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夢見る貘
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「お願いしますって、エニ兄さん!」
何度断っても縋り付いてくるサトウラの顔に、エニは一冊の漫画雑誌をぎゅっと押し付けた。
「しつこいなあ、そんなに言うならコレ、読んでみるといいよ」
「マンガっすか?」
「朱莉ちゃんから聞いた話から考えると、コレ、夢の中の君がモデルのはず」
「え?」
差し出された分厚い冊子を受け取ったサトウラは、ページをめくった最初こそ顔を顰めて見ていたが、すぐに表情をくるくると変えながら読み進めていく。
読み終わると満足げに息を吐き出し、口を開いた。
「ホラーだけど、なんか感動するシーンもあるし、続きが気になるっすね。……で、俺がモデルってことはこのカッコいいヒーローが」
「違う違う、こっち」
サトウラの言葉断ち切って、エニは誌面いっぱいに描かれた涙目のヒロインを指さした。
ぴしり、とサトウラが動きを止める。
それからまじまじとヒロインを眺めてから、たっぷりと息を吸い込み声を上げる
「はーー!? ヒロインの方ですか? 何で?」
「何でって言われても僕は知らないけど、彼女、君のこと理想そのものの可愛い人って言ってたみたいだよ」
「意味がわからねー!」
サトウラは両手で頭を抱え込んだ。
くすりと笑って、様子を眺めていたマスターが彼のカップにビスケットを置く。
「とても愛情を感じる描かれ方ですね。どのシーンでも丁寧に、可愛らしく描かれている。それだけあなたというキャラクターを大事にしているのでしょう」
「そう言われると、まんざらでもないっすけど」
線の一本一本まで手を抜かない、魅力的な美しい絵。表紙に描かれている作者名は『雛川めあ』。
「傑作のために、甘んじて悪夢に招待されなよー」
「それとこれとは……」
にやにやと笑いながら言うエニに言い返そうとしたサトウラは、急に言葉を切り『うぇぇ』と、情けない声を上げた。
「なんでこの時間に!?」
サトウラは慌ててカップを煽り、口にビスケットを放り込んで咀嚼する。
それからマスターを振り返ると、
「すんません、また来ますから!」
一言残し、するりと空気に溶けるように姿を消した。
何度断っても縋り付いてくるサトウラの顔に、エニは一冊の漫画雑誌をぎゅっと押し付けた。
「しつこいなあ、そんなに言うならコレ、読んでみるといいよ」
「マンガっすか?」
「朱莉ちゃんから聞いた話から考えると、コレ、夢の中の君がモデルのはず」
「え?」
差し出された分厚い冊子を受け取ったサトウラは、ページをめくった最初こそ顔を顰めて見ていたが、すぐに表情をくるくると変えながら読み進めていく。
読み終わると満足げに息を吐き出し、口を開いた。
「ホラーだけど、なんか感動するシーンもあるし、続きが気になるっすね。……で、俺がモデルってことはこのカッコいいヒーローが」
「違う違う、こっち」
サトウラの言葉断ち切って、エニは誌面いっぱいに描かれた涙目のヒロインを指さした。
ぴしり、とサトウラが動きを止める。
それからまじまじとヒロインを眺めてから、たっぷりと息を吸い込み声を上げる
「はーー!? ヒロインの方ですか? 何で?」
「何でって言われても僕は知らないけど、彼女、君のこと理想そのものの可愛い人って言ってたみたいだよ」
「意味がわからねー!」
サトウラは両手で頭を抱え込んだ。
くすりと笑って、様子を眺めていたマスターが彼のカップにビスケットを置く。
「とても愛情を感じる描かれ方ですね。どのシーンでも丁寧に、可愛らしく描かれている。それだけあなたというキャラクターを大事にしているのでしょう」
「そう言われると、まんざらでもないっすけど」
線の一本一本まで手を抜かない、魅力的な美しい絵。表紙に描かれている作者名は『雛川めあ』。
「傑作のために、甘んじて悪夢に招待されなよー」
「それとこれとは……」
にやにやと笑いながら言うエニに言い返そうとしたサトウラは、急に言葉を切り『うぇぇ』と、情けない声を上げた。
「なんでこの時間に!?」
サトウラは慌ててカップを煽り、口にビスケットを放り込んで咀嚼する。
それからマスターを振り返ると、
「すんません、また来ますから!」
一言残し、するりと空気に溶けるように姿を消した。
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