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side B03
しおりを挟むエンマは本当に家に来なかった。そりゃわかってた。なにしろ相手が相手だ。来ないっつったら絶対来ない。わかってた。
でもなんとなく水曜日は家にいた。やることはない。ただ時間が過ぎるのを待つだけ。映画も一人だと見る気がしなかった。たまに数学と物理の質問が来た。顔が見たいから、「持って来な」って毎回送ったけど、エンマは問題の画像を送ってきた。徹底してる。さすが。
そこが好きだけどこの時はほんとに腹立った。仕方ないのに。
エンマがいないと暇すぎるから、一年の時からちょっと気になってた3x3のサークルに入った。少し体を動かした方が気が紛れる。
やってみるとバスケよりスピード感があって楽しかった。すぐ試合できるのもいい。でもやってるとまた女の子たちが寄ってくるようになった。なんでなんだろう。バスケだの3x3だの、やっててもやってなくても俺は変わらないのに。
「彼女とかいるんですか?」っていろんな女の子から何回も聞かれた。お前らになんか関係あんの?って思った。なんだろうな。「スポーツやってる外聞のいい彼氏」が欲しいんだろうなあって。うんざりした。
普通に「なんでそんなこと教えなきゃいけねーの?」って聞いたら、冷たいとかひどいとか言われた。一緒のサークルのやつらは、「親切にするのは人としての義務」と言った。意味がわからない。じゃあ俺にだって親切にされる権利があるだろ。俺は聞かれたくないんだ。聞いてくんな。エンマに会いたかった。
やっとエンマの模試の結果が出て、判定が上がったから家に来てくれた。もう秋になっていた。二ヶ月ぶりだった。
二ヶ月!信じられない。エンマはコンコンと指でドアをノックして、するっと部屋に入って来た。目が合うとにこっとした。思わずぎゅっと抱きしめるとエンマのにおいがした。すごい久しぶりだった。息が止まりそうなくらい嬉しかった。でもまだ受験が終わったわけじゃないから、あんまり長い時間一緒にいられない。
キスだけしてエンマを家に返してやらないといけなかった。つらい。帰るって時にキスして、「もっかい」って引き留めたら、「あんましないで。もっとしたくなっから」って顔真っ赤にして言われた。もっとしたくなって死にそうになった。なんとか我慢したけど。
次の模試が終わるともう冬だった。共通が近いから、もうエンマはうちに来られなかった。仕方ない。メッセージを送ろうと思ったけど、なんて送ればいいのかわからなくてやめた。「がんばれ」でもない。会いたいとは送れない。
「ブッチはクリスマスどうすんの?彼女とどっか行くの?」
同じサークルのやつから聞かれて、うっかり「あいつ受験だから」と言ってしまった。しまったと思った。まあいい。どうでも。とにかく時間が過ぎるのをじっと待った。案の定、「高校生の彼女」についてしばらくからかわれた。
共通が終わって、自己採点したエンマが「結構点取れた!」ってメッセージを入れて来た。嬉しそうでかわいかった。やばいなと思った。ただの文字列かわいいって。重症だろ。
不思議なことに、前よりもエンマは不安定じゃなくなった感じがした。受験が本格化する前のぎこちなさ、距離感みたいなものがなくなっている感じ。屈託がなくなったというか。
正直、もっと弱いやつだったらよかったのになあって思った。こんなに強いと出る幕がない。一人で大丈夫なんだな。逆に安定する。俺がエンマを不安定にさせてるみたいだ。
二次試験がやっと終わって、エンマが四ヶ月ぶりに家に来た。
文字通り飛びついてしまった。だって四ヶ月だ。最後にセックスしたのは半年以上前。信じられない。我ながらよく我慢したと思った。
もうまっすぐベッドに連れて行って剥いた。エンマは笑ってた。嬉しそうなのが嬉しい。とにかく一回やった。すごい気持ちよかった。もっかい! て言ったらこの日は珍しくやらせてくれた。
二回目は少し余裕ができたんで、久々のエンマの顔や体を堪能した。やっぱり綺麗な顔。いつまで見ても見飽きない。この顔が俺の体の下で歪んで涙を流す。眉根を寄せて唇を震わせる。俺だけの顔であって欲しい。誰にも見せたくない。
二回目がおわった後、まだ裸のエンマを背中から抱きしめてベッドにいた。すごい。幸せ。
「少し背伸びた?」
「……どうだろ、少し伸びたかも」
しばらく会ってないもんね、とエンマが振り向いた。そのままキスした。
「何してた?半年」
「お前のこと待ってた」
エンマは嘘だと思ったのか笑ってた。ほんとだよ。
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