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初夜のあくる日(2)
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「花は、……これからどうしたい?」
どうしたいと言われると。
「かなり回復してきて、花のこれからの人生、どうしていきたいか、っていう願望はある?」
考えていなかった。毎日を送ることに必死で。
私の思考をじっと待つ恋生は、
「提案がある。……花、僕と、公私ともに生きて欲しい」
思ってもみない提案をされた。
*
ホテルみたいな部屋って本当にあるんだ。
それから間もなく、お抱え運転手の運転するリムジンに乗せられ、恋生の住むマンションへと移動する。受付にはコンシェルジュがいて早速紹介してくれた。
「僕の妻になるひとだよ。よろしくね水野さん」
「な、な……!」
顔を真っ赤にした私を見て恋生は花のようにあでやかに笑う。――私よりもよっぽど、「花」という名称が似合いだ。
颯爽とした足取りで彼が向かうのは、最上階にあるワンフロア。この階を全部貸し切っているそうな。顎が外れそうだ。
明らかに高級な分譲マンションで室内はまるでスイートルーム。瀟洒で、エレガントで、気品があり、でも押しつけがましさのない心地よさ。白を基調とした冷たくし過ぎない空間に黒を散らす、現代的なデザイン。
「この部屋がメインの部屋だから。ざっと案内するね。先ずは、と。バスルームから行こうか」
「ふわわ。わぁ……!」キッチンとリビングに続いて見せて貰ったのは、ラグジュアリーなバスルーム。既に湯が張られて、薔薇の花が散らされている。用意がいい。バスタブは丸くてバスジェットがあってうわわ……最高! 最高階の眺めのよさを生かすべく、窓が大きくとられている。無駄がない、洗練さがそこにある。
紳士的に私を先に入れてくれ、私の反応を見た恋生は、「可愛い。……花」そっと引き寄せて頭に口づける。きゅん、とする。……ここに、一緒に入ったりとか……するのかな……ふわわ。
いかん。お腹絞らないと。一回どっかで本気で筋トレしよう自分。
バスルームなのに無茶苦茶広くて黒を基調とした、大理石が張られていて。お掃除大変そう、なんて思う自分は庶民なのかな。
「心配しないで。掃除や炊事は、家政婦さんがしてくれているから。マキノさんって言うんだ。今度紹介するね?」
思考の先を読む男神宮寺恋生。その勢いはとどまることを知らない。
*
「はあ。……恋生ってば、こんなすごい部屋に住んでるんだね」一通り見せて頂いたのちに、ダイニングテーブルに向かい合って座り、紅茶を一口。ここで疑問が。
「でも、こんな素晴らしいお部屋にいるひとがなんでうちなんかに、……朝晩、……」
するとカップを手にした恋生はゆったりと微笑み、
「その答えが分からないとは言わせないよ」
ふおお。恋生の本気の微笑みを目の当たりにすると狂いそうになる……こんな素敵で美しい男の子が、私なんかに……どうして……。
センターで分けられたさらさらで真っ直ぐな前髪の下の瞳に宿る知性と野性。こんなにエレガントな王子様なのに、あのときはあんなに……。
いかんいかん。真っ昼間からなにを思い返しているの自分。おっほん。
「僕はさ。はっきり言う。――花が好きだ。愛している」
カップを置いた優雅な指先。手の動き――に、魅せられている。
「花のさ。頑張り屋で、でも、ひとに頼らず抱え込んでしまうところも愛おしくてたまらなくてさ。そういう……俺が褒めると照れているくせに顔に出すまいと必死に堪えてるところなんかさ。本当はとてもいい子なのに、冷たいひとぶってわざとひとを突き放して、それで寂しくなっているのに、弱音とか絶対出さないじゃん? ――僕は、そういう、健気で可憐な花のことをずっと見てきていて。花の傍にいたいし、……花の力になりたいって思ったんだ」
「じゃあ、研修時代に声をかけてこなかったのは―ーどうして?」
さらりと恋生は答える。「あのときの花に言っても伝わらないと思ったんだよ。だから、待った」
確かに……。新人研修時代は、周りとちっともつるもうともせず、女子たちからはぶかれて、でも、そんな連中がくだらないって思っていた。そんな奴らとは一緒にされたくないとの思いで仕事に必死で。友情はおろか、恋愛どころではなかった。
恋生は、私が、恋生を必要とするタイミングを待っていた……。
「恋生は、転職したと言っていたけど、じゃあ、うちの会社に入ったのはどうして?」
「花に出会うためさ」水が流れるように自然と言葉があふれてくる。「正直、小学生の頃からビジネスはかじっていたし、起業もしていたからね。ま、会社員として新卒で働くのはあれが最初で最後のチャンスじゃない? 中途となるとまた事情は変わるしさ。うちの会社が副業を許可しているのは事前にリサーチ済だったし、ならば、入社前にある程度ビジネスは手放したうえで、いったんは、いち社会人として働こうと考えたんだ」
同期たちの顔を思い返す。確かに、日本独自の新卒一括採用は採用人数が多い。仲間となれる同期を見つけられるチャンスでもある。
「そっか。恋生……私たちが出会ったのは、運命、なんだよね?」
「そうだね。もう、離れられない」
テーブルのうえで指を絡ませる。その先を欲しがる、一途な指先。
とくん、と胸が高鳴る。私……。
「あのね。……恋生が遠慮していたのは知っている。私がこんなだから。だから……」
本気を伝えるんだ。本気で、本物の愛に変えてやる。自らの手で。
傷ひとつない磨かれたテーブルから目をあげて、
「今度は、あの見晴らしのいいバスルームで、私のことを、めちゃくちゃに愛しこんで欲しい」
*
どうしたいと言われると。
「かなり回復してきて、花のこれからの人生、どうしていきたいか、っていう願望はある?」
考えていなかった。毎日を送ることに必死で。
私の思考をじっと待つ恋生は、
「提案がある。……花、僕と、公私ともに生きて欲しい」
思ってもみない提案をされた。
*
ホテルみたいな部屋って本当にあるんだ。
それから間もなく、お抱え運転手の運転するリムジンに乗せられ、恋生の住むマンションへと移動する。受付にはコンシェルジュがいて早速紹介してくれた。
「僕の妻になるひとだよ。よろしくね水野さん」
「な、な……!」
顔を真っ赤にした私を見て恋生は花のようにあでやかに笑う。――私よりもよっぽど、「花」という名称が似合いだ。
颯爽とした足取りで彼が向かうのは、最上階にあるワンフロア。この階を全部貸し切っているそうな。顎が外れそうだ。
明らかに高級な分譲マンションで室内はまるでスイートルーム。瀟洒で、エレガントで、気品があり、でも押しつけがましさのない心地よさ。白を基調とした冷たくし過ぎない空間に黒を散らす、現代的なデザイン。
「この部屋がメインの部屋だから。ざっと案内するね。先ずは、と。バスルームから行こうか」
「ふわわ。わぁ……!」キッチンとリビングに続いて見せて貰ったのは、ラグジュアリーなバスルーム。既に湯が張られて、薔薇の花が散らされている。用意がいい。バスタブは丸くてバスジェットがあってうわわ……最高! 最高階の眺めのよさを生かすべく、窓が大きくとられている。無駄がない、洗練さがそこにある。
紳士的に私を先に入れてくれ、私の反応を見た恋生は、「可愛い。……花」そっと引き寄せて頭に口づける。きゅん、とする。……ここに、一緒に入ったりとか……するのかな……ふわわ。
いかん。お腹絞らないと。一回どっかで本気で筋トレしよう自分。
バスルームなのに無茶苦茶広くて黒を基調とした、大理石が張られていて。お掃除大変そう、なんて思う自分は庶民なのかな。
「心配しないで。掃除や炊事は、家政婦さんがしてくれているから。マキノさんって言うんだ。今度紹介するね?」
思考の先を読む男神宮寺恋生。その勢いはとどまることを知らない。
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「はあ。……恋生ってば、こんなすごい部屋に住んでるんだね」一通り見せて頂いたのちに、ダイニングテーブルに向かい合って座り、紅茶を一口。ここで疑問が。
「でも、こんな素晴らしいお部屋にいるひとがなんでうちなんかに、……朝晩、……」
するとカップを手にした恋生はゆったりと微笑み、
「その答えが分からないとは言わせないよ」
ふおお。恋生の本気の微笑みを目の当たりにすると狂いそうになる……こんな素敵で美しい男の子が、私なんかに……どうして……。
センターで分けられたさらさらで真っ直ぐな前髪の下の瞳に宿る知性と野性。こんなにエレガントな王子様なのに、あのときはあんなに……。
いかんいかん。真っ昼間からなにを思い返しているの自分。おっほん。
「僕はさ。はっきり言う。――花が好きだ。愛している」
カップを置いた優雅な指先。手の動き――に、魅せられている。
「花のさ。頑張り屋で、でも、ひとに頼らず抱え込んでしまうところも愛おしくてたまらなくてさ。そういう……俺が褒めると照れているくせに顔に出すまいと必死に堪えてるところなんかさ。本当はとてもいい子なのに、冷たいひとぶってわざとひとを突き放して、それで寂しくなっているのに、弱音とか絶対出さないじゃん? ――僕は、そういう、健気で可憐な花のことをずっと見てきていて。花の傍にいたいし、……花の力になりたいって思ったんだ」
「じゃあ、研修時代に声をかけてこなかったのは―ーどうして?」
さらりと恋生は答える。「あのときの花に言っても伝わらないと思ったんだよ。だから、待った」
確かに……。新人研修時代は、周りとちっともつるもうともせず、女子たちからはぶかれて、でも、そんな連中がくだらないって思っていた。そんな奴らとは一緒にされたくないとの思いで仕事に必死で。友情はおろか、恋愛どころではなかった。
恋生は、私が、恋生を必要とするタイミングを待っていた……。
「恋生は、転職したと言っていたけど、じゃあ、うちの会社に入ったのはどうして?」
「花に出会うためさ」水が流れるように自然と言葉があふれてくる。「正直、小学生の頃からビジネスはかじっていたし、起業もしていたからね。ま、会社員として新卒で働くのはあれが最初で最後のチャンスじゃない? 中途となるとまた事情は変わるしさ。うちの会社が副業を許可しているのは事前にリサーチ済だったし、ならば、入社前にある程度ビジネスは手放したうえで、いったんは、いち社会人として働こうと考えたんだ」
同期たちの顔を思い返す。確かに、日本独自の新卒一括採用は採用人数が多い。仲間となれる同期を見つけられるチャンスでもある。
「そっか。恋生……私たちが出会ったのは、運命、なんだよね?」
「そうだね。もう、離れられない」
テーブルのうえで指を絡ませる。その先を欲しがる、一途な指先。
とくん、と胸が高鳴る。私……。
「あのね。……恋生が遠慮していたのは知っている。私がこんなだから。だから……」
本気を伝えるんだ。本気で、本物の愛に変えてやる。自らの手で。
傷ひとつない磨かれたテーブルから目をあげて、
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