63 / 229
03 トライアル (1)マリーン探し
14 Vesta (プライズ・ゲーム)
しおりを挟む
次の週末は雨だったので、エアランナーの操縦はお休みになった。天気が悪いと面倒なことが多いらしい。その代わり、アラスターがゲームの続きをやろうと言った。「迎えにいくから」。
「バルも行こうよ?」
「最近やってないからなあ。行くか」
気が変わらないうちにアラスターにバルも行くよって連絡する。すごく嬉しい。バルがやってるとこを見たい。アラスターは四人乗りのオートキャリアで来てくれた。
「すごい、にこにこだね。ヴェスタ」
髪の色も戻したから、自分がはしゃいでるのがわかってちょっと恥ずかしい。バルと休みの日にどこかに遊びに行くのなんて初めてかもしれない。目的のものがある買い物とか、食事には連れてってくれるんだけど……。
ゲームセンターに着いてブースに入る。雨だからなのか、あまり混んでいない。
「どうする? まずヴェスタのを進める?」
「まずバルとアラスターの見たい!」
「じゃあそうしようか」
アラスターがバルに銃とベッドセットを渡す。二人が位置につく。モードが表示される。ベリーハード……。二段階上だった。
全然違う。まず雑魚敵も頭に一発では死なない。本当に脳天ど真ん中にヒットすればクリティカルと出て死ぬこともある。数も多い。見ていると確かにバルが凄い。クリティカル率が高くてアラスターの方までカバーしているのがわかる。あーもう! かっこいい。
「ボス?」
「かな」
ざっと雑魚敵の群れが両側に引けていく。空中から何かが落ちてくるムービー。目が六つあって口が縦に裂けた、腕が六本ある怪物か立ち上がって駆け寄ってくる。
「目を撃ってみようかな」
「よろしく、バル。俺は胴体削ってみる」
俺がやってるノーマルモードとちがって、弱点が光ったりしない。バルは攻撃をうまく避けながら、六つの目を順に潰していく。敵もかなり動き回るのに、なんで当てられるんだろう。
目が一つ潰れるたび、怪物はギャァと叫んで大きく体を反らせる。最後の一つを撃ち抜く。ムービーに入る。終わり? 縦に裂けた口がさらに大きく裂けて、別な形に変わる。
「第二形態があるやつか」
「長いね」
今度は目が体中にあって手が伸び縮みするようになった。さすがにバルからも血しぶきのグラフィックが出る。
「うーん、ヴェスタ、どこが弱点だと思う?」
バルが尋ねてきた。ばっとアラスターから血が飛び散って、「DEAD」と文字が出る。プレイヤーはバルだけ。
「瞬きしてる目玉かな? 多分六つあると思う」
「よし」
一つ目の目玉が潰れる。すごい。見とれていると、アラスターがとんとんと俺の肩を叩いて銃とヘッドセットを渡してきた。
「あと20秒でライフが戻るから、ヴェスタやってみて」
えっ! ベリーハードだろ。
「すぐ死んじゃうよ!」
「大丈夫だよ。セーブしてあるし。ほら始まるよ」
画面にカウントダウンが始まっている。慌てて入る。
「おっ。ヴェスタか」
バルもライフが半分くらいになっている。二つ目の目が潰れていた。あと四つ!
「三つしか目視できない。背中にあるんだと思う。あいつの背中に回れるか?」
「腕が怖い。援護してくれれば」
「わかった」
バルがわかったと言ったんだ。腕のことは考えないで走る。ぼたっと足元にボスの腕の一本が落ちるグラフィック。ほらね。背中のど真ん中にとりわけ大きな、ばちんばちんとまばたきするやつがついている。引き金を引く。怪物が叫ぶ。
「こいつの右肩頼む」
戻りついでに言われた通り右肩の目を撃つ。これでいくつ?
「ギャオオオオオ」
怪物が膝をつくムービーが始まる。
「クリア」
「ほんと?」
「ほんと。ヴェスタ、よくやった」
ぱちぱちとアラスターが拍手してくれた。
「すごいね、ヴェスタ上手。弱点見つけるのも早いし。2Pが俺だったらクリア出来なかったかも」
上手なのはバルだと思うけど、嬉しい。次は俺の続きをアラスターとやる。ベリーハードの後だと、エネミーの動きがとてもゆっくりに見える。楽勝!
ボス戦が終わったところで、アラスターのブリングがチカチカ光っているのに気がついた。
「あれ何?」
「あーあ……エマージェンシーコールだ。緊急召集だよ。行かないといけない。楽しかったよ、またね」
「おう、気をつけて」
「またね!」
アラスターが駆け足で行ってしまった。バルと二人になる。
「続きする?」
「ところが。セーブデータは全部アラスターのカードに入ってんだな」
「ふふっ」
仕方なくブースを出る。気がつかなかったけど、いろんなゲーム機がある。スロット、エアホッケー、ルーレット。
「あれは何?」
「プライズ」
「プライズ?」
「景品を狙ってアームを動かしたり、何か当てたりするやつ。やってみっか?」
手前にあったやつを覗いてみる。沢山の雑貨が一つ一つ透明の箱に収まって並んでいるところに、上下左右に青い光点が走っていく。
「これは目押しするやつだな。あの青い光を景品の箱のストライクゾーンで止められたらゲット」
バルがIDカードを当てると、ゲームが走り出した。光点は結構なスピードで動き回っている。全然ちょうどいいところで止められる気がしない。
「速いー! バルやって!」
「適当でいいんだよ、遊びなんだから」
バルの手がボタンを押した。
「YOU GOT IT」
花火が上がるグラフィックがマシンのガラス面に浮かび、ごとんと何かが出てきた。
「すごい。何これ?」
「全然狙ってなかった。何それ」
青いマグカップだった。陶器でできている。シンプルでいい大きさ。
「マグだ! これもらっていい? 俺、この前割っちゃって……」
バルがちらっとマグを見た。
「青か。ちょっと待て」
もう一度光点が走り出す。さっきより注意深くバルはタイミングを見ている。なんだろう? 欲しいのがあったのかな?
「ほれ。こっちにしな」
またごとんと何かが出てきたので拾う。今度はきれいなグリーンのマグだ。青いのと色違い。
「ヴェスタは緑だろ」
「えー! いいの?」
「うん」
ぱっと振り返ったバルがくすっと笑った。
「同じ色になってる」
プライズのガラスに髪が映った。明るいグリーン。だって仕方ないだろ。こんなの嬉しすぎる。
「大事にする」
「しなくていい。一回2クレジットだぞ」
「バルはなんでも上手だね」
「ゲームなんかうまくったってしょうがねえよ」
家に帰るとレッダが二つのマグを洗って棚に入れてくれた。
「明日から使いますね。グリーンがヴェスタのでブルーがバルですね」
「うん!」
「はは」
その日からは、朝コーヒーを出してもらうたびに髪がマグと同じ色になった。
「バルも行こうよ?」
「最近やってないからなあ。行くか」
気が変わらないうちにアラスターにバルも行くよって連絡する。すごく嬉しい。バルがやってるとこを見たい。アラスターは四人乗りのオートキャリアで来てくれた。
「すごい、にこにこだね。ヴェスタ」
髪の色も戻したから、自分がはしゃいでるのがわかってちょっと恥ずかしい。バルと休みの日にどこかに遊びに行くのなんて初めてかもしれない。目的のものがある買い物とか、食事には連れてってくれるんだけど……。
ゲームセンターに着いてブースに入る。雨だからなのか、あまり混んでいない。
「どうする? まずヴェスタのを進める?」
「まずバルとアラスターの見たい!」
「じゃあそうしようか」
アラスターがバルに銃とベッドセットを渡す。二人が位置につく。モードが表示される。ベリーハード……。二段階上だった。
全然違う。まず雑魚敵も頭に一発では死なない。本当に脳天ど真ん中にヒットすればクリティカルと出て死ぬこともある。数も多い。見ていると確かにバルが凄い。クリティカル率が高くてアラスターの方までカバーしているのがわかる。あーもう! かっこいい。
「ボス?」
「かな」
ざっと雑魚敵の群れが両側に引けていく。空中から何かが落ちてくるムービー。目が六つあって口が縦に裂けた、腕が六本ある怪物か立ち上がって駆け寄ってくる。
「目を撃ってみようかな」
「よろしく、バル。俺は胴体削ってみる」
俺がやってるノーマルモードとちがって、弱点が光ったりしない。バルは攻撃をうまく避けながら、六つの目を順に潰していく。敵もかなり動き回るのに、なんで当てられるんだろう。
目が一つ潰れるたび、怪物はギャァと叫んで大きく体を反らせる。最後の一つを撃ち抜く。ムービーに入る。終わり? 縦に裂けた口がさらに大きく裂けて、別な形に変わる。
「第二形態があるやつか」
「長いね」
今度は目が体中にあって手が伸び縮みするようになった。さすがにバルからも血しぶきのグラフィックが出る。
「うーん、ヴェスタ、どこが弱点だと思う?」
バルが尋ねてきた。ばっとアラスターから血が飛び散って、「DEAD」と文字が出る。プレイヤーはバルだけ。
「瞬きしてる目玉かな? 多分六つあると思う」
「よし」
一つ目の目玉が潰れる。すごい。見とれていると、アラスターがとんとんと俺の肩を叩いて銃とヘッドセットを渡してきた。
「あと20秒でライフが戻るから、ヴェスタやってみて」
えっ! ベリーハードだろ。
「すぐ死んじゃうよ!」
「大丈夫だよ。セーブしてあるし。ほら始まるよ」
画面にカウントダウンが始まっている。慌てて入る。
「おっ。ヴェスタか」
バルもライフが半分くらいになっている。二つ目の目が潰れていた。あと四つ!
「三つしか目視できない。背中にあるんだと思う。あいつの背中に回れるか?」
「腕が怖い。援護してくれれば」
「わかった」
バルがわかったと言ったんだ。腕のことは考えないで走る。ぼたっと足元にボスの腕の一本が落ちるグラフィック。ほらね。背中のど真ん中にとりわけ大きな、ばちんばちんとまばたきするやつがついている。引き金を引く。怪物が叫ぶ。
「こいつの右肩頼む」
戻りついでに言われた通り右肩の目を撃つ。これでいくつ?
「ギャオオオオオ」
怪物が膝をつくムービーが始まる。
「クリア」
「ほんと?」
「ほんと。ヴェスタ、よくやった」
ぱちぱちとアラスターが拍手してくれた。
「すごいね、ヴェスタ上手。弱点見つけるのも早いし。2Pが俺だったらクリア出来なかったかも」
上手なのはバルだと思うけど、嬉しい。次は俺の続きをアラスターとやる。ベリーハードの後だと、エネミーの動きがとてもゆっくりに見える。楽勝!
ボス戦が終わったところで、アラスターのブリングがチカチカ光っているのに気がついた。
「あれ何?」
「あーあ……エマージェンシーコールだ。緊急召集だよ。行かないといけない。楽しかったよ、またね」
「おう、気をつけて」
「またね!」
アラスターが駆け足で行ってしまった。バルと二人になる。
「続きする?」
「ところが。セーブデータは全部アラスターのカードに入ってんだな」
「ふふっ」
仕方なくブースを出る。気がつかなかったけど、いろんなゲーム機がある。スロット、エアホッケー、ルーレット。
「あれは何?」
「プライズ」
「プライズ?」
「景品を狙ってアームを動かしたり、何か当てたりするやつ。やってみっか?」
手前にあったやつを覗いてみる。沢山の雑貨が一つ一つ透明の箱に収まって並んでいるところに、上下左右に青い光点が走っていく。
「これは目押しするやつだな。あの青い光を景品の箱のストライクゾーンで止められたらゲット」
バルがIDカードを当てると、ゲームが走り出した。光点は結構なスピードで動き回っている。全然ちょうどいいところで止められる気がしない。
「速いー! バルやって!」
「適当でいいんだよ、遊びなんだから」
バルの手がボタンを押した。
「YOU GOT IT」
花火が上がるグラフィックがマシンのガラス面に浮かび、ごとんと何かが出てきた。
「すごい。何これ?」
「全然狙ってなかった。何それ」
青いマグカップだった。陶器でできている。シンプルでいい大きさ。
「マグだ! これもらっていい? 俺、この前割っちゃって……」
バルがちらっとマグを見た。
「青か。ちょっと待て」
もう一度光点が走り出す。さっきより注意深くバルはタイミングを見ている。なんだろう? 欲しいのがあったのかな?
「ほれ。こっちにしな」
またごとんと何かが出てきたので拾う。今度はきれいなグリーンのマグだ。青いのと色違い。
「ヴェスタは緑だろ」
「えー! いいの?」
「うん」
ぱっと振り返ったバルがくすっと笑った。
「同じ色になってる」
プライズのガラスに髪が映った。明るいグリーン。だって仕方ないだろ。こんなの嬉しすぎる。
「大事にする」
「しなくていい。一回2クレジットだぞ」
「バルはなんでも上手だね」
「ゲームなんかうまくったってしょうがねえよ」
家に帰るとレッダが二つのマグを洗って棚に入れてくれた。
「明日から使いますね。グリーンがヴェスタのでブルーがバルですね」
「うん!」
「はは」
その日からは、朝コーヒーを出してもらうたびに髪がマグと同じ色になった。
10
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
恋人はメリーゴーランド少年だった。
夏目奈緖
BL
溺愛ドS社長×ツンデレ高校生。年の差恋愛。社長からの告白と束縛に戸惑う高校生。すれ違いばかりの片想いから恋人同士へ。ひねくれもの天使的な高校生と心を閉ざした会社社長との年の差BL。中山夏樹(18)は従姉妹の結婚式の2次会で、倒れてきた酔っ払いの下敷きになり左手に怪我を負った。助けてくれたのが、会場レストラン経営の黒崎ホールディングス代表取締役社長・黒崎圭一(33)。左手の抜糸がすむまで黒崎の車で送迎されることになった。黒崎は誰にも心を開かない。夏樹も同じである。しかしながら、夏樹は黒崎の前だけは自分の意思とは反対に、本音を吐き出す。2人は孤独を抱えており、夏樹は黒崎に惹かれていく。黒崎は夏樹に一目惚れし、執着する。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした
圭琴子
BL
この世界は、αとβとΩで出来てる。
生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。
今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。
βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。
小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。
従って俺は戸籍上、β籍になっている。
あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。
俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。
今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。
だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。
だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。
学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。
どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。
『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる