Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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03 トライアル (3)Vesta & Baltroy

30 Vesta (核)

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 ビーコンだ。

 心臓が一気にバクバクと耳元で鳴り始めた。慌てない。慌てないで。バルは何て言った? ザムザに。ザムザに連絡して指示を待つこと。ザムザに連絡しなくちゃ。指が震える。

「ビーコン? どうしたの?」
「あ……ザムザに連絡しなくちゃ。バルが」
「落ち着いて。ザムザだね。このIDでいいかな。ザムザ・ホープ」

 もうアラスターの家に居て、夕食を食べ終わったところだった。頭が真っ白になった。バルが怪我している。

『ヴェスタ、バルに何かあったな? こっちにも緊急用ブザーの呼び出しが来てる』
「ザムザ。ビー…ビーコンの……鳴ってて」
『怪我もしてるんだな? マップは。例のアパートか?』

 慌てて確認する。そうだ。毎朝行ってるカモフラージュ用のアパート。

「そう」
『すぐ出動する。お前もできるだけ早く現場に来てくれ。俺たちは三十分くらいかかるけど、近隣の警察に行かせる』

 ふっとコールが切れた。ブリングはビーコンの情報に画面が切り替わる。出血の表示。すごい速さで出血量が増えていく。血圧がどんどん落ちて、呼吸数も減り始めている。こんな………。

「ヴェスタ、大丈夫?」
「アラスター、お願い。エアランナーを貸して! あれでならすぐ着けるから……お願い! バルが怪我してる。たぶん今、殺人鬼と一緒なんだ……」
「どういうこと?」
「お願い! なんでもする! 今、エアランナーで行かせてくれたら……なんでもするから……お願い……」

 体が震えていた。バルが死んでしまうかも知れない。

「ヴェスタ。だめだ」
「どうして! バルが死んだら俺も生きていけない!」

 言ってしまってからあっと思った。でもなりふり構っていられない。だって本当のことだ。

「………よく、聞いて。君は今エアランナーを運転できる精神状態じゃない。それに、君では怪我をしたバルをエアランナーには乗せられない。バルは体格が良すぎる。いいかい、俺が操縦する。一度局に行って、救急搬送用のエアランナーを出す。乗り換えに数分かかる。その間に君は装備を整えて、一緒に現場に行くんだ。わかった?」
「わかった……」
「行こう」

 ブリングを抱いたまま屋上に走る。局まで空からならたった5分。アラスターは操縦しながら局の整備用AIに救急搬送用のランナーの準備を頼んだ。お願い。ブリングの画面を見るのが怖い。早く早く早く。

 ──楽しんで刺してる。
 ──俺は死なないから。でも今回は……

 局が遠い。着くのと同時に飛び降りてホルスターとツールボックスを掴み、アラスターが乗った救急搬送用に走り込む。頭ががんがんして、耳に何も入ってこない。ホルスターにパルスガンを入れ、防弾シールドを張る。あとは? あとは……

「ヴェスタ、ゴーグル」
「ゴーグル……」

 ビーコンが鳴り止まない。鳴り始めてから何分? ここからあのアパートまで何分?

「大丈夫。あと6分で着く。ヴェスタ、バルだよ。彼のあだ名知ってる?『不死身のバルトロイ』だ。どんな時も彼は生還してきただろ。ねえ、君を抱いて三階から飛んでも生きてた。そうだろ?」
「……うん」

 でもバルは今、薬の影響で弱くなってるんだ。犯人の力に敵わないかも知れない。怖い。警察が先に着いてるといいけど。

「ヴェスタ、ポートがないアパートになる。アパートの真前のオートキャリア乗り場に停める。ストレッチャーを持って追うから、走って」
「うん」

 着陸態勢。もどかしい。シートベルトを外すのすら。ドアが開くのと同時に飛び出して走る。俺は死んでもいい。でもバルだけは嫌だ。まだパトカーは来ていない。早く! 三階に駆け上がる。バルの部屋のドアを開けた。

 中は真っ暗だった。足元が何かで濡れている。暗視に切り替える。床。血だ。水溜りみたいに血が。バルの血? こんなに?

「バル!」

 血の跡を追うんだ。絶対そこにバルがいるはず。血溜まりは部屋の奥に続いている。犯人の姿は見当たらない。もう出て行った? とにかくバルを見つけないと。血はリビングを通り過ぎて奥のベッドルームに続いている。

「バル! 俺だよ」
「開け」

 しっかりしたバルの声が聞こえた。良かった! ドアが開く。血塗れのバルがベッドの横に蹲っていた。

「大丈夫?!」
「は……大丈夫ではねーな。厳しい。犯人はどうした?」
「見なかった」
「……部屋の外に血の跡はあったか?」
「なかった……と思う」

 次の瞬間、明かりがぱっと着いた。バルがぐいと俺の腕を引いて床に引き倒し、俺に覆い被さった。

「ぐっ」

 バルの後ろに誰かがいる。バルが俺のホルスターからパルスガンを抜くと、後ろの男に向かって振り向きざまに撃った。

「ひっ」

 崩れるように男は床に倒れ込む。良かった……。

「……な。サイホルスターは抜きやすいけど抜かれやすい……気をつけろ」
「うん」

 バルのあごを伝って、俺のほおにバルの血がパタパタと降り注ぐ。バルの顔色がどんどん青ざめていく。ビーコンの音が大きくなる。なんで!

「バル? 何か……」
「ヴェスタ……抜いてく……れ」

 バルの体がだんだん沈んでいく。慌てて抱き止める。背中に何かがある。ナイフの……

 ナイフのつか

「バル!」
「……切っ先を……ひねらない…で…そ……の…まま……」

 死なないで。死なないで! 手が震える。怖い。

「いい……大丈夫だ……ただ……抜く」

 ただ抜く。真っ直ぐに抜く。深く刺さったそれを。手をかける。かなりしっかりと突き刺さっている……。俺が刺されそうになったから。

「………く」
「まだ泣くなよ……抜いて…からに……してく…れ」

 深呼吸して。一気に抜いた。プシュッと血が飛び散る。

「う……ぐ」
「ヴェスタ! バル!」

 アラスターが飛び込んできた。

「アラスター! バルが……バルが死んじゃう」
「死なないと信じよう。バルを渡して」

 アラスターはバルを抱き抱えてストレッチャーにゆっくりと降ろした。

「背中を刺されたんだ」
「どっち側」
「右。真ん中くらい」

 バルを横向きにすると、まだ血が傷からトクトクと湧き出していてストレッチャーは瞬く間に赤く染まった。

「いやだ! バル!」
「ヴェスタ、搬送する。離れて。君は犯人を確保しないといけない」
「………………」

 犯人なんかどうだっていい。バルと一緒に行く。叫びたかった。でもそうしたらバルが許さないと思うから、なんとか堪えて犯人に拘束具を付けた。ばたばたと足音が近づいてきて、うわ! 血が! と聞き覚えのある声がした。

「ヴェスタ!」

 ザムザとウジャトだった。

「ザムザ! お願い! 俺……出ていい?」
「あ、ああ。わかったわかった! 行け! まだ階段にいたから」
「ありがと……」

 もう駆け出していた。エアランナーにちょうど乗ったところで、俺も搬送スペースに滑り込んだ。

「犯人は?」
「ザムザに任せてきた」

 ランナーが飛び立つ。バルは顔面蒼白で目を硬く閉じている。

「バル……」
「寒いな……」

 バルが反応したので少し安心した。手に触れる。ものすごく冷たい。

「寒い? 何かかける?」
「レプリカント人権保護局救急搬送。予定通り入ります。患者は男性一名。刺創あり。かなり深いです。出血多量のためAプラスの輸血用の血液を用意願います。ハイブリッドなので一般の点滴針では輸血困難」

 応急用ロボットアームが保温用シートを掛けた。何もできない。なんて俺は役立たずなんだろう。

「ごめんね。ごめんねバル……痛いよね」

 涙が出てきた。俺が。俺が気がつかなくて……。

「怪我……?」

 バルが俺の顔を見て頬を指で差した。エアランナーの窓に顔を映す。血がついて二筋流れを作っている。

「ちがう! これはバルの血だよ。俺はどこも怪我してない……」

 バルはちょっとだけ笑った。

「よかった」

 かくんとバルの首が下がった。一気にビーコンや救急スペース内の機器が鳴り出す。

「あと2分……バル!」
「バル! バル……」
「バル。死ぬなよ。不死身のバルトロイだろ! ヴェスタ、泣くな!」

 ポートに降りるとたくさんの人が待ち構えていた。

「俺も行く!」
「身内の方ですか?」

 ぐっとつまる。身内……。俺はバルの何?

「……彼は、患者のパートナーです。ぜひ、一緒に」

 アラスターだった。びっくりして顔を見上げた。ちょっと困ったような顔をして、口の端をきゅっと上げている。

「行きな。ヴェスタ」

 頷くことしかできなかった。運ばれるバルと一緒にエレベーターに乗った。医師らしい人たちが話をしていた。

「針は。この太さで大丈夫?」
「ハイブリッドは受け入れた経験がなくて。それで詰まるか外れてしまうならどんどん換えるしかない」
「出血量は?」
「計測できただけで1.5リットル……でも再生しながらだから、倍はいってるのかも」
「縫合は普通にできるのかな」
「結索だけして様子を見る? というか、中の血管を縫うとしても手術野を短時間しか確保できないと思う」
「回復が先か失血が先かだね」

 怖い。輸血が始まる。バルの体は普通と違うから、こんな時困るんだ。

「ごめんなさい。ご家族の方、手術室前の待合室に一度出ていただけますか。何かあったらお呼びしますから」

 処置室を出される。バルは死なない。死なないはず……。体が震える。バルが死んでしまったら。自分の手が真っ赤だった。服も。バルの血。部屋の中も酷かった。あんなに……。

「バル……」

 死なないで。バルが死んだら俺も死んでしまう。バルは俺の体の外にある心臓。バルが生きてさえいれば何もいらない。

「座ったら」

 振り返った。アラスターがいた。アラスターにもバルの血がついている。首を横に振る。

「そんな場合じゃないか」

 アラスターは、近くにあったベンチにゆっくりと腰を下ろした。

「なんでもするって言ってたね、ヴェスタ」

 そうだった。言った。

「ほんとになんでもしてくれるの?」
「なんでもする」
「俺と結婚して、もう仕事をやめてって言っても?」
「なんでもする」

 バルが生きててくれれば他のことはどうでもいい。バルがもし死んでしまったら、俺のこれからなんてどうでもいい。なんでもする。どうなったって構わない。

「二度とバルに会わせなくてもいい?」

 ごくんとのどが鳴った。二度とバルに。会えない。一緒に端末を覗き込んで、あれこれ話すことも。当直でボードゲームをすることも。ゲームセンターに行くこともない。俺の人生からバルが消えてしまう。

「……いい! それでもいい! バルがどこかで生きていてくれれば!」

 ──青か……
 ──ヴェスタは、緑だろ。

「ご家族の方」

 ぱっと処置室の扉が開いた。バルのベッドに駆け寄る。ただ眠っているみたいに見える。

「こちらが処置をする前に傷口が閉じてしまって。腹腔内に出血して、輸血しながらドレーンで溜まった血を流しました。それで」

 それで?

「どうやら中の血管が繋がったようで。まもなくドレーンも抜きます。おそらく大丈夫。すごいですね。ハイブリッドの患者さんを初めて見ましたけれども、信じられない回復力」

 ほっとした。良かった。

「触れてもいいですか?」
「いいですよ。もうあとは意識さえ戻れば。今夜は入院で様子を見ますが」

 バルの顔。血塗れ。見納めかな。

「バル……」

 バルの手を取る。大きくて暖かい。暖かい……。

 俺の髪を何度もくしゃくしゃとかき回した指。あれ大好きだった。手の甲に唇を付けた。

「大好き。バル、大好き。大好き……何もできなくてごめんね。いつも……」

 迷惑ばかりかけてごめんね。俺のせいでこんなことになってごめん。

「今までありがとう……バル」
「……なんだあ? 寝言か?」

 バルが目を開けて言った。笑っている。

「意識戻りました」
「エコー……きれいなもんだ。ドレーン抜去して」
「穴、再生パッチ当てますか?」
「一応塞がるまで……いらないか。生食で洗って」
「ふふ」
「なあ? わかったか? 囮なんかなるもんじゃねえ。お前なら死んでただろ?」
「わかったよ」

 良かった。生きてくれて良かった。もう一度バルの手の甲にキスをする。この手が本当に好きだった。いつも俺を引っ張ってくれた。

「バル。元気でね……」
「ハ……どうした? もう大丈夫なんだから」
「すみません、大部屋に移しますね。面会時間過ぎてますので、ご家族の方はまた明日以降お願いします。夜間通用口からお帰りください」

 バルはバイタルチェックのリストバンドひとつでベッドのままどこかに運ばれて行った。横を通る時、ちょっとだけ手を振ってくれた。扉が閉まる。


 さよなら……。


「行こうか。屋上のポートにうちのを停めてある」
「うん」

 迷わない。バルは同じ街で生きているんだ。大丈夫。明日は今日の報告を作って、引き継ぎ書を作らないと。そして……。






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