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九話 離れて
しおりを挟むセシリオとの親密な付き合いが、学園に通う生徒を通して社交会に徐々に知られて行っている。
セシリオにとっては好都合なことだったが、ルイにとってそうでは無かった。
いままで、皇位継承権はルイより弟のエドワードの方が優勢だった。
しかし、ルイとセシリオの急接近によってパワーバランスはルイに傾いた。
ジューン家が味方に着いたら?ルイとセシリオが結婚したら…?
セシリオの皇位継承はほぼ確定する。
そのことを危惧してエドワード派のものたちが何をするかわからない。
「…ということなので、今後は僕に近づかないでください」
ルイはいつものように教室を訪ねてきたセシリオを屋上に連れ出し、そう告げた。
「えぇ!?ひどい…なんでですか!?」
「僕の話聞いてなかったんですか?」
涙目でいかにも被害者であるかのような顔をしてルイを見つめるセシリオに少しイラッとするがなんとか抑える。
「聞いてましたよ。だったら、今すぐ僕と結婚…とまではいかなくても婚約してしまえばいいじゃないですか。
いくらなんでも僕の夫となる人に手を出せる人はいません」
ルイは絶句した。
こんなにも簡単に結婚だとか婚約だとか口にするなんて。
でも思い出せば、最初からセシリオは首を噛めば良かっただとか頭のおかしなことを言っていた。
たしかにセシリオの…いや、ジューン家の末子の夫に手出しするような命知らずはいないだろうが…
「そう簡単に婚約なんてできません。とにかく、人前でべたべたするのはやめて下さい」
「はぅ…」
ルイが冷たい目で見下ろすと、なぜかセシリオは頬を赤らめ瞳を潤ませて頷いた。
「わかりました…僕、ちゃんと我慢します。その代わり…」
「っ…」
さっき言ったばかりなのに、セシリオはぺっとりとルイに密着して上目遣いでルイを見つめて言った。
「二人きりのとき、いーっぱいご褒美くださいね…♡」
ルイは無言でセシリオを引き剥がすと、彼を置いて屋上を後にした。
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