22 / 229
02 潜入捜査
01 Vesta (オーナーのこと)
しおりを挟む好きだと伝えたはずだった。
万感の想いを込めてキスしたつもりだった。
バルが俺を抱えて高さ7メートルからダイブしてから半年。相変わらずバルと暮らしている。
あれ以降も二人でたくさんのレプリカントの保護や人身売買の関係者を逮捕していた。俺のことをバルがいない隙にセクサロイドってからかう人もいるにはいるけど、最近ではもうそれほど気にならない。でも。
公私共にずっと一緒。仲も良くなったと思う。バルが格段に俺のことを信頼してくれているのはしっかりと感じている。でも。
でも。
セックスもキスもあれっきりだった。セックスはイグニスの香水をつけて発情させてしたのが最後。キスはバルが入院中にしたのが最後。「そういうんじゃない」って確かに言われた気はするけど、こんなにすっとかわされるとは……。
俺は好きだってわかってもらったと思ったんだけど。その気持ちには応えられないということなんだろうか。
ベッドのサイドボードにある、イグニスのバッグからこっそり拝借して、それきりになったガラスの香水瓶を見る。まだ半分ほど中身が入ったまま。これさえ付けたら抱いてはもらえると思う。でもそれは俺がして欲しいやつじゃないし、バルもあとで死ぬほど怒るだろう。
「~~~~」
つらい。ちょっとした時にふっと頭をくしゃくしゃと撫でてくれたり、肩をぽんぽんと抱いてくれたりはするけど、単にボディタッチという感じ。他の仲のいい人たちにもバルは平気でやる。頭を撫でるのはやってるの見たことないかな……。
仕方ないんだと思う。だって最初から俺はバディとしての発注だったんだから。あの時は発情させられて仕方なく身近にいた俺としただけ。俺がバルを好きだからっていうのは、俺の方の都合。
バディとしてはすごく評価してもらってるし、これ以上なく大切にされてると思う。みんなから言われたもんな。バルがバディを庇って入院したなんて初めてだって。
だから。欲を出してるのは俺だけなんだよ。バディとしてバルと仕事できるだけで幸せと思わなくちゃ。そうそう……。
「ヴェスタ。夕飯ができましたよ」
ホームキープドロイドのレッダに呼ばれてリビングに入ると、俺の分しか夕食がなかった。
「バルは?」
「先ほど、今日は遅くなるからヴェスタの分だけ作ってくれとオーダーがありました」
「……恋人でもできた? 最近多いよね」
「さあ。どうでしょうね」
「レッダ。教えてよ」
「私は憶測でものを言わないことにしているんですよ」
これも俺がつらくなる要因の一つだった。バルに恋人ができてしまったらどうしよう。目の前にいないと胸が掻きむしられるようだ。病気だ。バルは全然俺のものじゃないのに。
バルのことは一番最初に名乗られた時にもう好きになっていた。
真っ黒な髪と真っ黒な瞳、気の強そうな一文字のまゆ。高い背。態度は素っ気なかったけど、一から十まで丁寧になんでも教えてくれた。良かったと思った。この人が俺のオーナーで良かった。
だから初めての時もあんなに乱暴にされたのはびっくりしたし、怖かったし痛かったしショックだったし、バルには恋人がいるのにって少し悲しかったけど、気持ちを立て直せた。俺だって基礎知識で知ってる。言われるまでもない、俺たちの前身はセクサロイドだもん。これがこの人の求める形ならそれでもいい。
でももうしないと頭を下げられた。「あんなひどいこと」とバルは言った。だから二回目は本当にバルが必死で堪えてるのがわかって、胸が潰れそうになった。においでおかしくなってるだけで、俺に乱暴にするのは本意じゃないんだって気づいた。
俺は別に構わない。そんなにつらい思いをバルにさせたいんじゃない。俺はバルを楽にできるのならなんでもする。二回目の二回目は夢みたいだった。気持ち良すぎて死んでしまうと思った。バルは本当は好きなやつとやるんだと言ったけど、まさにバルこそがその好きな人だった。終わった後、バルにとってはそうじゃないことを思い出して今度は死にたくなった。あんなに気持ちよくてあんなに苦しいことはなかった。
「……ねえレッダ、告白しても返事がもらえなかった時ってどうすればいいの」
「時と場合によりますね。拒否されたのでなければもう一度当たってみるのも一つの方法でしょう」
「えー……」
「気持ちというものは伝えたつもりでもうまく伝わっていないことが多いようですよ」
「……」
10
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
恋人はメリーゴーランド少年だった。
夏目奈緖
BL
溺愛ドS社長×ツンデレ高校生。年の差恋愛。社長からの告白と束縛に戸惑う高校生。すれ違いばかりの片想いから恋人同士へ。ひねくれもの天使的な高校生と心を閉ざした会社社長との年の差BL。中山夏樹(18)は従姉妹の結婚式の2次会で、倒れてきた酔っ払いの下敷きになり左手に怪我を負った。助けてくれたのが、会場レストラン経営の黒崎ホールディングス代表取締役社長・黒崎圭一(33)。左手の抜糸がすむまで黒崎の車で送迎されることになった。黒崎は誰にも心を開かない。夏樹も同じである。しかしながら、夏樹は黒崎の前だけは自分の意思とは反対に、本音を吐き出す。2人は孤独を抱えており、夏樹は黒崎に惹かれていく。黒崎は夏樹に一目惚れし、執着する。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした
圭琴子
BL
この世界は、αとβとΩで出来てる。
生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。
今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。
βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。
小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。
従って俺は戸籍上、β籍になっている。
あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。
俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。
今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。
だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。
だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。
学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。
どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。
『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
