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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
18 Baltroy (嫌々ながら)
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ダリル・K・ロマの顔を覚える。いつもステーションの18番乗り場のあたりの、植え込みのベンチに座っている。
家はガダラニ地区にあって、富裕層が多いところだ。私立の高校の二年生、まだ16歳だった。金髪で色白の、ごく普通の少年に見える。気弱そうな。モテそうなタイプではない。ザムザにダリルの画像を飛ばした。
『確度はどれくらい?』
「こっちの予想通りならこの子が犯人」
ウジャトが後ろで舌打ちしたのが聞こえた。
『服送ったけど届いた? レンタルだから汚さないでね』
「あー……」
女物の服。ものすごく抵抗感がある。せめてスカートではないやつを頼んだけど、ザムザのことだ。ケラケラ笑ってそんなリクエストは無かったことにしていてもおかしくない。
『声はあんまり変わらなかったから喋るなよ。頼んだぜバルトロネちゃん』
終業時間になる。今日から釣りが始まる。連続殺人犯の一本釣り。洒落にならないやつ。
「じゃーな、ヴェスタ」
「うん。がんばって」
局からは普通に私服で行く。協力してくれた企業は会議室を一部屋貸してくれているので、裏口から入って着替えて正面から出る。
ザムザから届いたものを会議室でひっくり返してみたら、緊急用のブザーの他に、かちっとしたグレーの女物のスーツと化粧品が出てきた。まじか。化粧もしないとだめか? ご丁寧にメモまで入っている。「フルメイクしろとは言わない、でも口紅だけはしろ。スーツでノーメイクは浮く」なんだこいつ。
くつは細くてぺらぺらだが、ヒールのないものだった。こんな頼りない靴履かないといけないのかよ。なんなんだ……。
何度か心が折れそうになったけど、もう女の体になった時点でじたばたしても仕方ない。ヴェスタが囮になるよりましだ。着替えて正面から出る。18番乗り場のあたりを通らないといけない。
外は薄暗くなりかけていた。このくらいから目に入れたコンタクトは光り始めるはず。でも暗視が入るわけじゃない。あいつはどこだ。自分が乗るオートキャリアは21番に着いている。18番乗り場の近くでそれとなく見回す。21番乗り場はちょっと見通しの悪いところにある。乗り場を探すふり。
いた。
防犯カメラの録画のとおり、ブリングを手に、猫背で、人の波を見ている。彼の視線の先に入る。目を止めるだろうか。植え込みの近くまで歩く。なるべく彼に視線を送らないように、あたりを見回すふり。視線を感じる。見られてる側が熱くなるようなやつだ。
もういい。十分だ。自分の乗り場に行き、オートキャリアに乗り込む。何か付いてきたか? あまり派手に見回すわけにいかない。
「あ」
急に思い出した。さっきの会議室にホルスターを置いたままだった。というか、服も靴も。服はいいけど、ホルスターと靴は困る。あーあ。明日からなんとか持ち運ばないといけない。どうすっか……。もう自宅に帰るわけにもいかない。頼めるのは一人だけ。まだいるかな? ブリングからコールする。
『どうしたの?』
「ごめん。まだ局にいるか? 頼まれて欲しいんだけど」
『ふふ。口紅』
「言うなって。あのさ、会社の貸してもらってる会議室にホルスターと服と靴が置きっぱなしなんだよ。帰りにうちに届けてもらえねえか?」
『いいよ。俺まだ入れるの?』
「うん。解除してないから入れるよ。レッダにも言っとくから」
通話終了。ヴェスタの入室を解除してないのがこんな所で役に立つとは。やれやれ。はっと息をついた時、何か小さなものが目の前を掠めた。バグだ。良かった。こんな姿になった甲斐があったってもんだ。とっとと襲いかかってくれ。頼むから。
家はガダラニ地区にあって、富裕層が多いところだ。私立の高校の二年生、まだ16歳だった。金髪で色白の、ごく普通の少年に見える。気弱そうな。モテそうなタイプではない。ザムザにダリルの画像を飛ばした。
『確度はどれくらい?』
「こっちの予想通りならこの子が犯人」
ウジャトが後ろで舌打ちしたのが聞こえた。
『服送ったけど届いた? レンタルだから汚さないでね』
「あー……」
女物の服。ものすごく抵抗感がある。せめてスカートではないやつを頼んだけど、ザムザのことだ。ケラケラ笑ってそんなリクエストは無かったことにしていてもおかしくない。
『声はあんまり変わらなかったから喋るなよ。頼んだぜバルトロネちゃん』
終業時間になる。今日から釣りが始まる。連続殺人犯の一本釣り。洒落にならないやつ。
「じゃーな、ヴェスタ」
「うん。がんばって」
局からは普通に私服で行く。協力してくれた企業は会議室を一部屋貸してくれているので、裏口から入って着替えて正面から出る。
ザムザから届いたものを会議室でひっくり返してみたら、緊急用のブザーの他に、かちっとしたグレーの女物のスーツと化粧品が出てきた。まじか。化粧もしないとだめか? ご丁寧にメモまで入っている。「フルメイクしろとは言わない、でも口紅だけはしろ。スーツでノーメイクは浮く」なんだこいつ。
くつは細くてぺらぺらだが、ヒールのないものだった。こんな頼りない靴履かないといけないのかよ。なんなんだ……。
何度か心が折れそうになったけど、もう女の体になった時点でじたばたしても仕方ない。ヴェスタが囮になるよりましだ。着替えて正面から出る。18番乗り場のあたりを通らないといけない。
外は薄暗くなりかけていた。このくらいから目に入れたコンタクトは光り始めるはず。でも暗視が入るわけじゃない。あいつはどこだ。自分が乗るオートキャリアは21番に着いている。18番乗り場の近くでそれとなく見回す。21番乗り場はちょっと見通しの悪いところにある。乗り場を探すふり。
いた。
防犯カメラの録画のとおり、ブリングを手に、猫背で、人の波を見ている。彼の視線の先に入る。目を止めるだろうか。植え込みの近くまで歩く。なるべく彼に視線を送らないように、あたりを見回すふり。視線を感じる。見られてる側が熱くなるようなやつだ。
もういい。十分だ。自分の乗り場に行き、オートキャリアに乗り込む。何か付いてきたか? あまり派手に見回すわけにいかない。
「あ」
急に思い出した。さっきの会議室にホルスターを置いたままだった。というか、服も靴も。服はいいけど、ホルスターと靴は困る。あーあ。明日からなんとか持ち運ばないといけない。どうすっか……。もう自宅に帰るわけにもいかない。頼めるのは一人だけ。まだいるかな? ブリングからコールする。
『どうしたの?』
「ごめん。まだ局にいるか? 頼まれて欲しいんだけど」
『ふふ。口紅』
「言うなって。あのさ、会社の貸してもらってる会議室にホルスターと服と靴が置きっぱなしなんだよ。帰りにうちに届けてもらえねえか?」
『いいよ。俺まだ入れるの?』
「うん。解除してないから入れるよ。レッダにも言っとくから」
通話終了。ヴェスタの入室を解除してないのがこんな所で役に立つとは。やれやれ。はっと息をついた時、何か小さなものが目の前を掠めた。バグだ。良かった。こんな姿になった甲斐があったってもんだ。とっとと襲いかかってくれ。頼むから。
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