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07 ドミニオン
08 Baltroy (空白)
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楽しそうだったな。
俺はドミニオンがリムジンタイプのオートキャリアに乗ったのを遠目で確認して、一足先に部屋に戻っていた。何かまたドミニオンがテンマと揉めていたみたいだったが、ヴェスタも間もなく戻ってくるはずだ。あいつは半日彼女と歩き回っていたことになる。
ヴェスタは女の子と遊びに行ったことなんかないからな。たまにはいいかもしれない。ちょっと相手が普通の子じゃないけど。しかし本当に女の子同士で歩いてるようにしか見えなかった。ボブの髪型も相まって。華奢だから。
「レプリカント人権保護局のA492090rpです。リンダ・ミードさんですか?」
『はい。なんですか?』
異物混入の時にドミニオンを取り囲んだうちの一人。
「三日ほど前、ニューミシガンのネオ・ハサールというホテルで歌手のドミニオンさんに会いましたか?」
『はい! 会いました。それが何か? あ、写真がまずかったですか? SNSとかにはまだアップしてないんですけど』
「いえ、どのようにしてあそこにドミニオンさんがいると知られたのか伺いたかったんです」
『ああ。あれ、ドミニオンの非公式ファンサイトがあって、ファン同士で情報交換してるんですよ。たまたま見てた時にツイートがあって、「ネオ・ハサールの23階のバーにドミニオンがいる」って出たから、家が近かったしダメ元で行ってみたんです。そしたらほんとにいたから』
「何人かで示し合わせたわけではないんですか?」
『示し合わせてはないです。たぶんそのツイートを見た人が集まったんじゃないかな。確かに私が行った時はもう数人がバーの中にいて、あれがドミニオンじゃないってひそひそ話をしてて、誰かが間違いないよって言ったからみんなで突撃したみたいな感じです』
「誰かが言った?」
『そう。ほらだって、いつものメイクじゃないから、ほんとにドミなのかわからなくて。髪の色はそうだなって思ったんですけど。で、みんなでザワザワしてたら、誰か素顔を知ってる人がいて、ドミで間違いないって』
「そうですか……」
これが本当なら雲を掴むような話だ。
「集まった人たちは皆さん知り合いではないんですね?」
『私は知り合いはいなかったです。他の人はどうだかわかりませんけど』
「怪しい人はいましたか? 挙動不審だったり」
『いやー、わからないです。記憶にはないです。何しろドミに会えたのが嬉しくて……』
ヴェスタがピックアップした人たちは5人。順に聴取して行く。ヴェスタが帰って来て油くさい服を着替え、隣に座った。
『あー、そうです。僕もツイートを見て。ちょうど街中にいたんで』
『いや? 顔見知りはいませんでしたよ』
『誰かがあれがドミだよって言ったんです』
「………うーん」
五人とも知り合いじゃない。たまたまツイートを見て来たと言う。誰もツイートした本人ではない。みんな誰かがドミだと言ったと言う。自分が言ったと言うやつはいない。
「誰かがあえてドミニオンを囲ませたんだろうな。ファンをおびきだして、あれが彼女だと注目させて」
「他に映ってないんだよ。サインを貰ったりしてる人は」
「死角に入っていたか、そこにいても特に注目されないやつだったのか」
このラウンジの中にはいたはずだ。カクテルに変なものを入れたんだから。ファンたちは目の前のドミニオンに集中してしまって周りが目に入らない。あれがドミニオンだと号令をかけるだけなら簡単だ。
「誰かが嘘をついてる可能性もあるし」
「そうだな。知らないふりもできる」
さっきのファンたちが見ていたと言う非公式の情報交換サイトを見てみる。かなり大規模なサイトだ。ライブのスケジュール、新曲のダウンロードサイト、グッズ紹介……。
右のカラムにオンタイムでファンのツイートが表示される。検索をかける。ネオ・ハサール。「ほんとにドミがいたよ!」もっと前のツイート。
これだ。「ネオ・ハサールのラウンジに今ドミがいる」。ツイートをしたやつのプロフィールを見る。何もない。キーボードを適当に打ったみたいなアルファベットのニックネーム。よくこんな匿名のツイートに乗っかるもんだ。情報のソーヤにコール。
『三回目だよバル!』
「ああ。なんならもう二回くらいかけてやってもいい。あのさ、ツイートの主を探せるかな?」
『うーん、ツイートの管理母体によるかな? 個人情報ちゃんと取ってるとこと匿名でもバンバン通しちゃうとこがあるから。どこのツイート?』
「今アドレスを送るよ。この右カラムに出てくるツイートだ」
『やってみる。まあ期待薄かな』
あとは。何ができる? ラウンジの店員にでも話を聞いてみるか………
「……バル、今夜俺、ちょっと出かける。ドミニオンの護衛だ」
「ん?」
ヴェスタを見ると、髪がブルーで困ったような顔をしていた。
「夜? 何時から何時?」
「9時くらいから。何時までかはわからない」
「お前だけ?」
「ん」
ヴェスタはきゅっと唇を結んだ。何か言いづらいんだな。ふっと今朝見たドミニオンの先週の行動記録を思い出した。不自然な夜の空白。
「おい。バディに隠し事はなしだ。何だ?」
「………ドミニオンが、この町の知り合いに会いに行くんだ。それだけ」
うそだな。それだけじゃない。
「だめだ。この状況でそんな訳のわからないところに行かせられない」
「行かなきゃいけないんだって。そう命令されてるんだ。ドミが、オーナーから。逆らえないんだ。知ってるだろ……。SPはドミがすごく嫌がるんだ」
青白い髪。伏せられた青緑の目。こちらを見ようとしない。こりゃだめだな。ヴェスタの頑固が発動してる。言わないし曲げない。
「……行き先だけ。それだけは必ず俺に知らせろ。彼女を一人にしないこと。何かあったらすぐブザーを鳴らして逃げること」
「ん」
俺はドミニオンがリムジンタイプのオートキャリアに乗ったのを遠目で確認して、一足先に部屋に戻っていた。何かまたドミニオンがテンマと揉めていたみたいだったが、ヴェスタも間もなく戻ってくるはずだ。あいつは半日彼女と歩き回っていたことになる。
ヴェスタは女の子と遊びに行ったことなんかないからな。たまにはいいかもしれない。ちょっと相手が普通の子じゃないけど。しかし本当に女の子同士で歩いてるようにしか見えなかった。ボブの髪型も相まって。華奢だから。
「レプリカント人権保護局のA492090rpです。リンダ・ミードさんですか?」
『はい。なんですか?』
異物混入の時にドミニオンを取り囲んだうちの一人。
「三日ほど前、ニューミシガンのネオ・ハサールというホテルで歌手のドミニオンさんに会いましたか?」
『はい! 会いました。それが何か? あ、写真がまずかったですか? SNSとかにはまだアップしてないんですけど』
「いえ、どのようにしてあそこにドミニオンさんがいると知られたのか伺いたかったんです」
『ああ。あれ、ドミニオンの非公式ファンサイトがあって、ファン同士で情報交換してるんですよ。たまたま見てた時にツイートがあって、「ネオ・ハサールの23階のバーにドミニオンがいる」って出たから、家が近かったしダメ元で行ってみたんです。そしたらほんとにいたから』
「何人かで示し合わせたわけではないんですか?」
『示し合わせてはないです。たぶんそのツイートを見た人が集まったんじゃないかな。確かに私が行った時はもう数人がバーの中にいて、あれがドミニオンじゃないってひそひそ話をしてて、誰かが間違いないよって言ったからみんなで突撃したみたいな感じです』
「誰かが言った?」
『そう。ほらだって、いつものメイクじゃないから、ほんとにドミなのかわからなくて。髪の色はそうだなって思ったんですけど。で、みんなでザワザワしてたら、誰か素顔を知ってる人がいて、ドミで間違いないって』
「そうですか……」
これが本当なら雲を掴むような話だ。
「集まった人たちは皆さん知り合いではないんですね?」
『私は知り合いはいなかったです。他の人はどうだかわかりませんけど』
「怪しい人はいましたか? 挙動不審だったり」
『いやー、わからないです。記憶にはないです。何しろドミに会えたのが嬉しくて……』
ヴェスタがピックアップした人たちは5人。順に聴取して行く。ヴェスタが帰って来て油くさい服を着替え、隣に座った。
『あー、そうです。僕もツイートを見て。ちょうど街中にいたんで』
『いや? 顔見知りはいませんでしたよ』
『誰かがあれがドミだよって言ったんです』
「………うーん」
五人とも知り合いじゃない。たまたまツイートを見て来たと言う。誰もツイートした本人ではない。みんな誰かがドミだと言ったと言う。自分が言ったと言うやつはいない。
「誰かがあえてドミニオンを囲ませたんだろうな。ファンをおびきだして、あれが彼女だと注目させて」
「他に映ってないんだよ。サインを貰ったりしてる人は」
「死角に入っていたか、そこにいても特に注目されないやつだったのか」
このラウンジの中にはいたはずだ。カクテルに変なものを入れたんだから。ファンたちは目の前のドミニオンに集中してしまって周りが目に入らない。あれがドミニオンだと号令をかけるだけなら簡単だ。
「誰かが嘘をついてる可能性もあるし」
「そうだな。知らないふりもできる」
さっきのファンたちが見ていたと言う非公式の情報交換サイトを見てみる。かなり大規模なサイトだ。ライブのスケジュール、新曲のダウンロードサイト、グッズ紹介……。
右のカラムにオンタイムでファンのツイートが表示される。検索をかける。ネオ・ハサール。「ほんとにドミがいたよ!」もっと前のツイート。
これだ。「ネオ・ハサールのラウンジに今ドミがいる」。ツイートをしたやつのプロフィールを見る。何もない。キーボードを適当に打ったみたいなアルファベットのニックネーム。よくこんな匿名のツイートに乗っかるもんだ。情報のソーヤにコール。
『三回目だよバル!』
「ああ。なんならもう二回くらいかけてやってもいい。あのさ、ツイートの主を探せるかな?」
『うーん、ツイートの管理母体によるかな? 個人情報ちゃんと取ってるとこと匿名でもバンバン通しちゃうとこがあるから。どこのツイート?』
「今アドレスを送るよ。この右カラムに出てくるツイートだ」
『やってみる。まあ期待薄かな』
あとは。何ができる? ラウンジの店員にでも話を聞いてみるか………
「……バル、今夜俺、ちょっと出かける。ドミニオンの護衛だ」
「ん?」
ヴェスタを見ると、髪がブルーで困ったような顔をしていた。
「夜? 何時から何時?」
「9時くらいから。何時までかはわからない」
「お前だけ?」
「ん」
ヴェスタはきゅっと唇を結んだ。何か言いづらいんだな。ふっと今朝見たドミニオンの先週の行動記録を思い出した。不自然な夜の空白。
「おい。バディに隠し事はなしだ。何だ?」
「………ドミニオンが、この町の知り合いに会いに行くんだ。それだけ」
うそだな。それだけじゃない。
「だめだ。この状況でそんな訳のわからないところに行かせられない」
「行かなきゃいけないんだって。そう命令されてるんだ。ドミが、オーナーから。逆らえないんだ。知ってるだろ……。SPはドミがすごく嫌がるんだ」
青白い髪。伏せられた青緑の目。こちらを見ようとしない。こりゃだめだな。ヴェスタの頑固が発動してる。言わないし曲げない。
「……行き先だけ。それだけは必ず俺に知らせろ。彼女を一人にしないこと。何かあったらすぐブザーを鳴らして逃げること」
「ん」
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