【完結】喫茶マヨイガの縁切り猫

オトカヨル

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縁切り猫

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レトロな雰囲気の喫茶店、扉を開けると微かにピアノの旋律とコーヒーの香りが漂う。
 陽菜ひなは、同級生と来るようなカフェとは違う慣れない雰囲気に入り口で足を止め、そのままきょろきょろと店内を見回した。
 飴色の丸いテーブルが行儀良く並んだ店内は、通りに面した大きな窓からの日差しで隅々まで明るい。カウンターでは店主らしい男性と若い女性客が談笑している姿が見えた。
 陽菜ひながドアのところで立ち止まっている事に気づくと、すぐに店主がこちらに笑顔を向けてくれる。
 それで怖いところでは無いんだと認識できて、一つ深呼吸。
 メッセージで指定されていた一番奥の窓側の席に足を進めた。
 革張りのソファーに恐る恐る腰を下ろすと、店主が水の入ったグラスを目の前に置いてくれる。
 一緒にメニュー表を渡されたが何を頼んで良いのかもわからず、アイスコーヒーを頼んだ。
 それからスマホを取り出して確認する。約束していた時間まではまだ少しあった。
   
 ­——今の内に『なみくん』の投稿、チェックしておかないと。
 指先が慣れた動きでSNSアプリのアイコンに触れる。今日の昼まで『なみくん』の投稿を追えているから、そこから先。
 目で追ってみたけど、これといった新しいものは無かった。

 『なみくん』の事、見逃してなくてホッとする。

 と、急にスマホの画面に影が落ちた。
 視界の端に映る白いシャツ。いつの間にかそこに誰かが立っていた。
 画面に集中していて気付かなかったみたい……。
 やっと来た待ち合わせ相手だろうと、顔を上げて陽菜は息を飲む。
 
 体温を感じない白い肌、すっと通った鼻筋に、薄い唇。
 さらりと落ちる髪の色は透明感のあるハイトーンのグレージュ。首筋の辺りから覗くインナーカラーのブラウンが、輪郭を浮き立たせている。
 笑みの形に細めた目の色はカラコンなのか鈍い金、その全部が綺麗だけどどこか作り物めいて……。 
「あ、あの……私……」
 陽菜は恐る恐る、口を開いた。
 途端に青年の纏っていた雰囲気ががらりと変わる。
「ごめんねー待たせちゃって! えーっと、そうそう『ひなちゃん』!」
 そう言って、陽菜の向かいの席にどっかりと座る。
「僕、コーヒー牛乳ね、牛乳多めで!」
 水を運んで来た店主に、にかりと笑って手を上げる。
 彼の笑顔は人懐っこく、最初に感じた違和感のようなものは陽菜の頭からするっと消えていた。
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