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二話
しおりを挟むシンがミシェル、いや、ミカエルにあったのは地上に魂を食べに来ていた時だった。
運悪くエクソシストに出くわし清水をかけられた挙句、銀のナイフで刺されたシンは、なんとか逃げて路地裏にうずくまっていた。
(しくった…あんなとこにエクソシストがいるなんて…)
大悪魔といえどもこの深傷では助からないかもしれない。
シンは焦っていた。
「あの…大丈夫ですか?」
そんな時だった。
ミカエルが話しかけてきたのは。
(こいつ…天使か?…こんなところで出くわすなんて…運の尽きだな)
ミカエルの頭上には大きな天使の輪、背中には輝くように白い翼が生えていた。
その姿だけで、ミカエルが上位の天使だと分かった。
「大怪我してる…」
「…殺すなら、一思いに殺せ」
正直、この天使が何もしなくてもシンはまもなく生き絶えそうだった。
「殺すなんて…そんなことできません!」
ミカエルはシンの腹に空いた穴に手を当てた。
「ぐ…」
「我慢してください」
患部が光に包まれ、傷が塞がれていく。
しかし、神聖な力のせいで、シンの魔力は削られていった。
「…ふぅ、傷は塞がりましたね」
「あんた、なんで…僕が悪魔だって…」
「知ってますよ。でも、いかなるものにも慈悲を与えるのが天使なので」
にこりと微笑んでミカエルはそう言った。
その笑顔を見てシンの心はぞくりと震えた。
(あぁ…なんて清らかで美しい笑顔なんだ…)
この笑顔を僕の手で汚してやりたい。
シンの心にそんな暴力的な欲望が生まれた瞬間だった。
「では、僕は行きますね」
「まって」
シンはミカエルの腕を掴んだ。
「また、いつか会えますか…?」
「…さぁ。神が導いてくだされば会うこともあるでしょう」
神様が悪魔と天使が出会うよう導くわけなかった。
でも、この天使は皮肉ではなく本気で言っているのだろう。
ならいい。
神に導かれなくても、こんど、またこの天使に会えたら、そのときは…
「あなたにまた会えたら、僕と一緒にきてくれますか」
「…僕は天使です。天がそれを許しません」
そう言って、天使は飛び立っていった。
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