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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
17 Vesta (義務と権利)
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「おいしかったね」
「うん。おいしかった!」
アラスターが連れて来てくれたのは、新しくできた、あまり気取らないダイナーだった。海産物が看板で、見たこともない魚や貝がたくさん出て来て、わくわくしながら食事を楽しんだ。
そうなんだよ。アラスターとだって一緒にいて楽しい。一緒に食事したりどこかに行ったり。アラスターのこと嫌いじゃない。全然嫌いじゃない。大好き。
でも。
部屋に入ると、アラスターがもうキスしてきた。ベッドに直行するタイプのやつ。
「ちょっと……アラスター」
足がもつれる。ふらっと倒れそうになる。がっしり体を支えられて、うまくベッドの上に誘導される。
「あ……の……」
室内の明かりは煌々と付いたままだ。いつもそう。これも嫌だ。目を開くたびに現実に引き戻される感じがして。
「アラスター……聞いて」
じゅるっと音を立てて首筋を吸われる。また跡が残ってしまうだろう。
──レプリカントはヒューマンに抵抗できないようになってる。
違う。俺にはできるはず。でも……
例えば今、アラスターを殴ったり蹴ったりしてやめさせたら?
「……ん……っ」
彼はどう思うのかな?
「ヴェスタ……きれいな肌」
アラスターのことを傷つけたくない。悲しませたくない。そんなやり方では……
指が入ってきて、かなり奥まで探っていく。それは慣らすというよりはまるで、確認しているみたいだった。
何を?
昨日もこうだった。そしてアラスター自身が入ってきた。
「……俺がバルだったらね…」
どきっと心臓が膨らむ。
「においで分かるのかも……」
「な………にが」
アラスターがベッドに横たわって俺の体を抱き起こし、馬乗りにした。中のものの角度が変わって力が入らない。
「動いて。ヴェスタ……君の気持ちいいように」
「んん………」
これも最近は慣れた。自分で良いところにも当てられるようになった。でもこれをやる時、いつも思ってしまう。早くいって、と。早くいって。そしてちゃんと俺の話を聞いて。
自分でもこんな風に動けたのかと驚くほど、いやらしく腰を打ちつける。回して締め付ける。早く終わって。もちろん気持ちいいとは思う。それでもなお。
それでもなお、これが作業だと感じてしまうのはどうして。
「ヴェスタ……」
アラスターの熱い体液が中で爆ぜる。自分もいかなくちゃ。アラスターが……
「……く……」
頭がくらくらする。無理矢理射精に持っていく感じ。すごく疲れる。
「……シャワー浴びてくるね。それで、そしたら少し……話したいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「何?」
「大した話ではないんだ。とりあえずシャワー浴びてくるね」
疲れた。熱目のシャワーのお湯にしばらくただ打たれる。疲れた……。
足の間からアラスターの体液が流れ落ちてくる。ちゃんと出さないと後から出てくることもある。指で掻き出す。正面が湯気で曇った鏡。手で湯気を拭き取ると、くまのできた自分の顔が見えた。黄色い髪。色味の失せた青白い顔。
なんて顔してるんだ。今俺の髪は何色?
ふと思いついて、耳のすぐ手前の髪の一房だけ、カラーを落とした。ここなら普段は髪が重なって見えないし、自分には確認できる。
青い。
ため息が出た。そうだよな。だって今、ちっとも嬉しくないもの。
ランプが用意してくれた部屋着に着替えて部屋に戻ると、アラスターがソファでぼんやりとプロジェクションを眺めていた。かなり古いドキュメンタリーが流れている。
「話って何かな」
アラスターも疲れているように見える。言わなくちゃ。アラスターも疲れてるなら、もうやめよう?
「……あのね、その……毎晩だろ、これ」
「これ?」
「……セックス」
「そうだね」
「……減らさない?」
「どうして?」
どうして。どうしてかな……。作業みたいだから。そんな言い方したらいけないよね……。
「ちょっと、疲れちゃうって言うか……俺体力がないから、追いつかなくて」
「そうか……」
「あとね、できれば……できればなんだけど、一人のスペースが欲しいかなって」
「一人のスペース」
「うん。俺のデスクに衝立を付けていい? それだけでいいんだ。ちょっとだけ、なんていうか」
視線を避けられるところが欲しいんだ。
「個人的なスペースが欲しいっていうか。一人きりで考えたい時とかあって」
「そう……」
ごくんと喉が鳴った。言った。俺が言いたいことは伝えた。うまくできたかな、バル……。
「……そうか。ごめんね。俺はどっちも全然気にならなかったから、つい付き合わせてしまったね。衝立は付けたらいいよ。もちろん」
ほっと胸を撫で下ろす。あとで発注しよう。
「毎晩は辛いのか。そう言われてしまうとね……」
「気持ちいいし、アラスターが愛してるからしてくれるんだっていうのはわかってる。でもちょっと、体がついていかない時があって」
「わかったよ。なるべく続けてはしないようにするね。でも、たまにどうしても我慢できなくなるかも知れないな」
「たまにくらいならいいよ」
俺が少し笑うと、アラスターも優しく微笑んだ。大好きな顔。
「……毎晩したくなるの?」
「したくなるよ。こんなかわいい子が同じベッドにいるんだよ。したくならない方がどうかしてる」
じゃあバルは?
あの夜は結局しなかったけど、バルのは硬くなっていた。したくなってくれた? 俺の体を少しでも、抱きたいと思ってくれた? あの最後のキスは……
わからないまま。
「ベッド分ける?」
「だめ」
言い損ねたことはあった。する前にシャワーを浴びさせて欲しい。する時は明かりを落として欲しい。アラスターとは一緒に出かけてる時が一番楽しいから、休日は外に出よう。
でも今日のところはこれで精一杯。少しだけ。少しだけ自由になれた。
「うん。おいしかった!」
アラスターが連れて来てくれたのは、新しくできた、あまり気取らないダイナーだった。海産物が看板で、見たこともない魚や貝がたくさん出て来て、わくわくしながら食事を楽しんだ。
そうなんだよ。アラスターとだって一緒にいて楽しい。一緒に食事したりどこかに行ったり。アラスターのこと嫌いじゃない。全然嫌いじゃない。大好き。
でも。
部屋に入ると、アラスターがもうキスしてきた。ベッドに直行するタイプのやつ。
「ちょっと……アラスター」
足がもつれる。ふらっと倒れそうになる。がっしり体を支えられて、うまくベッドの上に誘導される。
「あ……の……」
室内の明かりは煌々と付いたままだ。いつもそう。これも嫌だ。目を開くたびに現実に引き戻される感じがして。
「アラスター……聞いて」
じゅるっと音を立てて首筋を吸われる。また跡が残ってしまうだろう。
──レプリカントはヒューマンに抵抗できないようになってる。
違う。俺にはできるはず。でも……
例えば今、アラスターを殴ったり蹴ったりしてやめさせたら?
「……ん……っ」
彼はどう思うのかな?
「ヴェスタ……きれいな肌」
アラスターのことを傷つけたくない。悲しませたくない。そんなやり方では……
指が入ってきて、かなり奥まで探っていく。それは慣らすというよりはまるで、確認しているみたいだった。
何を?
昨日もこうだった。そしてアラスター自身が入ってきた。
「……俺がバルだったらね…」
どきっと心臓が膨らむ。
「においで分かるのかも……」
「な………にが」
アラスターがベッドに横たわって俺の体を抱き起こし、馬乗りにした。中のものの角度が変わって力が入らない。
「動いて。ヴェスタ……君の気持ちいいように」
「んん………」
これも最近は慣れた。自分で良いところにも当てられるようになった。でもこれをやる時、いつも思ってしまう。早くいって、と。早くいって。そしてちゃんと俺の話を聞いて。
自分でもこんな風に動けたのかと驚くほど、いやらしく腰を打ちつける。回して締め付ける。早く終わって。もちろん気持ちいいとは思う。それでもなお。
それでもなお、これが作業だと感じてしまうのはどうして。
「ヴェスタ……」
アラスターの熱い体液が中で爆ぜる。自分もいかなくちゃ。アラスターが……
「……く……」
頭がくらくらする。無理矢理射精に持っていく感じ。すごく疲れる。
「……シャワー浴びてくるね。それで、そしたら少し……話したいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「何?」
「大した話ではないんだ。とりあえずシャワー浴びてくるね」
疲れた。熱目のシャワーのお湯にしばらくただ打たれる。疲れた……。
足の間からアラスターの体液が流れ落ちてくる。ちゃんと出さないと後から出てくることもある。指で掻き出す。正面が湯気で曇った鏡。手で湯気を拭き取ると、くまのできた自分の顔が見えた。黄色い髪。色味の失せた青白い顔。
なんて顔してるんだ。今俺の髪は何色?
ふと思いついて、耳のすぐ手前の髪の一房だけ、カラーを落とした。ここなら普段は髪が重なって見えないし、自分には確認できる。
青い。
ため息が出た。そうだよな。だって今、ちっとも嬉しくないもの。
ランプが用意してくれた部屋着に着替えて部屋に戻ると、アラスターがソファでぼんやりとプロジェクションを眺めていた。かなり古いドキュメンタリーが流れている。
「話って何かな」
アラスターも疲れているように見える。言わなくちゃ。アラスターも疲れてるなら、もうやめよう?
「……あのね、その……毎晩だろ、これ」
「これ?」
「……セックス」
「そうだね」
「……減らさない?」
「どうして?」
どうして。どうしてかな……。作業みたいだから。そんな言い方したらいけないよね……。
「ちょっと、疲れちゃうって言うか……俺体力がないから、追いつかなくて」
「そうか……」
「あとね、できれば……できればなんだけど、一人のスペースが欲しいかなって」
「一人のスペース」
「うん。俺のデスクに衝立を付けていい? それだけでいいんだ。ちょっとだけ、なんていうか」
視線を避けられるところが欲しいんだ。
「個人的なスペースが欲しいっていうか。一人きりで考えたい時とかあって」
「そう……」
ごくんと喉が鳴った。言った。俺が言いたいことは伝えた。うまくできたかな、バル……。
「……そうか。ごめんね。俺はどっちも全然気にならなかったから、つい付き合わせてしまったね。衝立は付けたらいいよ。もちろん」
ほっと胸を撫で下ろす。あとで発注しよう。
「毎晩は辛いのか。そう言われてしまうとね……」
「気持ちいいし、アラスターが愛してるからしてくれるんだっていうのはわかってる。でもちょっと、体がついていかない時があって」
「わかったよ。なるべく続けてはしないようにするね。でも、たまにどうしても我慢できなくなるかも知れないな」
「たまにくらいならいいよ」
俺が少し笑うと、アラスターも優しく微笑んだ。大好きな顔。
「……毎晩したくなるの?」
「したくなるよ。こんなかわいい子が同じベッドにいるんだよ。したくならない方がどうかしてる」
じゃあバルは?
あの夜は結局しなかったけど、バルのは硬くなっていた。したくなってくれた? 俺の体を少しでも、抱きたいと思ってくれた? あの最後のキスは……
わからないまま。
「ベッド分ける?」
「だめ」
言い損ねたことはあった。する前にシャワーを浴びさせて欲しい。する時は明かりを落として欲しい。アラスターとは一緒に出かけてる時が一番楽しいから、休日は外に出よう。
でも今日のところはこれで精一杯。少しだけ。少しだけ自由になれた。
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