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思い出を辿って(2)
視力を奪われたときに、本当に自分の人生が終わってしまったと感じました。
神様がいるとしたら何故わたくしをこのような目に遭わせるのでしょうか。
最愛の双子の片割れを奪われ、叔母の一家に引き取られたと思ったらこんな目に……。
酷いという言葉すら消え失せてしまいました。あんな事故で生き残れたこと自体が奇跡なのですから。
あの事故……乗っていたバスがハイジャックに遭い、横転し、崖を落ちてしまい、多くの死傷者が出たバス事故。
死にたいのなら勝手にひとりで死ねばいいのに。乗客を巻き込んだテロリストが憎い。何の関係もない他人だというのに。
以来、宗教というものを憎むようになりました。生活を整えることに必死で。勿論それまでの生活とはまるで違った生活を送る必要がありましたの。
両親は、生き残ったわたくしを見て涙を流し、一方で、神宮寺の家からは何の便りも来ないことに苛立ちを感じておりました。特に母は、自分が産んだ我が子があんな酷い事件に巻き込まれた被害者で生き残ったというのに、かけてやる言葉ひとつすらないのですか。
益々、神宮寺家や、わたくしをこんな目に遭わせた池水の家を憎むようになりました。なぜならば、仮にわたくしが東京の神宮寺家にいたとしたら、こんな事件に巻き込まれることなどなかったはずですから。運命。そんな一言では片付けられないくらいに、わたくしの日常は一変しました。
それでも、視覚障害を持ちながらも立派に、ビジネスパーソンとして大成し、神宮寺家を見返してやることが目標となりました。生きる目的を新たに授かった気分でしたわ。そうね。むしろ事故には感謝しておりますの。
恋生はわたくしに同情し、京都にいるわたくしの病院まで駆けつけてくれましたの。そのときも、禅雨と名乗ったことにはすこし笑いましたわ。会うのは小学校の頃のあの合宿以来……それでも、わたくしの目はもう、恋生を見ることが出来なくなりました。あの麗しい顔。わたくしと生き写しの端正なる眼差しを二度と……見られなくなることに悲しみを覚えますが、そんなことで悲しんでいたらわたくしの人生はつまらないものになりますから。耐えるしかありませんの。
視覚を奪われても案外この時代はどうとでもなります。視覚障害者用のパソコンやスマートフォンはありますから、道さえ覚えれば生活に支障はありませんし、既に東京に拠点を移し、事業家として伸びつつあるわたくしにとっては、視覚のことですら話のネタになりますから。逆に、驚かれるほどです。
ですから、恋生の婚約者を名乗る、川瀬花子が訪れてわたくしのことを見抜いたときには、……少々傷つきました。
わたくしにとって恋生は、唯一無二の運命の片割れ、なのですから。
*
神様がいるとしたら何故わたくしをこのような目に遭わせるのでしょうか。
最愛の双子の片割れを奪われ、叔母の一家に引き取られたと思ったらこんな目に……。
酷いという言葉すら消え失せてしまいました。あんな事故で生き残れたこと自体が奇跡なのですから。
あの事故……乗っていたバスがハイジャックに遭い、横転し、崖を落ちてしまい、多くの死傷者が出たバス事故。
死にたいのなら勝手にひとりで死ねばいいのに。乗客を巻き込んだテロリストが憎い。何の関係もない他人だというのに。
以来、宗教というものを憎むようになりました。生活を整えることに必死で。勿論それまでの生活とはまるで違った生活を送る必要がありましたの。
両親は、生き残ったわたくしを見て涙を流し、一方で、神宮寺の家からは何の便りも来ないことに苛立ちを感じておりました。特に母は、自分が産んだ我が子があんな酷い事件に巻き込まれた被害者で生き残ったというのに、かけてやる言葉ひとつすらないのですか。
益々、神宮寺家や、わたくしをこんな目に遭わせた池水の家を憎むようになりました。なぜならば、仮にわたくしが東京の神宮寺家にいたとしたら、こんな事件に巻き込まれることなどなかったはずですから。運命。そんな一言では片付けられないくらいに、わたくしの日常は一変しました。
それでも、視覚障害を持ちながらも立派に、ビジネスパーソンとして大成し、神宮寺家を見返してやることが目標となりました。生きる目的を新たに授かった気分でしたわ。そうね。むしろ事故には感謝しておりますの。
恋生はわたくしに同情し、京都にいるわたくしの病院まで駆けつけてくれましたの。そのときも、禅雨と名乗ったことにはすこし笑いましたわ。会うのは小学校の頃のあの合宿以来……それでも、わたくしの目はもう、恋生を見ることが出来なくなりました。あの麗しい顔。わたくしと生き写しの端正なる眼差しを二度と……見られなくなることに悲しみを覚えますが、そんなことで悲しんでいたらわたくしの人生はつまらないものになりますから。耐えるしかありませんの。
視覚を奪われても案外この時代はどうとでもなります。視覚障害者用のパソコンやスマートフォンはありますから、道さえ覚えれば生活に支障はありませんし、既に東京に拠点を移し、事業家として伸びつつあるわたくしにとっては、視覚のことですら話のネタになりますから。逆に、驚かれるほどです。
ですから、恋生の婚約者を名乗る、川瀬花子が訪れてわたくしのことを見抜いたときには、……少々傷つきました。
わたくしにとって恋生は、唯一無二の運命の片割れ、なのですから。
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