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夢見る貘
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「最近、雛川先生の描くヒロイン、すごく良くなりましたね! 先生のホラー作品は元々人気でしたけど、今までは強いヒロインが怪異と戦う作品が多かったのが、今作は強がってるヒロインが怖い目に遭いながらも涙目で必死に戦う姿が『可哀想で可愛い』って評判ですよ」
「本当ですか?!」
ビデオ通話での打ち合わせの席で担当編集の佐々木にそう言われ、めあは嬉しくて思わず拳を握った。
「嬉しいです! 加藤さんに『ヒロインに可愛げがない』って言われて、それからすごく悩んで描いた子だったから」
「前任の加藤がそんなことを……? 結果として良い方向になりましたけど発言としては問題ですね、申し訳ございません。お気を悪くされたんじゃないですか?」
「言われた時は確かにすごく落ち込みました。でも、おかげで良い作品になったので」
「それなら良いのですが……あの、雛川先生。私たち女性同士でもありますし、他にも加藤が何か失礼なことを言っていたようでしたら、ご遠慮なさらず言っていただければ……」
「いえいえ、大丈夫です!」
どこかすっきりしない表情の佐々木。めあはにこりと笑みを向ける。
その笑顔を見て佐々木は気持ちを切り替えたのか、すぐに話を打ち合わせに戻した。
「そうそう、今回送っていただいたネームもすごく良かったですよ! 問題ありませんので、そのまま進めてください」
「ありがとうございます! あ、あと加藤さんにお大事にと伝えてください。 体調不良で他の部署に移動されたんですよね?」
「え、ええ、お気遣いありがとうございます。伝えておきますね」
ぎこちない笑みで頭を下げる佐々木を不思議に思いながら、めあは通話終了のボタンをクリックした。
通話を終え、一つ伸びをしてめあはモニターに向き合った。
そこには、涙を浮かべ顔を歪めながらも必死に化け物たちと向き合う少女が描かれていた。
「可哀想で可愛い」
夢で出会った青年がモデル。大きな体で時に震え、時に涙を浮かべ右往左往する姿が本当に可哀想で可愛くて。
夢の中で彼をどう怖がらせるか考えるだけで、胸が痛いくらいに高鳴る。
「よーし、描き進めるぞー!」
そう意気をあげペンを握った瞬間、邪魔をするようにインターホンから軽やかな音が鳴った。
来客の予定はないのにと思いつつ、めあは仕方なく立ち上がる。
「どなたですか?」
インターホン越しに問う。
エントランスからの映像には、前任の担当編集、加藤の顔が映っていた。
体調不良と聞いていた通り、映像でもわかるくらいに頬がこけていた。
「どうしたんですか?」
めあの問いに、加藤は困ったような顔で口を開いた。
「申し訳ございません、以前打ち合わせに伺った際に私、忘れ物をしたようでして」
めあの住んでいるマンションには共有の小さな応接室がある。
担当編集とはいえ男性を家にあげたくなかっためあは、普段はそこで打ち合わせをしていた。
管理室からも見える場所なので安心できたのだ。
忘れ物もそこにあるはず。
「それならそこで待っててくれれば、探してエントランスまで持って行きますよ」
「いえいえ、そこまでお手間かけるわけには……。エントランスだけ鍵をあけてくださればこちらで探します。管理室でも聞いたんですが、届いていないようなので。ーー娘にもらった大事な万年筆なんですよ」
まあそれくらいならいいかなと、めあは頷いて自動ドアのロック解除ボタンを押した。
「本当ですか?!」
ビデオ通話での打ち合わせの席で担当編集の佐々木にそう言われ、めあは嬉しくて思わず拳を握った。
「嬉しいです! 加藤さんに『ヒロインに可愛げがない』って言われて、それからすごく悩んで描いた子だったから」
「前任の加藤がそんなことを……? 結果として良い方向になりましたけど発言としては問題ですね、申し訳ございません。お気を悪くされたんじゃないですか?」
「言われた時は確かにすごく落ち込みました。でも、おかげで良い作品になったので」
「それなら良いのですが……あの、雛川先生。私たち女性同士でもありますし、他にも加藤が何か失礼なことを言っていたようでしたら、ご遠慮なさらず言っていただければ……」
「いえいえ、大丈夫です!」
どこかすっきりしない表情の佐々木。めあはにこりと笑みを向ける。
その笑顔を見て佐々木は気持ちを切り替えたのか、すぐに話を打ち合わせに戻した。
「そうそう、今回送っていただいたネームもすごく良かったですよ! 問題ありませんので、そのまま進めてください」
「ありがとうございます! あ、あと加藤さんにお大事にと伝えてください。 体調不良で他の部署に移動されたんですよね?」
「え、ええ、お気遣いありがとうございます。伝えておきますね」
ぎこちない笑みで頭を下げる佐々木を不思議に思いながら、めあは通話終了のボタンをクリックした。
通話を終え、一つ伸びをしてめあはモニターに向き合った。
そこには、涙を浮かべ顔を歪めながらも必死に化け物たちと向き合う少女が描かれていた。
「可哀想で可愛い」
夢で出会った青年がモデル。大きな体で時に震え、時に涙を浮かべ右往左往する姿が本当に可哀想で可愛くて。
夢の中で彼をどう怖がらせるか考えるだけで、胸が痛いくらいに高鳴る。
「よーし、描き進めるぞー!」
そう意気をあげペンを握った瞬間、邪魔をするようにインターホンから軽やかな音が鳴った。
来客の予定はないのにと思いつつ、めあは仕方なく立ち上がる。
「どなたですか?」
インターホン越しに問う。
エントランスからの映像には、前任の担当編集、加藤の顔が映っていた。
体調不良と聞いていた通り、映像でもわかるくらいに頬がこけていた。
「どうしたんですか?」
めあの問いに、加藤は困ったような顔で口を開いた。
「申し訳ございません、以前打ち合わせに伺った際に私、忘れ物をしたようでして」
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管理室からも見える場所なので安心できたのだ。
忘れ物もそこにあるはず。
「それならそこで待っててくれれば、探してエントランスまで持って行きますよ」
「いえいえ、そこまでお手間かけるわけには……。エントランスだけ鍵をあけてくださればこちらで探します。管理室でも聞いたんですが、届いていないようなので。ーー娘にもらった大事な万年筆なんですよ」
まあそれくらいならいいかなと、めあは頷いて自動ドアのロック解除ボタンを押した。
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