114 / 229
03 トライアル (3)Vesta & Baltroy
31 Baltroy (長所と短所)
しおりを挟む
「いやあ~、まさかのバルがやられるなんてな!」
「俺もびっくりした。初手で何か喰らったんだよな。あれなんだったんだ?」
「なんと! 犯人自作のスタンガンだ」
スタンガン!
「骨董品じゃねーか」
「あれで倒れた人をザクザク刺してたんだな。あれやられたらたしかに動けんわ」
大部屋の廊下側のベッドをあてがわれていた。本当はもう帰れるはずなんだけど、医師から組織片が欲しいと言われてまだ入院したままだ。でも今帰れと言われても困る。服がない。
ザムザとウジャトが病室に来ていた。現調の帰りに寄ってくれたらしい。
「ヴェスタは? てっきりつきっきりかと思ってた」
「来ないんだよ。俺もあいつをあてにしてたから困ってんだ。あいつしか俺の家に入れないから」
コールしても出ない。何やってんだ?
「ヴェスタが来たら打ち上げに飲み会だって言っといて。俺たちは戻って犯人と対決するわ」
軽く手を振って満面の笑みのザムザと仏頂面のウジャトが帰って行った。入れ替わるようにアラスターが入ってきた。
「よう。さすがのバルトロイも死ぬんじゃないかと思ったね」
「はは。俺もそう思った。オンコールじゃなかったのに出てくれたんだろ? ほんと助かったよ。ありがとう」
「ヴェスタに泣いて頼まれたんだ。出すしかないよ。ほら、着替え。レッダからヴェスタが受け取ったやつ」
「助かった! 恩人!」
手を差し出すと、アラスターがぐっと握った。
「ヴェスタはどうした? コールにも出ないんだけど。怪我したわけじゃないだろ?」
「んー……。さあね。怪我とかはないよ。ところでもうなんか……戻ってきた?」
確かに自分でも印象が少し変わっていると思う。昨日までのお世辞にも男には見えないという感じじゃない。
「やっぱり戻ってきてるよな。丸一日飲んでないだけなんだけど。あっという間に戻るんじゃねーのこれ」
「まあ、女性化もあっという間だったもんねえ……」
じゃあ着替えるかと服を脱いだが、アラスターは無言で立ち尽くしている。何だろうな。
「どうした? 見たいのかよ」
「ち、違う……ちょっと」
アラスターは落ち着かなそうにそばの椅子に腰掛けた。とりあえずそのまま服を着る。体はもうどこも痛くない。ナイフの刺し傷くらいだからな。
「あのな、バル。ヴェスタと結婚しようって話をしたんだ」
「…!……」
予想外なような、そうだよなというような。早いんじゃないかとは思うけど、付き合ってすぐ結婚するやつらもいるしな。半年は付き合ってるんだから普通かもしれない。どんな反応を期待されてるんだこれ。
「そうか。おめでとう」
「いや。その、お前はどう思う?」
「どう思う?」
「ちょっと真剣に考えてみてくれないか」
「え。今?」
「うん」
なんでお前らは俺を挟むんだよ。直接罵り合いでも殴り合いでもしろよ。まあどっちもそういうタイプじゃない。
「いいんじゃないか? お前がいいやつなのもヴェスタがいいやつなのも知ってる。うまくやっていけそうならさ」
そうだな。ただ。
「たださ、ヴェスタはわりと跳ねっ返りだろ」
「そう?」
「そうだよ。だから、跳ねっ返らせてやってくれよ。俺が言うことでもねーけど」
「……跳ねっ返らせる?」
「そう。好きにやらせてやってくれ」
「………そう」
アラスターが少し考えるような顔をして、困り顔で笑った。余計だったかな。
「なあ、バル。お前の方がヴェスタとの付き合いが長いだろ。ヴェスタのいいところと悪いところを教えてくれよ」
「はあ? お前がこれから学べ。俺に聞くことじゃねーだろ」
「いいじゃないか。オーナーだろ? 父親みたいなもんだろ。はなむけとしてさ」
「いいとこ?」
「10個。あげて」
「多いな! 数えねーぞ。サーモが入ってる。暗視ができる。髪の色が変わる。素直。物覚えがいい。ボードゲームが得意。真面目。いつも一生懸命。自分で考える。視点が人と違う。感情が豊か。正直。10個あったか?」
「12個あったよ。次。悪いところ」
「サーモを活用しない。感情的すぎる。うかつ。もやし。目の前のことに集中しすぎ。時々暴走する。思ってることを言わない。世間知らず。たまに駄々をこねる。自己評価低すぎ。すぐ泣く。そうだな、一番悪いとこは献身的すぎってか、自分を大事にしないとこだな。何個?」
「12個」
「ノルマクリアだな? ああ、もう一個あったな。AIが入ってないとこだな」
「それはいいところ? 悪いところ?」
「いいところだろ。そりゃ」
「そうか。まいったな……」
何が参ったんだ。アラスターはすごく変な顔をしていた。半泣き? 半笑い?
「ありがとう、バル。じゃ、また」
「いや、それはこっちの方だろ! 本当、助かった。ありがとう。またな」
しばらく病室で暇を潰していたら、医者とナースが入ってきて細胞片をむしり取っていき、もう帰っていいと言った。やれやれ。やっと帰れる。
「俺もびっくりした。初手で何か喰らったんだよな。あれなんだったんだ?」
「なんと! 犯人自作のスタンガンだ」
スタンガン!
「骨董品じゃねーか」
「あれで倒れた人をザクザク刺してたんだな。あれやられたらたしかに動けんわ」
大部屋の廊下側のベッドをあてがわれていた。本当はもう帰れるはずなんだけど、医師から組織片が欲しいと言われてまだ入院したままだ。でも今帰れと言われても困る。服がない。
ザムザとウジャトが病室に来ていた。現調の帰りに寄ってくれたらしい。
「ヴェスタは? てっきりつきっきりかと思ってた」
「来ないんだよ。俺もあいつをあてにしてたから困ってんだ。あいつしか俺の家に入れないから」
コールしても出ない。何やってんだ?
「ヴェスタが来たら打ち上げに飲み会だって言っといて。俺たちは戻って犯人と対決するわ」
軽く手を振って満面の笑みのザムザと仏頂面のウジャトが帰って行った。入れ替わるようにアラスターが入ってきた。
「よう。さすがのバルトロイも死ぬんじゃないかと思ったね」
「はは。俺もそう思った。オンコールじゃなかったのに出てくれたんだろ? ほんと助かったよ。ありがとう」
「ヴェスタに泣いて頼まれたんだ。出すしかないよ。ほら、着替え。レッダからヴェスタが受け取ったやつ」
「助かった! 恩人!」
手を差し出すと、アラスターがぐっと握った。
「ヴェスタはどうした? コールにも出ないんだけど。怪我したわけじゃないだろ?」
「んー……。さあね。怪我とかはないよ。ところでもうなんか……戻ってきた?」
確かに自分でも印象が少し変わっていると思う。昨日までのお世辞にも男には見えないという感じじゃない。
「やっぱり戻ってきてるよな。丸一日飲んでないだけなんだけど。あっという間に戻るんじゃねーのこれ」
「まあ、女性化もあっという間だったもんねえ……」
じゃあ着替えるかと服を脱いだが、アラスターは無言で立ち尽くしている。何だろうな。
「どうした? 見たいのかよ」
「ち、違う……ちょっと」
アラスターは落ち着かなそうにそばの椅子に腰掛けた。とりあえずそのまま服を着る。体はもうどこも痛くない。ナイフの刺し傷くらいだからな。
「あのな、バル。ヴェスタと結婚しようって話をしたんだ」
「…!……」
予想外なような、そうだよなというような。早いんじゃないかとは思うけど、付き合ってすぐ結婚するやつらもいるしな。半年は付き合ってるんだから普通かもしれない。どんな反応を期待されてるんだこれ。
「そうか。おめでとう」
「いや。その、お前はどう思う?」
「どう思う?」
「ちょっと真剣に考えてみてくれないか」
「え。今?」
「うん」
なんでお前らは俺を挟むんだよ。直接罵り合いでも殴り合いでもしろよ。まあどっちもそういうタイプじゃない。
「いいんじゃないか? お前がいいやつなのもヴェスタがいいやつなのも知ってる。うまくやっていけそうならさ」
そうだな。ただ。
「たださ、ヴェスタはわりと跳ねっ返りだろ」
「そう?」
「そうだよ。だから、跳ねっ返らせてやってくれよ。俺が言うことでもねーけど」
「……跳ねっ返らせる?」
「そう。好きにやらせてやってくれ」
「………そう」
アラスターが少し考えるような顔をして、困り顔で笑った。余計だったかな。
「なあ、バル。お前の方がヴェスタとの付き合いが長いだろ。ヴェスタのいいところと悪いところを教えてくれよ」
「はあ? お前がこれから学べ。俺に聞くことじゃねーだろ」
「いいじゃないか。オーナーだろ? 父親みたいなもんだろ。はなむけとしてさ」
「いいとこ?」
「10個。あげて」
「多いな! 数えねーぞ。サーモが入ってる。暗視ができる。髪の色が変わる。素直。物覚えがいい。ボードゲームが得意。真面目。いつも一生懸命。自分で考える。視点が人と違う。感情が豊か。正直。10個あったか?」
「12個あったよ。次。悪いところ」
「サーモを活用しない。感情的すぎる。うかつ。もやし。目の前のことに集中しすぎ。時々暴走する。思ってることを言わない。世間知らず。たまに駄々をこねる。自己評価低すぎ。すぐ泣く。そうだな、一番悪いとこは献身的すぎってか、自分を大事にしないとこだな。何個?」
「12個」
「ノルマクリアだな? ああ、もう一個あったな。AIが入ってないとこだな」
「それはいいところ? 悪いところ?」
「いいところだろ。そりゃ」
「そうか。まいったな……」
何が参ったんだ。アラスターはすごく変な顔をしていた。半泣き? 半笑い?
「ありがとう、バル。じゃ、また」
「いや、それはこっちの方だろ! 本当、助かった。ありがとう。またな」
しばらく病室で暇を潰していたら、医者とナースが入ってきて細胞片をむしり取っていき、もう帰っていいと言った。やれやれ。やっと帰れる。
10
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
恋人はメリーゴーランド少年だった。
夏目奈緖
BL
溺愛ドS社長×ツンデレ高校生。年の差恋愛。社長からの告白と束縛に戸惑う高校生。すれ違いばかりの片想いから恋人同士へ。ひねくれもの天使的な高校生と心を閉ざした会社社長との年の差BL。中山夏樹(18)は従姉妹の結婚式の2次会で、倒れてきた酔っ払いの下敷きになり左手に怪我を負った。助けてくれたのが、会場レストラン経営の黒崎ホールディングス代表取締役社長・黒崎圭一(33)。左手の抜糸がすむまで黒崎の車で送迎されることになった。黒崎は誰にも心を開かない。夏樹も同じである。しかしながら、夏樹は黒崎の前だけは自分の意思とは反対に、本音を吐き出す。2人は孤独を抱えており、夏樹は黒崎に惹かれていく。黒崎は夏樹に一目惚れし、執着する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる