフは60になり、バーコード頭がいよいよ薄くなる。
「しかしっ!! 着物の谷間もいいですね~」
リーマン鈴木は鼻の下を伸ばしながら雪女の胸元を凝視する。
「えっ……ひゃぁ!!」
雪女は顔を赤くして胸元を両手で隠す。
吹雪が止まる。
「隙ありっ!!」
リーマン鈴木は頭を強く横に振る。
頭に巻いていたネクタイがブーメランのように回転しながら雪女に向かって飛んでゆく。
「きゃぁあっ!!」
ネクタイが雪女に当たり、雪女は煙となって消える。
ネクタイの勢いは衰えない。
弧を描きリーマン鈴木のもとに戻ってくる。
リーマン鈴木にしがみ付いている子泣き爺にネクタイがヒットする。
「オギャ!!」
子泣き爺は短い悲鳴をあげて煙となる。
「今度はボクの番だ! ランダム魔法!!」
ヨウスケのマジックポイントが40になる。
杖の上に文字が浮かび上がった。
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