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08 デモンストレーション
13 Baltroy (一番嫌なこと)
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進まない。あんまりにも進まないから、とりあえずいつもの現況コールや他の事件を片付ける。週に2回の陸軍式格闘術のセミナーも8回目になった。
半分やったわけだ。今日ペアになった受講生に一礼する。身長が大体同じくらいの人とペアになるので、彼と組むのは3回目。小柄なヴェスタはだからたいてい女性とペアになる。このセミナーが終わるたびに髪を青くしている。
苦手なんだよな。だめかも知れないな。多少知識はついても。実戦に向かない。まあ、最初からわかってはいたことだ。体が小さい。ちょっとトロい。こういうことにかけては。
だから例えばゴーシェがヴェスタを捕まえて、暗闇に引きずり込んでしまえば、ヴェスタに何ができるんだろうか。ヴェスタはヒューマンを傷つけることはできるけど、ゴーシェはそれをさせるだろうか。俺がやられて一番嫌なこと………
「バルトロイさん」
「あ。失礼」
集中できない。何にも。
帰りのオートキャリアの中で、ヴェスタは髪を真っ青にしてため息をついた。
「俺、普通にやってたら捜査官なんかなれてないな」
「なっちまったらこっちのもんだろ」
「最初の頃、みんな冷たかったけど、そりゃそうだなって思ったよ。ズルして入ったくせにって感じだったんだろうなあ」
それにレプリカントだしな。ほんとにヴェスタは辛かったと思う。俺も守ってやれなかった。気が回らなくて。泣き言も言わずによく頑張ったもんだ。泣き言を聞いたのは一度だけ。こいつが潜入捜査に行ってた時。
「俺がヒューマンのバディとうまくやれなかったからだ。お前が悪いわけじゃない」
「でもそのおかげで俺、バルのバディになれたから」
ヴェスタはこちらを覗き込むようにしてニコッと笑った。思わずその唇にキスする。俺の一番嫌なこと。それは……
ブリングが震えた。メッセージ。レッダからだ。「訪問者から伝言です」。
訪問者。珍しい……。あの女じゃねーだろうな。文が続いている。「とても不躾なコメントですよ」。
「そのオナホ今夜も使うのか?」
…………。
レッダからメッセージがさらに届く。「名乗りませんでした。ただ伝言を伝えてほしいと。一応録画してありますが」。
録画は消してくれ、と送る。ヴェスタに見られたくない。デモンストレーション。自宅を知ってるぞって言う。俺が返事をしないから、急かしに来たのか……。
「どうかした?」
ヴェスタが不安そうな顔をしている。
「なんでもない」
切り裂かれた子どもたちの遺体。イリーナの遺体は両手を切り落とされ目をくり抜かれていたと聞いた。ヴェスタの綺麗な青緑色の瞳。
「なんでもない。大丈夫だ」
怖い。欲しいものを手の内に留めておくことが、こんなに恐ろしい事だと知らなかった。
半分やったわけだ。今日ペアになった受講生に一礼する。身長が大体同じくらいの人とペアになるので、彼と組むのは3回目。小柄なヴェスタはだからたいてい女性とペアになる。このセミナーが終わるたびに髪を青くしている。
苦手なんだよな。だめかも知れないな。多少知識はついても。実戦に向かない。まあ、最初からわかってはいたことだ。体が小さい。ちょっとトロい。こういうことにかけては。
だから例えばゴーシェがヴェスタを捕まえて、暗闇に引きずり込んでしまえば、ヴェスタに何ができるんだろうか。ヴェスタはヒューマンを傷つけることはできるけど、ゴーシェはそれをさせるだろうか。俺がやられて一番嫌なこと………
「バルトロイさん」
「あ。失礼」
集中できない。何にも。
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「俺、普通にやってたら捜査官なんかなれてないな」
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「最初の頃、みんな冷たかったけど、そりゃそうだなって思ったよ。ズルして入ったくせにって感じだったんだろうなあ」
それにレプリカントだしな。ほんとにヴェスタは辛かったと思う。俺も守ってやれなかった。気が回らなくて。泣き言も言わずによく頑張ったもんだ。泣き言を聞いたのは一度だけ。こいつが潜入捜査に行ってた時。
「俺がヒューマンのバディとうまくやれなかったからだ。お前が悪いわけじゃない」
「でもそのおかげで俺、バルのバディになれたから」
ヴェスタはこちらを覗き込むようにしてニコッと笑った。思わずその唇にキスする。俺の一番嫌なこと。それは……
ブリングが震えた。メッセージ。レッダからだ。「訪問者から伝言です」。
訪問者。珍しい……。あの女じゃねーだろうな。文が続いている。「とても不躾なコメントですよ」。
「そのオナホ今夜も使うのか?」
…………。
レッダからメッセージがさらに届く。「名乗りませんでした。ただ伝言を伝えてほしいと。一応録画してありますが」。
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怖い。欲しいものを手の内に留めておくことが、こんなに恐ろしい事だと知らなかった。
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