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08 デモンストレーション
18 Vesta (変化)
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「ヴェスタ。ちょっと……今度一人で出かけてきてもいいかな。そろそろ大丈夫だと思う」
「うん? いいよ」
バルが帰りのオートキャリアで言った。でもあんなに俺を一人にしたがらなかったのに。バルも疲れたのかな。なんだかこの三ヶ月、バルがどんどん消耗していくみたいで……。
どれがバルの負担になってる? 結婚のこと? ゴーシェのこと? 俺について歩かないといけないことかな。どれも重くて。でも今日はやっぱりバルはすごいなあって思った。
「ねえ、かっこよかったよ」
「ん?」
「今日。コンロンさんと」
「はは。みっともなかったなあ」
「ううん。俺なら反応できないもん。あの後コンロンさんがちょこちょこ指導して回ったでしょ。他の人、誰もコンロンさんにほとんど触れなかったよ。あの人本当にすごいんだね」
「俺もほとんど触れなかったよ。全身筋肉とバネって感じだった。さすがだな」
落ち込んでる? どうしたらいいのか………。
「……そういえばさ、バルのお父さんに……」
「ああ。そろそろだったな……。秘書から連絡が来るはずだ」
「秘書?」
「正確には弟子? 鞄持ちの人」
「そんな人いるんだ?」
「うん。俺が……ハイスクールに入った頃からいたから、もう二十年近くだな。よくやるよ」
「バルのお父さんて何してる人なの?」
「全然話してなかったな、そう言えば。ま、俺たちには関係ないからな。写真家だよ。有名な女優の写真集とか撮ってるみたいだ。俺もよくは知らない」
「ふふっ、知らないの?」
「うん。6年しか一緒に住んでないし、あの人家にいなかったからな。金持ちだなくらいの認識。今回、ちゃんと会うって返事が来たのが意外なくらいだ」
「なんだか、ふしぎ。俺、親っていないからさ。どんな感じなのかわからない」
「俺もどんな感じなのかわからない」
バルがやっとちょっとだけ笑った。嬉しくなって口元にキスした。
「バルがどっか行くんなら、俺も人に会おうかな。マリーンさんと久々に話したいんだ」
「仲よかったのか?」
「うん。レプリカントでドミ意外に連絡先知ってる人」
「えらく大物だな」
「たまに連絡来るよ。ドミから。元気そう。あのね、トリスタンと付き合ってるんだって」
「あの護衛の?」
「そう。テンマは安心してるみたいでむかつくって言ってた」
「ははは。そりゃなあ」
ドミは幸せそうで良かった。パーティで会った時、トリスタンを紹介された。トリスタンがドミのために飲み物を取りに行っている間、彼女は俺の言ったことがわかってきた、と言った。誰かに話したかったみたいで、そのまま矢継ぎ早に続けた。
「言ってたよね? 目に入るだけで嬉しくなるって。そんな感じなんだ」
「良かったね」
「あとはセックスだよね!」
「あのね……」
これには笑ってしまった。相変わらず直球。
「もう少しゆっくりしたら。どんな人なのかなって」
「えー! ビビってきたんだもん。それだけでよくない?」
「ふふ。まあね……」
ドミの言ってることもわかる。「俺はこの人を探しに生まれてきたんだな」って思う人がいる。見つけたんだなって。俺にとっては、バルみたいに。
「どうしたらセックスできるの?」
「あのね、ドミ。そうじゃないからね!」
「だって……」
「その時が来たら自然とそうなるよ」
「待たないとだめなの? 『あたしを抱いて』じゃだめ?」
「ふふふ、俺は一回それやって振られてるからね」
「あはは!」
ドミはでも、恋してるんだなってわかった。うきうきして、目が輝いていた。トリスタンがカクテルを持ってドミに渡して、ドミはすごく嬉しそうにそれを受け取った。トリスタンもドミだけを見ていた。護衛として? 男性として? わからないな。視線が合った彼がにこにこっと笑った。
「ヴェスタさんの話は聞いていました」
「そうですか! ど……どんな風に」
トリスタンは笑顔のまま続けた。
「ご想像通りかもしれません……女の子の服が似合うって」
「そうなの! まだまだ着せたい服があったのに」
「次回もヴェスタさんたちに護衛を頼みますか?」
「いいね。お願いね、ヴェスタ。ねえ、あたし今やっと生きてるって感じがするんだ! 人がどんな気持ちでも構わない、あたし明日も生きていようって」
「良かった。ほんとに良かったよ」
テンマがドミに声を掛けた。パーティの主役だから、俺とばかり話してるわけにはいかない。
「うるさいなあ! ごめんね、ヴェスタ。またね! この街に来たら声掛けるから会おうね」
「うん、もちろん」
トリスタンがちょっと会釈をすると、さっとドミについて行った。二人がうまく行くといいなと思った。本当に。
顔も見たくないやつに抱かれて、黙って涙を流していたドミ。ドミが好きになった人と、時間を過ごせるようになって欲しい。「ほんとのやつ」ができるといい。
ただのセックスじゃなくて、ほんとの、ほんとのやつ。
「バル」
「ん?」
「ほんとのやつ、したい」
「うん」
しよう、と言ってバルはキスしてくれた。
「うん? いいよ」
バルが帰りのオートキャリアで言った。でもあんなに俺を一人にしたがらなかったのに。バルも疲れたのかな。なんだかこの三ヶ月、バルがどんどん消耗していくみたいで……。
どれがバルの負担になってる? 結婚のこと? ゴーシェのこと? 俺について歩かないといけないことかな。どれも重くて。でも今日はやっぱりバルはすごいなあって思った。
「ねえ、かっこよかったよ」
「ん?」
「今日。コンロンさんと」
「はは。みっともなかったなあ」
「ううん。俺なら反応できないもん。あの後コンロンさんがちょこちょこ指導して回ったでしょ。他の人、誰もコンロンさんにほとんど触れなかったよ。あの人本当にすごいんだね」
「俺もほとんど触れなかったよ。全身筋肉とバネって感じだった。さすがだな」
落ち込んでる? どうしたらいいのか………。
「……そういえばさ、バルのお父さんに……」
「ああ。そろそろだったな……。秘書から連絡が来るはずだ」
「秘書?」
「正確には弟子? 鞄持ちの人」
「そんな人いるんだ?」
「うん。俺が……ハイスクールに入った頃からいたから、もう二十年近くだな。よくやるよ」
「バルのお父さんて何してる人なの?」
「全然話してなかったな、そう言えば。ま、俺たちには関係ないからな。写真家だよ。有名な女優の写真集とか撮ってるみたいだ。俺もよくは知らない」
「ふふっ、知らないの?」
「うん。6年しか一緒に住んでないし、あの人家にいなかったからな。金持ちだなくらいの認識。今回、ちゃんと会うって返事が来たのが意外なくらいだ」
「なんだか、ふしぎ。俺、親っていないからさ。どんな感じなのかわからない」
「俺もどんな感じなのかわからない」
バルがやっとちょっとだけ笑った。嬉しくなって口元にキスした。
「バルがどっか行くんなら、俺も人に会おうかな。マリーンさんと久々に話したいんだ」
「仲よかったのか?」
「うん。レプリカントでドミ意外に連絡先知ってる人」
「えらく大物だな」
「たまに連絡来るよ。ドミから。元気そう。あのね、トリスタンと付き合ってるんだって」
「あの護衛の?」
「そう。テンマは安心してるみたいでむかつくって言ってた」
「ははは。そりゃなあ」
ドミは幸せそうで良かった。パーティで会った時、トリスタンを紹介された。トリスタンがドミのために飲み物を取りに行っている間、彼女は俺の言ったことがわかってきた、と言った。誰かに話したかったみたいで、そのまま矢継ぎ早に続けた。
「言ってたよね? 目に入るだけで嬉しくなるって。そんな感じなんだ」
「良かったね」
「あとはセックスだよね!」
「あのね……」
これには笑ってしまった。相変わらず直球。
「もう少しゆっくりしたら。どんな人なのかなって」
「えー! ビビってきたんだもん。それだけでよくない?」
「ふふ。まあね……」
ドミの言ってることもわかる。「俺はこの人を探しに生まれてきたんだな」って思う人がいる。見つけたんだなって。俺にとっては、バルみたいに。
「どうしたらセックスできるの?」
「あのね、ドミ。そうじゃないからね!」
「だって……」
「その時が来たら自然とそうなるよ」
「待たないとだめなの? 『あたしを抱いて』じゃだめ?」
「ふふふ、俺は一回それやって振られてるからね」
「あはは!」
ドミはでも、恋してるんだなってわかった。うきうきして、目が輝いていた。トリスタンがカクテルを持ってドミに渡して、ドミはすごく嬉しそうにそれを受け取った。トリスタンもドミだけを見ていた。護衛として? 男性として? わからないな。視線が合った彼がにこにこっと笑った。
「ヴェスタさんの話は聞いていました」
「そうですか! ど……どんな風に」
トリスタンは笑顔のまま続けた。
「ご想像通りかもしれません……女の子の服が似合うって」
「そうなの! まだまだ着せたい服があったのに」
「次回もヴェスタさんたちに護衛を頼みますか?」
「いいね。お願いね、ヴェスタ。ねえ、あたし今やっと生きてるって感じがするんだ! 人がどんな気持ちでも構わない、あたし明日も生きていようって」
「良かった。ほんとに良かったよ」
テンマがドミに声を掛けた。パーティの主役だから、俺とばかり話してるわけにはいかない。
「うるさいなあ! ごめんね、ヴェスタ。またね! この街に来たら声掛けるから会おうね」
「うん、もちろん」
トリスタンがちょっと会釈をすると、さっとドミについて行った。二人がうまく行くといいなと思った。本当に。
顔も見たくないやつに抱かれて、黙って涙を流していたドミ。ドミが好きになった人と、時間を過ごせるようになって欲しい。「ほんとのやつ」ができるといい。
ただのセックスじゃなくて、ほんとの、ほんとのやつ。
「バル」
「ん?」
「ほんとのやつ、したい」
「うん」
しよう、と言ってバルはキスしてくれた。
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