恋人の望みを叶える方法

藍栖 萌菜香

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09 【ダメ見本】嫌がることはやめましょう。

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 前立腺にあてがった指先を軽く押しあげただけで、幸成が悲鳴に近い艶声をあげた。
 俺への罪悪感から弁明するためでもなく、焦らされ仕方なく答えるのでもない。ただひたすらに気持ちがよくて、素直に迸った声だった。

 M字に足を抱えたままでは口を塞ぎようもない。当然その艶声は日向にも丸聞こえだ。
 その声にはもう、日向への羞恥や関心は存在しない。いまこの瞬間、幸成のなかには俺の指先が与える快感しか存在してないんだ。

 その事実に胸いっぱいに浸るような満足感を覚えながら、快感に震えている幸成を堪能する。
 せつなげに眉を寄せ全身で力んでいるその様子からすると、軽くドライでイッているようだ。見れば、そのペニスもたらたらと先走りを溢れさせて、いまにも達してしまいそうだった。


「ゆきなり、指が食いちぎられそうだよ。そんなに気持ちいい?」
「い、い……きもち、い」
 短く繰り返される呼吸の合間にかろうじて返されたその答えは、舌足らずでひどく幼い印象だ。おそらく無意識からでてきた返事なんだろう。

「もっと?」
「ん……ん、もっと、」
「どうがいい?」
 続けてそう問いかけたら、俺の指をきつく食い締めていたアナルがふわりと解け、何かを期待するようにひくりひくりと蠢動し始めた。
 幸成自身も力みがいくらかやわらいで、「ぁふ、はぁ」と、やわらかな喘ぎを漏らしている。

 指に感じる熱い肉の動きに気をとられ、この肉に包まれたときのことを思い出してしまった。きつく握り込まれるのもいいが、やわやわと揉みしだかれるのもかなりいい。
 つい気が急いて、とろんと蕩けだした幸成の返事も待てなくなる。
「ゆきなり、どう触ろうか?」
 たまらず、重ねてそう問いかけたら、
「こす……やさしく、なで、て」
 と、いっそう幼さを増した声がリクエストをくれた。

 先ほどのように食い締められていては身動きもままならないが、いまならかなり自由が利く。前立腺を取り囲むようにあてがっていた三本の指を手前に引くようにそっと動かし、幸成の望み通りにゆるゆるとそこを擦りたてた。


「あ、あ、あぁぁぁああぁぁ」
 たちまち指は食い締められ、ふたたび身動きがとれなくなった。擦られていないのに、それでも快感は途切れないらしく、幸成のうねりを含んだ喘ぎも、短い息継ぎを繰り返しながら長く続く。どうやら指を食い締めることで、自らその指を前立腺に押しつけているようだ。
 俺の指を想像しながら自分の指を挿れたと言っていた幸成は、やっと望みのものを手に入れて、いままさにアナニー中なんだ。

 アナルを弄る俺の手を見たいのか、懸命に背中を丸めて、自分のペニスのさらに向こう側へと目を凝らしている。その瞳は潤みきっていて、長い睫毛を軽く濡らしていた。幸成が本気で感じ入ってしまったときの兆候だ。よほど気持ちがいいらしい。
 やや落ち着いてきた様子の喘ぎ声は、「あ」混じりの細く長い息遣いへと少しずつ変わってきた。動かない俺の指に快感が目減りしてきたというよりは、深呼吸をして霧散した冷静さを掻き集めようとしているようだ。できるだけイキたくないんだろう。少しでも長く、指を愉しみたくて。

 こんな幸成を目の前にして、熱い肉に指をしゃぶられながら禁欲を続行するのは、正直きつい。猛りきった下半身の疼きを堪えるのもそろそろ難しくなってきた。
 だからといって、幸成からやっと手に入れた俺の指を早々に取りあげるのも気の毒か。
 それなら、さらに濃厚な愛撫を存分に与えて、指じゃないものを欲しがらせるまでだ。


「ひあぁぁっ、め、だいごっ、とんとん、やぁ、」
 本当は『だめ』『いやだ』と言いたいんだろう。この指の動きに幸成はかなり弱いから、言いたくなるのも無理はない。俺もそれを承知でやっていた。

 指の動きといってもけっこう単純で、指の腹で前立腺を軽くノックするだけなんだが、これがじつは絶妙な力加減を要求される。
「ゆきなり、どうだ?」
「や、でちゃうっ、もれちゃうっ」
 よし。『痛い』でも『もっと』でもないということは、この加減であってるってことだな。

 アナルの浅い位置にある括約筋が指をぎゅっと締めつけてきたが、その奥はきつくなったり緩くなったりとうねりを見せはじめた。

 そのリズムに合わせて前立腺へのノックを繰り返していると、射精しそうな感覚に迫られることに耐えきれなくなったのか、M字に抱えていた幸成の脚が崩れてくる。
 どうも抱えた膝の裏から指先を伸ばして、なんとかペニスを押さえようとしているらしい。位置的に考えてそんなことができるわけもないんだが、その判断もつかないくらい切羽詰まっているんだろう。

「ああ、せっかくきれいにM字になってたのに。ほら、もう一度ちゃんと、」
「だ、だいごっ、いっちゃう。おさえて、おねがいおさえてぇっ」
 俺の指示に従って、ふたたびM字開脚にはもどったものの、どうしても射精したくないらしい幸成が足を振り上げながら懇願してきた。

 いったん指の動きをとめてやると、赤く染まった目元に快美感の滲む涙が堪えきれずにほろりと零れる。それを空いている方の手で拭ってやったら、幸成がその手に熱い頬を摺り寄せてきた。

「まだ出したくない?」
「ん。まだがいい」
 あどけない口調で、お楽しみはあとにしてとエッチな主張する幸成が可愛くて堪らない。
 こんなの、もっと構いたくなったとしても、それこそ無理ないだろう。


「じゃあ、別のを出してみるか?」
「べつの、って……」
 幸成がなんのことか察する前に、前立腺のその奥へと指先を運んだ。
「あっ、ああっ!」
 途端に、ぎゅうと指のつけ根を締めつけられる。でも、奥のうねりは消えていない。それに合わせて、そろりと指先を動かしながら精嚢を探した。
「だっだめっ、だいごっ、それはだめっ」
 今度こそはっきりとした拒絶の言葉が飛び出した。が、もう遅い。

「いやっ、あっ、あああんんんっ」
 前立腺に隠れて左右にふたつ。コリコリとした小さな違和感を指先でゆるくつつく。
 いやだと口にしつつも幸成があげた嬌声は一段と艶っぽくて、その身で得ている快感が聞いてるこちらにまで感染しそうなほどだった。

 ゆるゆると精嚢を揉み込んでくる指先を避けたいのか、幸成がぐっと腰をあげて丸くなる。けれど、身のうちを走り抜ける快感に負けたらしい。すぐに「あぁ、だめ」と掠れたつぶやきをこぼして、ふわりと緩んでカクリと解けた。
 瞬間、ペニスの先から無色透明の液体がプシャリと飛沫をあげる。量はわずかだった勢いがよく、うっすらと汗を刷いていた幸成の胸元にまで飛び散った。

 濡れてしまった乳首を目にした幸成が「ああ……」と腑抜けた声を漏らす。約束を破ってまでした抵抗も空しく、またお漏らしをしてしまった事実を受け入れかねているんだろう。その割に目元も口元も色っぽく脱力していて、うっとりと快感に酔っているさまが手に取るようにわかった。


 幸成が潮吹きを赤ちゃんみたいだと嫌っていることは知っていた。気持ちいいことしかしないという一線は守っているものの、好きな人に嫌がることを強要するなんて、俺はどうかしているんだろうか。しかも、その嫌がるさまを見て「可愛い」と興奮するなんて……禁欲が長すぎたせいだと思いたい。

 そんなことを考えながらも、幸成がさらに嫌がると承知していながら、俺はM字の脚の中心にゆっくりと顔を伏せた。
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