恋は、やさしく

美凪ましろ

文字の大きさ
16 / 73

act14. 電話

しおりを挟む
「もうさ、最悪。やっちゃったって感じ……」
「でもさ、なにもなかったんだよね?」
「なにもなかったからいいって問題でもないし……」

 彼女は。

『そのこと』があった翌日、親友に相談していた。

 あとから考えれば、その相談内容も、親友の恋心に火をつけてしまったのかもしれないが。


 後悔先に立たず。


 いつまで経っても過ちを犯し後悔を重ねる人々のためにこういったことわざは存在している。

「あたしさー、……なにげにそんなに飲んだことなかったんだよね。だからさ、弾けちゃって、……あんまし覚えてないんだよね」
「覚えてないって」
「その、……


 下着姿でなんでその男と同じベッドに居たかっていうのが」


 衝撃発言。

 だったと思う。

 いくらなんでも子どもではないのだから、行為に及んだか否かくらい分かる。

 でも身の潔白が証明できないのが心苦しいところでもある。

 こんなこと、彼氏にも言えない。

 言う相手として彼女が選んだのが、親友の南雲知奈だった。

「まあ、さ、……お酒の席での失敗は誰にでもあるよ。だーいじょうぶ。大丈夫だよ」
「あー本当、……気をつける。意識飛ぶまで飲むなんかしちゃ駄目だよね本当に。気をつける……」
「ねえ、あんまり思いつめないようにね。終わったことは仕方ないんだから。……相手の男、その後どんな感じだった?」
「感じだったっていうか……」

『どうもこうもって、……紘花ちゃん。

 おれらが過ごしたあの激しい夜のことを、忘れたなんて言わせへんで?』

(……頭痛い)

 こんな内容、知奈にも言えない。

 相手にからかい倒されたなんて。

 勿論、彼女は、急いで衣服を身につけ、急いで彼のアパートから消え去ったのだが。

 そしてその後一切、桐沢遼一と酒を飲まないことにした、同期を交えてであれど。

「気にしないようにね的なことは言われた」
「かえって意味深だよね」はは、と知奈は笑った。笑う元気があるのが羨ましい。

 以後桐沢遼一と会うたび、彼は含み笑いをする。

 あのことを仄めかしているようで、彼女は気が気でない。

「まあ、とにかくあたしのほうはそんな感じ。知奈のほうは、どう」
「あんまし、てかなぁんにも変わんないよぉー。リーマンお堅いひとばっかで話合わないー」きっと髪をくるくると指先に巻きつけているであろう。そんな変わらない日常を持つ親友のことが、彼女は羨ましかった。

 なぁんにも変わんないよぉー。

 ……と、彼女も言ってみたかった。

 *
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ社長は別れた妻を一途に愛しすぎている

藍川せりか
恋愛
コスメブランドでマーケティング兼アドバイザートレーナーとして働く茉莉花は三十歳のバツイチOL。離婚して一年、もう恋も結婚もしない! と仕事に没頭する彼女の前に、突然、別れた夫の裕典が新社長として現れた。戸惑う茉莉花をよそに、なぜか色気全開の容赦ないアプローチが始まって!? 分かり合えずに離婚した元旦那とまた恋に落ちるなんて不毛すぎる――そう思うのに、昔とは違う濃密な愛撫に心も体も甘く乱され、眠っていた女としての欲求が彼に向かって溢れ出し……。「もう遠慮しない。俺だけ見て、俺以外考えられないくらい愛させて」すれ違い元夫婦の、やり直し極上ラブ!

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

年下幼馴染から逃げられない

南ひかり
恋愛
大手リゾート会社に勤める朝倉千秋は、将来ハワイ永住を夢見て着々とキャリアを積んでいた。 入社4年目。念願のハワイ支部転属が決定した矢先、テレビで自社の倒産を知る。 買収したのは近年記録的な成長を遂げる相模リゾート。 それは何年も音信不通だった年下の幼馴染ーー相模悠が経営する会社だった。 「ハワイには行かせない。ずっとオレの傍にいてもらうから」 悠に告げられたのは、ハワイ行きではなく秘書として働くということ。 必死に抵抗する千秋だったが、悠が持ち出した条件は――!?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

妖狐の嫁入り

山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」 稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。 ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。 彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。 帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。 自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!   & 苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る! 明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。 可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ! ※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

愛情に気づかない鈍感な私

はなおくら
恋愛
幼少の頃、まだ5歳にも満たない私たちは政略結婚という形で夫婦になった。初めて顔を合わせた時、嬉し恥ずかしながら笑い合い、私たちは友達になった。大きくなるにつれて、夫婦が友人同士というのにも違和感を覚えた私は、成人を迎えるその日離婚をするつもりでいた。だけど、彼は私の考えを聞いた瞬間豹変した。

処理中です...