Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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05 追跡

01 Baltroy (過去 / 現在)

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 ああ。これか。

 壁の一枚の写真を眺めた。10年前の俺の写真。物騒で辛気臭いツラ。一番イライラしてた時だ。あの女母親は売り時とばかりに追っかけ回してくるし、豚の子だと職場でも悪目立ちしていびられてた頃。何もかも嫌になって戻るか戻らないかも決めないままに飛び出してきた時。

「大きくなったね」

 おばちゃんが並んで言った。

「大きくなったって。変わってねえよ」
「そうかね? 大きくなったよ」

 ヴェスタはじっと写真を見つめている。ヴェスタに見られるとやめろと言いたくなる。この頃のことはあまり知られたくない。

「また写真を撮らせておくれ。ヴェルデちゃんとね」
「あの……俺も写真もらえませんか?」

 ヴェスタが尋ねた。こいつはなんだって写真だの欲しがるんだろうな。前もゲーセンで撮った。

「いいよ。二枚撮ろうね……」

 ヴェスタが俺の腕に腕を絡める。俺の顔を見上げてくる。「怒る?」

「仕方ねえな」

 青緑の目でにこっと笑う。可愛いやつ。
 パシャパシャと古いカメラの音が聞こえる。写真が出てくる。

「ほらね」
「はは。不意打ちすぎだよおばちゃん」
「いい写真になったよ」

 俺がヴェスタを見て、ヴェスタが俺を見上げている写真。おばちゃんが画鋲でそれを壁に留めようとする。

「俺がやるよ」
「せっかくだから前のあんたさんの写真の隣に貼っとくれ」
「やだな」
「そう言わないでおくれ。ほら、他の人のもそうしてるのよ」

 しぶしぶだ。二枚並んだ俺だけの写真とヴェスタとの写真。別な人間みたいだ。造作は変わってないのにな。ヴェスタはもう一枚をもらって、食い入るように見ていた。嬉しそう。

「泊まっていくかい?」
「いやあ、帰るよ。今日は他に客もいるだろ」
「またおいで」

 おばちゃんの宿を出て、エアバイクに乗る。ヴェスタは迷いなく俺の体にぴったりと体をつけて身を預けてきた。

 我ながら、よく耐えたよなと思った。あの夜、もういいだろうと自分に赦した。ヴェスタが好きだと真正面から伝えてきたんだ。もういいだろ。俺だって愛してる。それも認める。ヴェスタはもう誰のものでもない。俺のにしてもいいだろ。あのアラスターの恋人になったんだ。その上で俺が好きだと言うんだ。文句ないだろ。

 二年ぶりにその体を抱いた。ヴェスタはものすごく敏感で繊細だった。あの肌も。髪は淡い、本当に淡い緑に輝いていた。
 抱いてわかった。どんなに必死にヴェスタが俺を待ってたのか。不思議だった。あんなに酷いことした俺を。普通なら顔も見たくなくなるようなことをした俺をどうしてそんなに求めるのか。

 わからない。今もわからないまま。

「飛ばすぞ。吹っ飛ばされんなよ」
「ん」
 








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