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好きじゃ足らない(2)
無防備な寝顔を晒すきみをいつまでも永遠に見ていたい。僕だけのプリンセス。未来永劫、僕のもの。
昨晩、きみだけを追い込んで僕は満足していたつもりだった。が、一緒に高みに上り詰める僥倖に比べればなんのその。
再会したとき、きみは、警戒心を露わにしていたね。同期たちが大学生の延長みたいなノリで、楽しそうにしているときみは嫌な顔をしていたね。
研修の終盤で同じチームとなったコバをびしばし鍛えた。その手腕は他のチームにいる僕の耳にもちゃんと届いていたよ。
僕は敢えて、配属先がきみと同じにならないように仕向けた。毎日見る人事の顔を見ればなにを考えているのかは大体分かる。仲のいい同志を敢えて別のチーム、配属先に配属させる。配属先が別となっても彼らの交流は別に続くわけだから会社としてはWin-winだ。ま、トヨみたいに配属から一週間で辞めたやつは別として。
その後のきみも追い続けていた。でなければ意味がないからだ。
敢えてきみと同じ路線の電車に毎日乗り、きみの動向をこの目で追い続けた。自分の目で見て確かめる。そのことに意味がある。
他人から聞いた噂話とか、その気になれば調査会社を入れることも簡単だったけれど僕はその道は選ばない。きみに対して誠実にありたいからだ。
「花……」愛おしい、最愛のファタール。そのすこし丸みを帯びた鼻先を撫でてやると、胸の奥からどうしようもない情愛が湧いてくる。こんなにも愛おしい。僕の最愛のひと。
きみが自然に目を覚ますまでずっとずっと見守っている。僕の永遠のひと。永久に、どんなことが起きようとも僕は、この心臓が動く限り、きみを、愛している。
*
目を覚ますと目が合った。自然と笑みがこぼれる。
「いま、……何時?」
「窓の外を見れば分かるかな」
そのとき、グゥウと私のお腹が鳴った。うう。恥ずかしい。
「ちょうどいい時間だね。マキノさんを呼んで、軽くご飯作って貰おうか」と私の髪を撫でて立ち上がる恋生。「花は、どんなものが食べたい? 和食でいいかな」
「うん。ちょうど、そういうのが食べたかったの。急に……涼しくなったでしょう?」
すると恋生は、ベッドに手をつくと顔を寄せ、
「僕らの仲はあっつあつだけれどね」
固い彼の胸を押す。「んもう! 恋生ったら……」
「あはは」身を起こした彼は、「僕は電話一本入れてくるから。花はゆっくり支度してて? 夕飯、たぶん、六時くらいになると思う。アメニティも、ドレッサーも、好きに使って?」
優雅な身のこなしで王子様は部屋を出て行く。改めてじっくりと眺めるとこの部屋……凄い……天井が高い……二十平米はあるだろうか……こんなに空間を遊ばせて……凡人には思いつかないアイデア。
瀟洒な天蓋つきのベッドの離れた奥に、ドレッサーがそびえていた。鏡はまるく、まばゆいジュエリーで飾られている。まさかこれ、ダイヤモンド……?
白いテーブルと、座ってみるとふっかふかな、王室のお姫様みたいなセットのドレッサー。椅子の背の高さにも驚く。――それから。
鏡のなかの自分を見て更に驚く。愛されただけで女はこんなになる。
引き出しを探るとRefaのドライヤーやブラシがあり、ブルガリのアメニティまで。うおお。ブルガリのアメニティなんて初めて見た……!
度重なる行為でお化粧が少々崩れてしまっていたので、遠慮なく。新品のクッションファンデを使う。おお、これ、韓国の高級ブランドのだ。諭吉ファンデとして話題になっていたやつ。もう諭吉じゃないけどね。
「ふぁあ……しっとりする……」ファンデを重ねただけなのに美肌が爆誕。おお、あがるぅー!
上段の浅めの引き出しのなかには新品のコスメがたくさん入っていて。気分は美容系Youtuberだ。これ一個一個検証してみたい!
「ってこれ、……私のために……?」
恋生って、昔から私のことを知っている風なことを匂わせているよね。私がコスメ好きなことをどこで……。
ええい。そんなの関係ねえ! 頭のなかでよしおを踊らせたのちに、ばんばん開封していって好きに付き合ってやる!
これは、愛だ。神宮寺恋生の本気の塊だ。
向こうが本気で来るのならば、こちらも本気で返す。なんだか、ラリーを超えて真剣なショットを打ち込んでいるかのような気分になった。体力の温存とか、まったく考えていなかった中学の頃。田舎で。することがなくて暇で。ただ一心に打ち込んだあの頃。
お化粧直しをばっちり決めて振り返ると背後の壁に黒い、ロングドレスがかけられていた。左の引き出しを引くとジュエリーが。おお。重そう……!
「これに着替えようという話だよね。よし来た」
天下の神宮寺財閥の御曹司と初ディナーと来ては。完全装備するほかあるまい。
昨晩、きみだけを追い込んで僕は満足していたつもりだった。が、一緒に高みに上り詰める僥倖に比べればなんのその。
再会したとき、きみは、警戒心を露わにしていたね。同期たちが大学生の延長みたいなノリで、楽しそうにしているときみは嫌な顔をしていたね。
研修の終盤で同じチームとなったコバをびしばし鍛えた。その手腕は他のチームにいる僕の耳にもちゃんと届いていたよ。
僕は敢えて、配属先がきみと同じにならないように仕向けた。毎日見る人事の顔を見ればなにを考えているのかは大体分かる。仲のいい同志を敢えて別のチーム、配属先に配属させる。配属先が別となっても彼らの交流は別に続くわけだから会社としてはWin-winだ。ま、トヨみたいに配属から一週間で辞めたやつは別として。
その後のきみも追い続けていた。でなければ意味がないからだ。
敢えてきみと同じ路線の電車に毎日乗り、きみの動向をこの目で追い続けた。自分の目で見て確かめる。そのことに意味がある。
他人から聞いた噂話とか、その気になれば調査会社を入れることも簡単だったけれど僕はその道は選ばない。きみに対して誠実にありたいからだ。
「花……」愛おしい、最愛のファタール。そのすこし丸みを帯びた鼻先を撫でてやると、胸の奥からどうしようもない情愛が湧いてくる。こんなにも愛おしい。僕の最愛のひと。
きみが自然に目を覚ますまでずっとずっと見守っている。僕の永遠のひと。永久に、どんなことが起きようとも僕は、この心臓が動く限り、きみを、愛している。
*
目を覚ますと目が合った。自然と笑みがこぼれる。
「いま、……何時?」
「窓の外を見れば分かるかな」
そのとき、グゥウと私のお腹が鳴った。うう。恥ずかしい。
「ちょうどいい時間だね。マキノさんを呼んで、軽くご飯作って貰おうか」と私の髪を撫でて立ち上がる恋生。「花は、どんなものが食べたい? 和食でいいかな」
「うん。ちょうど、そういうのが食べたかったの。急に……涼しくなったでしょう?」
すると恋生は、ベッドに手をつくと顔を寄せ、
「僕らの仲はあっつあつだけれどね」
固い彼の胸を押す。「んもう! 恋生ったら……」
「あはは」身を起こした彼は、「僕は電話一本入れてくるから。花はゆっくり支度してて? 夕飯、たぶん、六時くらいになると思う。アメニティも、ドレッサーも、好きに使って?」
優雅な身のこなしで王子様は部屋を出て行く。改めてじっくりと眺めるとこの部屋……凄い……天井が高い……二十平米はあるだろうか……こんなに空間を遊ばせて……凡人には思いつかないアイデア。
瀟洒な天蓋つきのベッドの離れた奥に、ドレッサーがそびえていた。鏡はまるく、まばゆいジュエリーで飾られている。まさかこれ、ダイヤモンド……?
白いテーブルと、座ってみるとふっかふかな、王室のお姫様みたいなセットのドレッサー。椅子の背の高さにも驚く。――それから。
鏡のなかの自分を見て更に驚く。愛されただけで女はこんなになる。
引き出しを探るとRefaのドライヤーやブラシがあり、ブルガリのアメニティまで。うおお。ブルガリのアメニティなんて初めて見た……!
度重なる行為でお化粧が少々崩れてしまっていたので、遠慮なく。新品のクッションファンデを使う。おお、これ、韓国の高級ブランドのだ。諭吉ファンデとして話題になっていたやつ。もう諭吉じゃないけどね。
「ふぁあ……しっとりする……」ファンデを重ねただけなのに美肌が爆誕。おお、あがるぅー!
上段の浅めの引き出しのなかには新品のコスメがたくさん入っていて。気分は美容系Youtuberだ。これ一個一個検証してみたい!
「ってこれ、……私のために……?」
恋生って、昔から私のことを知っている風なことを匂わせているよね。私がコスメ好きなことをどこで……。
ええい。そんなの関係ねえ! 頭のなかでよしおを踊らせたのちに、ばんばん開封していって好きに付き合ってやる!
これは、愛だ。神宮寺恋生の本気の塊だ。
向こうが本気で来るのならば、こちらも本気で返す。なんだか、ラリーを超えて真剣なショットを打ち込んでいるかのような気分になった。体力の温存とか、まったく考えていなかった中学の頃。田舎で。することがなくて暇で。ただ一心に打ち込んだあの頃。
お化粧直しをばっちり決めて振り返ると背後の壁に黒い、ロングドレスがかけられていた。左の引き出しを引くとジュエリーが。おお。重そう……!
「これに着替えようという話だよね。よし来た」
天下の神宮寺財閥の御曹司と初ディナーと来ては。完全装備するほかあるまい。
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