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縁切り猫
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「なんだよ、陽菜のやつ。今日はなんでギフト送ってこないんだよ。ただでさえ理依奈が消えて、ギフトも減ってるってのに」
配信を終え、『漣』は舌打ちを一つ。それから陽菜へメッセージを送る。
『今日はどうしたの』
『体調でも悪いの』
『陽菜のコメント楽しみにしてたのに』
どれだけ送っても返事はない、それどころか。
「既読もつかねえな」
苛々とスマホの画面を指先で叩く。と、
「コメントが楽しみ、ねえ。楽しみにしてたのは、金のほうだろ?」
不意に背後から声がして、『漣』はびくりと肩を振るわせ振り返る。
整った顔の青年がこちらをじいっと見つめていた。
その顔に見覚えはない。
「いつの間に入ってきたんだあんた! 不法侵入だ、警察呼ぶぞ」
「はいはい、大人しくね」
110をコールしようとしていたスマホが、するりと手から抜き取られた。取り返そうと伸ばした手が、体がぴくりとも動かない。
「なんだよ、体、動かねえ」
知らぬ内に薬でも盛られたのかと焦り、ぶわりと『漣』の額に汗が滲む。
そんな彼の焦りをよそに、青年は手当たり次第にそこらの荷物を漁る。
「お、免許証あった。あんた波川さんっていうんだ? それで『漣』なのか」
「何してるんだよ、やめろ! 写真撮るな!」
波川の免許証を表裏丁寧にスマホで撮影してから、青年はにこにこと笑う。
「わかったお前、花緒の新しいオトコか? そうじゃなきゃ、理依奈か、陽菜か」
「へえ、そんなに居るんだ、君が騙してる子」
「……それがなんだよ。騙される方も悪いだろ。俺はちゃんとその分、あいつらに夢を見せてやってるんだから」
吐き捨てるように返す波川。
そんな彼を青年はきゅうっと目を細めて嬉しそうに見る。
「いいねいいね、ワルモノって感じだ」
「は? お前何言って……」
波川の言葉はそこで止まった。
目の前で青年の口が裂けたからだ。
その口は大きく大きく開き、見る間に体は歪み、軋み、人の形ではなくなった。そうして全身が艶やかな白い毛に覆われて……。
「なっ、化け猫!」
「失礼だなあ、どっちかっていうと、神様さ」
そう言うと、二メートルはあろうかという白い猫は舌で唇を舐める。波川は顔を目一杯に上向けて、青い顔で必死に問う。
「お、俺を食べるつもりか?」
「うん、そのつもり。……でも、僕の言う事を聞いてくれたら見逃してあげてもいいよ」
「や、やる。なんだってやるから……」
そう言いながら波川は音がしそうな程に全力で首を縦に振る。
それを見下ろして、にかりと猫が笑う。
「……まあ、君には死ぬより苦しいかもしれないけどね」
その声は、必死に命乞いをする波川の耳には届かなかった。
配信を終え、『漣』は舌打ちを一つ。それから陽菜へメッセージを送る。
『今日はどうしたの』
『体調でも悪いの』
『陽菜のコメント楽しみにしてたのに』
どれだけ送っても返事はない、それどころか。
「既読もつかねえな」
苛々とスマホの画面を指先で叩く。と、
「コメントが楽しみ、ねえ。楽しみにしてたのは、金のほうだろ?」
不意に背後から声がして、『漣』はびくりと肩を振るわせ振り返る。
整った顔の青年がこちらをじいっと見つめていた。
その顔に見覚えはない。
「いつの間に入ってきたんだあんた! 不法侵入だ、警察呼ぶぞ」
「はいはい、大人しくね」
110をコールしようとしていたスマホが、するりと手から抜き取られた。取り返そうと伸ばした手が、体がぴくりとも動かない。
「なんだよ、体、動かねえ」
知らぬ内に薬でも盛られたのかと焦り、ぶわりと『漣』の額に汗が滲む。
そんな彼の焦りをよそに、青年は手当たり次第にそこらの荷物を漁る。
「お、免許証あった。あんた波川さんっていうんだ? それで『漣』なのか」
「何してるんだよ、やめろ! 写真撮るな!」
波川の免許証を表裏丁寧にスマホで撮影してから、青年はにこにこと笑う。
「わかったお前、花緒の新しいオトコか? そうじゃなきゃ、理依奈か、陽菜か」
「へえ、そんなに居るんだ、君が騙してる子」
「……それがなんだよ。騙される方も悪いだろ。俺はちゃんとその分、あいつらに夢を見せてやってるんだから」
吐き捨てるように返す波川。
そんな彼を青年はきゅうっと目を細めて嬉しそうに見る。
「いいねいいね、ワルモノって感じだ」
「は? お前何言って……」
波川の言葉はそこで止まった。
目の前で青年の口が裂けたからだ。
その口は大きく大きく開き、見る間に体は歪み、軋み、人の形ではなくなった。そうして全身が艶やかな白い毛に覆われて……。
「なっ、化け猫!」
「失礼だなあ、どっちかっていうと、神様さ」
そう言うと、二メートルはあろうかという白い猫は舌で唇を舐める。波川は顔を目一杯に上向けて、青い顔で必死に問う。
「お、俺を食べるつもりか?」
「うん、そのつもり。……でも、僕の言う事を聞いてくれたら見逃してあげてもいいよ」
「や、やる。なんだってやるから……」
そう言いながら波川は音がしそうな程に全力で首を縦に振る。
それを見下ろして、にかりと猫が笑う。
「……まあ、君には死ぬより苦しいかもしれないけどね」
その声は、必死に命乞いをする波川の耳には届かなかった。
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