花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

美凪ましろ

文字の大きさ
15 / 45

探れ(2)

 それは、能登で行われた、ある宗教の泊まりの合宿での集合写真。私と離れたところに、あなたがいた。

 ただし、印象はかなり違う。目深に帽子をかぶって、チャームポイントのうす茶色い目もそのつややかな髪も見せずまるで世間を拒絶しているかのような。みんな笑顔でピースをしているのにあなただけ……そっぽを向いて。

「私、あなたに出会っていたんだ。……恋生」

 他に写真がない。集合写真のたった一枚のみ。いや違う。この帽子……グリーンの帽子を被った男の子はあなたひとりで、他の写真に二枚だけあなたがいるけれど、帽子で顔を隠していて。こういう……写真を後から見返されることを想定して? まさか。そこまでする?

 そもそもこの男の子。神宮寺恋生なんて名乗っていない。違う名前……。

 顔が分からないことに苛々する。せめて、顔とか声とか分かればなにか思い出せそうなのに。

 待って。この写真に映っているアユちゃん。地元の小学校が一緒のお友達だ。あれ、この合宿に行ったの、アユちゃんに誘われてだったっけ。そうだ、この頃は確か仲がよくって、一緒にお互いの家を行き来して、りぼんやジャンプとか読み漁る仲だった。――連絡先は。

 いや。地元の子たちとは上京してからほぼ音信不通でしかし……小学校同級生のグループラインがあるはず。ああ、あったあった。投稿が五年前とかだけど。アユちゃんはいないが、誰か、アユちゃんの連絡先を知っているひとは……。

 ミチちゃん。彼女、アユちゃんといまも交流があるはず。確かインスタで……。

「あ、あった」と画像を確かめる。「『女子会at緑川。大好きなカフェで』……あのカフェ、営業しているんだ……」

 ドリンクとネイルの施された手がアップにされている写真。自己顕示欲に苦笑いが漏れる。とはいえ、大事な手がかりだ。

 ミチちゃんは、地元で実家のお手伝いをしているはず……。何時だ。電話したら出るかな。よし、しよう。

「あーひさぶり!」弾んだ声。懐かしい故郷の記憶。「花やんどしたー?」

 切羽詰まって急いで用件を伝える。「ご無沙汰してます。……あのね、私元気にしてる。突然だけど、アユちゃんに私のID伝えて貰っていい? 出来ればアユちゃんと直接話したいの」

「分かった。すぐ送るー。……なぁ、花、結婚するってほんま?」

 顎が外れるかと思った。母の情報管理能力の危機感のなさよ。「……まだ、そこまでは。ただ、いい感じに付き合っているひとはいる」

「そーなんね! そっかそっかおめでとなー。結婚式東京でするんやったら呼んでま。ディズニー行ってみたいさけ」

「……分かった」苦笑いが漏れる。「じゃあ、ありがとう。よろしくね。それじゃ、また」

「またなー。今度緑川帰ってきたらだべろ」

「そうだね。じゃあ、ごきげんよう」

 セレブみたいな挨拶で締めた。いかんいかん、恋生みたいなハイスペック御曹司と交際を始めてすっかり染め抜かれている。水野さんにおかえりなさいませと言われて、ええ、なーんて、白いつばのついた帽子を被ったセレブおねえさまみたいに、平然と返すこの日常。

「ごきげんよう、……なーんて言っている未来の自分は、想像も出来なかったなぁ」

 ひとりごちていると着信。アユちゃんだ。ミチちゃん仕事が速い。

「はい。川瀬です。……うん。うん。そう、そうなんだよ。で、浄土真宗の合宿あったじゃない? あれで、緑の帽子被った男の子いたの覚えている? ああ、そう、そうなの……そう。うん。――うん」

 しばらく会話を続け、電話を切る。分かったことがある。

 ただ、それを直接恋生にぶつけるにも、要素が……。

 それから何人かに連絡を取り、確かめるまで、週末まで待たなければならなかった。万全に整えてあなたに突き付ける、そのときまでを。
感想 0

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

昨日、あなたに恋をした

菱沼あゆ
恋愛
 高すぎる周囲の評価に頑張って合わせようとしているが、仕事以外のことはポンコツなOL、楓日子(かえで にちこ)。 久しぶりに、憂さ晴らしにみんなで呑みに行くが、目を覚ましてみると、付けっぱなしのゲーム画面に見知らぬ男の名前が……。  私、今日も明日も、あさっても、  きっとお仕事がんばります~っ。

優しい紳士はもう牙を隠さない

なかな悠桃
恋愛
密かに想いを寄せていた同僚の先輩にある出来事がきっかけで襲われてしまうヒロインの話です。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

訳ありメイドは女嫌いなはずの主人に求愛される

水無月瑠璃
恋愛
セレナはある日全てを失い、路頭に迷いそうなところをメイド派遣所の所長に拾われる。それ以来派遣メイドとして働き、一人で生きてきた。 そんなある日、所長からある男性客の元に行って欲しいと頼まれる。その男性は若い女性が嫌いなようでベテランのメイドを希望しているが、スケジュールが空いているメイドがいない。そこで良くも悪くも他人に興味がなく、忠実に仕事をこなすセレナに白羽の矢が立ったが無理だと断る。 それでも押し切られてしまい、絶対追い返されると思いながら依頼主の元に向かったセレナを出迎えたのは冷たい雰囲気を纏う、容姿端麗な男性だった。 女嫌いを拗らせ、初対面のセレナにも嫌悪感を露わにする男性、ルークにセレナは思わず説教をしてしまい…

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。