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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
13 Vesta (デートの約束)
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犯人が今ひとつ絞れないまま、水曜日の当直になった。当直室に持ち込んだブリングを見ていたが、詳細なデータはデスクの端末から出せないのですぐにやめた。バルはますます女性らしい体型になっている。思わず見とれてしまう。
「ニヤニヤすんな」
「ごめん! だって……すごく美人だよ」
「美人? 母親にそっくりになったとは思うけどな」
「お母さんいるの?」
「まあ。俺は珍しく人工子宮じゃなくて、母親の腹から産まれたんだ。モデルでさ……」
納得した。そんな感じだ。
「女の人の体ってどう? やっぱり違う?」
「違うよ。全然。体が重くなったな。変なところに脂肪がついた感じ。ほら、見てみろよ」
バルがいきなりシャツの胸元をはだけたのでびっくりした。柔らかそうな胸の谷間が見えた。
「うわ」
「自分にこんなもんがつくとは思ってなかったな。違和感が半端ない」
「ふふっ……でもバルはバルだ」
その日は前回の当直と違って、八時に一回アラスターからコールが来ただけだった。またスピットをしたり、新しいゲームを教えてもらったり。のんびり。
「来週の日曜、出勤だな」
「そうだね。てか、俺ゲーム進めたい。二面で終わってるだろ。土曜日やらない?」
バルはちょっと難しい顔をした。
「うーん。アラスターとやれば?」
「だって、セーブデータはバルのカードだろ」
「ああ。ベリハはそうだな」
「ノーマルだともう面白くないよー」
「アラスターに言ってベリハで新しく始めろよ」
「なんでそんなこと言うの?」
友達ならそれくらいやったっていいだろ? なんで嫌なの?
「それくらいだめなの?」
「んー……」
バルはすごく困った顔をした。こんな顔は性転換薬を飲めって言われた時くらいしか見たことがない。
「友達とゲームを進めるのってそんなに困ること?」
「そう言われるとなあ……まあでも俺、今こんなんだからいいか」
こんなんだからいいか? よくわからないけど、土曜日にバルと出かけられることになったのはわかった。嬉しい!
「じゃあ迎えにいく! ふふふ、俺がエスコートだね」
「何がエスコートだ」
バルも笑っていた。
「ヴェスタ、これを見てみな」
「何これ」
防犯カメラの画像から、怪しいのはかなり絞れていた。ほとんど毎日ステーションに長時間いて、殺害の日だけいない人。高校生らしい人ばかり。バルが示したのは、素人が作ったらしいサイトだった。「レプリカントの見分け方」。「君の隣にいる人は実はレプリカント」とある。
サイトによると、レプリカントを見分ける方法はいくつかある。
まず美形であること。人形のような整った顔はレプリカントの可能性が高い。見分けやすいのは夜に目が光るレプリカント。そして、髪の毛。ヒューマンならありえない髪の色をしている。染めているヒューマンも多いけど、レプリカントなら生え際までいつまで経ってもありえない色のまま。
何よりレプリカントはヒューマンに危害を加えることができない。襲いかかっても抵抗できないぞ! と書かれている。
「なかなかよく見てるね」
「そう。そしてこれ」
レプリカントの代表例として上がっている女性の画像。きつめの美人だ。「マネキンみたいな美人はレプリカントの可能性が高い」。
「こんなサイトを見て、レプリカントだと思い込んでヒューマンを殺した?」
「まあ、もともとレプリカント狙いだったって仮説が正しいとしたらだぜ。抵抗されたらヒューマンだって気付きそうなもんだけど」
「そんなに抵抗できないもんなの?」
「AIが入ってれば、マリーンみたいにプログラムの書き換えでもなければヒューマンに攻撃できない……少なくとも相手を返り討ちにするようなのは。お前は抵抗できるはずだけど……」
そうだ。モンシャを助けに行った時、確かにヒューマンを撃ってる。バルのことだって一度サウンドブレイカーで撃った。今回の被害者の四人目と五人目はレプリカントだったから、ほとんど抵抗出来なかったんだ。だから暴行されて、殺されてしまった。
「………ひどい」
「ひどい」
バルは俺の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「さて。これを見ると夜に目が光って髪がとっぴな色ならまずレプリカントだと思ってもらえそうだな?」
「染めるの?」
「成功率はなるべく上げていこう。せっかくこんな体になったんだ。何でもこいだ」
「ふふふっ」
「ザムザからも連絡が来てる。来週からバルトロネちゃんがご出勤だな」
バルは開き直っているみたいだった。まあここまで外見が変わってしまったら、もうやるだけやってしまえと思うのかも知れない。
「どうするの? ここに来ないの?」
「いや。ここを上がった後、協力企業の裏口から入って正面から出る。ステーションからオートキャリアで、ザムザたちが用意したアパートに帰る」
「別なアパートに住むの?」
「そうだな。住処を特定できるくらいの頻度で画像を飛ばしたら、バグなら半日くらいでバッテリーが切れるから、朝にはまた局に出勤だ」
「バグじゃなかったら?」
「わかるんじゃないか? 何か近づいてきたら変なにおいがするだろうし」
なるほど。バルならわかるかも知れない。
「適役だね」
「喧嘩売ってんのか?」
「ニヤニヤすんな」
「ごめん! だって……すごく美人だよ」
「美人? 母親にそっくりになったとは思うけどな」
「お母さんいるの?」
「まあ。俺は珍しく人工子宮じゃなくて、母親の腹から産まれたんだ。モデルでさ……」
納得した。そんな感じだ。
「女の人の体ってどう? やっぱり違う?」
「違うよ。全然。体が重くなったな。変なところに脂肪がついた感じ。ほら、見てみろよ」
バルがいきなりシャツの胸元をはだけたのでびっくりした。柔らかそうな胸の谷間が見えた。
「うわ」
「自分にこんなもんがつくとは思ってなかったな。違和感が半端ない」
「ふふっ……でもバルはバルだ」
その日は前回の当直と違って、八時に一回アラスターからコールが来ただけだった。またスピットをしたり、新しいゲームを教えてもらったり。のんびり。
「来週の日曜、出勤だな」
「そうだね。てか、俺ゲーム進めたい。二面で終わってるだろ。土曜日やらない?」
バルはちょっと難しい顔をした。
「うーん。アラスターとやれば?」
「だって、セーブデータはバルのカードだろ」
「ああ。ベリハはそうだな」
「ノーマルだともう面白くないよー」
「アラスターに言ってベリハで新しく始めろよ」
「なんでそんなこと言うの?」
友達ならそれくらいやったっていいだろ? なんで嫌なの?
「それくらいだめなの?」
「んー……」
バルはすごく困った顔をした。こんな顔は性転換薬を飲めって言われた時くらいしか見たことがない。
「友達とゲームを進めるのってそんなに困ること?」
「そう言われるとなあ……まあでも俺、今こんなんだからいいか」
こんなんだからいいか? よくわからないけど、土曜日にバルと出かけられることになったのはわかった。嬉しい!
「じゃあ迎えにいく! ふふふ、俺がエスコートだね」
「何がエスコートだ」
バルも笑っていた。
「ヴェスタ、これを見てみな」
「何これ」
防犯カメラの画像から、怪しいのはかなり絞れていた。ほとんど毎日ステーションに長時間いて、殺害の日だけいない人。高校生らしい人ばかり。バルが示したのは、素人が作ったらしいサイトだった。「レプリカントの見分け方」。「君の隣にいる人は実はレプリカント」とある。
サイトによると、レプリカントを見分ける方法はいくつかある。
まず美形であること。人形のような整った顔はレプリカントの可能性が高い。見分けやすいのは夜に目が光るレプリカント。そして、髪の毛。ヒューマンならありえない髪の色をしている。染めているヒューマンも多いけど、レプリカントなら生え際までいつまで経ってもありえない色のまま。
何よりレプリカントはヒューマンに危害を加えることができない。襲いかかっても抵抗できないぞ! と書かれている。
「なかなかよく見てるね」
「そう。そしてこれ」
レプリカントの代表例として上がっている女性の画像。きつめの美人だ。「マネキンみたいな美人はレプリカントの可能性が高い」。
「こんなサイトを見て、レプリカントだと思い込んでヒューマンを殺した?」
「まあ、もともとレプリカント狙いだったって仮説が正しいとしたらだぜ。抵抗されたらヒューマンだって気付きそうなもんだけど」
「そんなに抵抗できないもんなの?」
「AIが入ってれば、マリーンみたいにプログラムの書き換えでもなければヒューマンに攻撃できない……少なくとも相手を返り討ちにするようなのは。お前は抵抗できるはずだけど……」
そうだ。モンシャを助けに行った時、確かにヒューマンを撃ってる。バルのことだって一度サウンドブレイカーで撃った。今回の被害者の四人目と五人目はレプリカントだったから、ほとんど抵抗出来なかったんだ。だから暴行されて、殺されてしまった。
「………ひどい」
「ひどい」
バルは俺の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「さて。これを見ると夜に目が光って髪がとっぴな色ならまずレプリカントだと思ってもらえそうだな?」
「染めるの?」
「成功率はなるべく上げていこう。せっかくこんな体になったんだ。何でもこいだ」
「ふふふっ」
「ザムザからも連絡が来てる。来週からバルトロネちゃんがご出勤だな」
バルは開き直っているみたいだった。まあここまで外見が変わってしまったら、もうやるだけやってしまえと思うのかも知れない。
「どうするの? ここに来ないの?」
「いや。ここを上がった後、協力企業の裏口から入って正面から出る。ステーションからオートキャリアで、ザムザたちが用意したアパートに帰る」
「別なアパートに住むの?」
「そうだな。住処を特定できるくらいの頻度で画像を飛ばしたら、バグなら半日くらいでバッテリーが切れるから、朝にはまた局に出勤だ」
「バグじゃなかったら?」
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