Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

文字の大きさ
12 / 229
01 チュートリアル

12 Baltroy (二回目の二回目)

しおりを挟む
 息を切らせながら、ヴェスタの目を見る。眉根を寄せている。ひたいに玉のように汗が浮かんで、唇を白くなるまで噛み締めている。全然優しくできなかった………全く。全然。情けない。

「……ほんとごめん。ありがとう。大丈夫か?」
「……大丈夫…」

 思えばこいつの一回目も酷かった。こんなに怖がらせて痛がらせて、こういうことをどんな風に思ってしまったんだろう。無性に申し訳ない。取り消したい。そういうもんじゃないんだって。

「あのな。俺が言うなって話だけど」
「……?」
「なんつーか……これはやっちゃだめなやつなんだ。こういうもんだと思ってほしくない」
「……こういう……」
「お前、これが我慢するもんだと思ってるだろ。俺が悪いんだけど……」
「……………」
「なんて言ったらいいのか……」

 わかんないよな。だってちゃんとやったことないんだもん。

「……まあ、やってみっか?」

 ヴェスタがものすごく訝しげに見つめてくる。そりゃそうだ。

「もし嫌じゃなきゃさ。ほんとのやつ」

 はっとヴェスタが短くため息をついたのがわかった。うんとは言わねえよなと思ったが、意外にも青とも緑ともつかない髪はこくりと縦に揺れた。

 まじか。

「……どうも」

 ……改めてヴェスタの白い頬に触れる。少し緊張する。今度こそ優しくする。唇を重ねる。少しヴェスタは震えている。

「……ごめん。怖い思いさせてごめん。目をつぶってていいから。誰か好きなやつのこと考えてていいから」

 ヴェスタが青緑色の瞳で俺を見上げる。

「まだいねぇか。好きなやつなんて。ほんとは好きなやつとすることなんだぜ、これ」

 それなのにこんなことしてごめん。あんな無理矢理やって。もう一度キスする。もう一度。恋人がするキス。キスしていると時々ヴェスタがぴくんと反応する。頬が赤くなっている。肌と肌が触れ合っているところが気持ち良すぎる。こいつの肌、本当に綺麗なんだよなあ。さらさらしているのに、抱きしめると吸い付く。

「……で、も……」
「余計なこと考えんな。集中して」

 どこだ。ヴェスタが熱くなるようなところは。ゆっくり優しく体を撫でる。できるだけ、ゆっくり。指先だけで探る。耳をやわらかく噛む。白い首筋。脇腹をすっと撫でた時、ヴェスタがぱっと俺の腕を掴んだ。

「……くすぐったい?」
「……」

 ヴェスタが首を左右に振る。息が上がっている。腰を抱き寄せる。体ごと抱きついてくる。またキス。ヴェスタのものが充血している。触れる。また手を白い手が遮る。

「ダメ……さわらな……で」

 無言でその手を振り払う。包むようにして先を弄る。

「あ………! は……」

 いつの間にか髪の色が淡くなって、アイスグリーンに輝く。きれいな色。中に指を入れる。肩を強く掴まれる。目に涙が滲んでいる。

「大丈夫。痛くしないから」

 どれだけ怖い思いをさせたんだろうか。ゆっくり、ゆっくり、指を進める。中は熱い。絡み付いてくる。脚が震えている。内腿にキスする。空いた手でヴェスタのものを刺激しながら、中を探る。

「……う…あっ」

 びくっと膝が動く。ここかな……指をもう一本入れる。同じところに触れる。体が反応している。ヴェスタの白い肌から汗が吹き出している。でもさっきまでの冷や汗ではない。

「そこ……やめて」

 もう一本指を増やす。じわじわと撫で回す。ヴェスタがシーツをぎゅっと掴む。気持ちいい? 自分も興奮している。

「バル……」
「……どした?」
「……バルは? 気持ちいいの?」

 気持ちいい。すごく。キスする。指をゆっくりと抜く。代わりにガチガチのを当てる。たぶん入る。ヴェスタの体を傷つけずに。突き入れるというよりは、沈み込むように入っていく。ヴェスタは声にならない声を上げて、思い切り肩を握った。爪が食い込んで皮膚が切れる。

「……痛いか?」

 ヴェスタは短く息をしている。少しだけ首を横に振る。さらさらとほとんど白い髪が揺れる。首に腕を回してぎゅっと抱きついてくる。なめらかな肌が汗でしっとりと吸い付く。もっと。もっと。もっと優しく、ゆっくり……。できればヴェスタが焦れてしまうくらいに。ゆっ……くりと出し入れする。ヴェスタの感じるところを、嬲るように。

「は……っ……やだ……」

 動きを止めてヴェスタに向き合う。涙が枕に流れている。

「痛い?」
「わかんない……怖い。そこばっか……やめて」
「大丈夫だから」

 キスする。ヴェスタの細い指が俺のうなじに爪を立てる。白い脚が俺の腰に巻きつく。必死な感じ。

 かわいい。

 もう少しだけ早くする。しつこいくらいに「そこばっか」を攻める。やだ。ヴェスタが泣き声混じりに言う。

「やだ! やだあ」

 拒否の言葉に誘われてもっと早く。ひたいとひたいをつける。汗が混じるのが見える。

「だめ。なにか出ちゃう……」

 掠れた声でヴェスタが言う。いけ。ぎゅうぎゅうに締め付けられる。いってくれ。

「怖い!」
「怖くない」
「……!」

 ヴェスタががくがくと身体を震わせて果てた。俺も二回目の吐精をする。

「は……」

 ヴェスタと目が合う。どちらからともなく唇を重ねた。

「ん……」

 すごく気持ちがいい。指を絡める。細い、おもちゃみたいな白い指……。

 こんなにほっとするセックスはいつぶりなんだろうか。満ち足りる。いつもは獣みたいにがっついてたから……

 ……………
 ……………………………いやいやいやいや、まずいよな。まずい。だめだ。我ながら最低だ。完全に浮気じゃねえか。なんだこのキスは。何のキスだ。唇が離れる。まだとろんとした色っぽい顔つきのヴェスタ。白っぽいパールグリーンの髪が頬に落ちかかっている。こいつ。ぞくっとするほどきれいだ。何で今まで気がつかなかったんだろう……でも。

「ヴェスタ。ごめん」
「……あ……」

 ヴェスタの髪がゆっくりと色味を増し、ブルーに近づいて行く。ブルーグリーンを通り、群青を通り越して紺に。ヴェスタが肘をついてゆっくり体を起こす。体が重そうだ。

「……うん。わかってるよ……」

 もうしないと言って。やっぱりやって。自己満足のために恋人みたいに抱いて。何をやってんだ俺は。二回目はどう考えても余計だろ。

「ごめん」
「もうやめて。いいよ。誰にも言わないから」

 今日誘ったのは俺だし、とヴェスタは小さな声で言った。その献身が余計に辛かった。







 その本当にすぐ後から、ヴェスタはまるで何事もなかったかのように普通にシャワーを浴び、レッダが用意した飯を食い、自分の部屋に入って行った。

 俺も切り替えないと。もうしない。何回思ったのかな。もうしない……。イグニスにもヴェスタにも悪い。もうしない。でも本当に一体なんなんだろう。一度医者に行った方がいいんだろうか。でもそうしたらあのことも話さないといけない。

「あーあ……」

 休みなのにものすごく疲れた。




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)

おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが… *オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ *『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖
BL
溺愛ドS社長×ツンデレ高校生。年の差恋愛。社長からの告白と束縛に戸惑う高校生。すれ違いばかりの片想いから恋人同士へ。ひねくれもの天使的な高校生と心を閉ざした会社社長との年の差BL。中山夏樹(18)は従姉妹の結婚式の2次会で、倒れてきた酔っ払いの下敷きになり左手に怪我を負った。助けてくれたのが、会場レストラン経営の黒崎ホールディングス代表取締役社長・黒崎圭一(33)。左手の抜糸がすむまで黒崎の車で送迎されることになった。黒崎は誰にも心を開かない。夏樹も同じである。しかしながら、夏樹は黒崎の前だけは自分の意思とは反対に、本音を吐き出す。2人は孤独を抱えており、夏樹は黒崎に惹かれていく。黒崎は夏樹に一目惚れし、執着する。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

処理中です...