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縁切り猫
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「『縁切り猫』さん?」
青年は隣の席に置いたボディバッグからスマホを取り出すと、こちらに画面を向けてくれる。
SNSアプリのプロフィール画面には白猫のアイコンと『縁切り猫』の文字。
プロフィールには『どんな縁も切ります』とだけ。
「長いからみんな『エニさん』って呼ぶよ。縁で、エニ。いやー、こんな胡散臭いアカウントに良く連絡してきたねえ。僕は人畜無害だけどさ、他の人にはやめといた方がいいよお。こわーい大人がいっぱいいるから」
「それはわかってます。でも、何度か話聞いてもらって、大丈夫な感じがしたから」
話、といっても直接会話したわけじゃなくて、メッセージを何度かやり取りしただけ。それでもなんとなく、この人は会っても大丈夫だと思った。
きっかけは、SNSアプリがおすすめしてきた投稿の一つ。『どんな縁も切ります、DM解放してます』とだけ書かれたそれが、陽菜の目に飛び込んで来た。
普通はスルーしてしまう。……本気で書いているなら怖いし、冗談にしてはつまらない。
だけど、その時の陽菜はそんな怪しい一文にも縋りたい気分だったから。
『縁を切ってほしいです』
そう、メッセージを送っていた。
●◯●◯
「それで、切ってほしい縁について、改めて話してもらっていいかな?」
運ばれてきたカップから、ほとんど牛乳の色をした中身を啜って、エニがこちらに身を乗り出す。
メッセージ上では簡単にだけど話はしていた。それを改めて口に出して説明するのだと思うと、ちょっと気が重い。
「なみくん、えーっと彼は『漣』って名前で雑談系の配信をしてる配信者さんなんですけど、毎日夜に配信して、最後に一人一人におやすみって言ってくれるんです。それがすごく心地よくて。だからお礼の気持ちでギフトを贈ったんです」
「ギフトって、贈り物ってわけじゃなくて、お金を送るってやつ?」
「そうです」
陽菜は頷いてから、言葉を続ける。
「そしたらSNSアプリのDMに『お話ししよう』ってメッセージが来て。最初はそんなふうに個人的なやりとりは良くないって思ってたんですけど、でも少しだけならって。……それで毎日寝る前に話すようになって。段々好きになって。なみくんも私の事、大事な人だって言ってくれたんです。でも、事務所に所属してる関係で色んな制約があるから表立っては絶対言っちゃダメって」
「秘密の恋人って感じだったんだ」
エニの言葉に陽菜はおずおずと、もう一度頷いた。
青年は隣の席に置いたボディバッグからスマホを取り出すと、こちらに画面を向けてくれる。
SNSアプリのプロフィール画面には白猫のアイコンと『縁切り猫』の文字。
プロフィールには『どんな縁も切ります』とだけ。
「長いからみんな『エニさん』って呼ぶよ。縁で、エニ。いやー、こんな胡散臭いアカウントに良く連絡してきたねえ。僕は人畜無害だけどさ、他の人にはやめといた方がいいよお。こわーい大人がいっぱいいるから」
「それはわかってます。でも、何度か話聞いてもらって、大丈夫な感じがしたから」
話、といっても直接会話したわけじゃなくて、メッセージを何度かやり取りしただけ。それでもなんとなく、この人は会っても大丈夫だと思った。
きっかけは、SNSアプリがおすすめしてきた投稿の一つ。『どんな縁も切ります、DM解放してます』とだけ書かれたそれが、陽菜の目に飛び込んで来た。
普通はスルーしてしまう。……本気で書いているなら怖いし、冗談にしてはつまらない。
だけど、その時の陽菜はそんな怪しい一文にも縋りたい気分だったから。
『縁を切ってほしいです』
そう、メッセージを送っていた。
●◯●◯
「それで、切ってほしい縁について、改めて話してもらっていいかな?」
運ばれてきたカップから、ほとんど牛乳の色をした中身を啜って、エニがこちらに身を乗り出す。
メッセージ上では簡単にだけど話はしていた。それを改めて口に出して説明するのだと思うと、ちょっと気が重い。
「なみくん、えーっと彼は『漣』って名前で雑談系の配信をしてる配信者さんなんですけど、毎日夜に配信して、最後に一人一人におやすみって言ってくれるんです。それがすごく心地よくて。だからお礼の気持ちでギフトを贈ったんです」
「ギフトって、贈り物ってわけじゃなくて、お金を送るってやつ?」
「そうです」
陽菜は頷いてから、言葉を続ける。
「そしたらSNSアプリのDMに『お話ししよう』ってメッセージが来て。最初はそんなふうに個人的なやりとりは良くないって思ってたんですけど、でも少しだけならって。……それで毎日寝る前に話すようになって。段々好きになって。なみくんも私の事、大事な人だって言ってくれたんです。でも、事務所に所属してる関係で色んな制約があるから表立っては絶対言っちゃダメって」
「秘密の恋人って感じだったんだ」
エニの言葉に陽菜はおずおずと、もう一度頷いた。
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