【完結】喫茶マヨイガの縁切り猫

オトカヨル

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夢見る貘

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 暗い通路に立っていた。
 どうしてここに居るのかわからない、だけどここから逃げなければという強い思いが男の背中を押す。

 手にした懐中電灯の灯りはほんの少し先までしか照らしてくれない。暗闇の中にまあるく浮かび上がるのは規則正しく両側に並んだ錆びた金属製の扉。
 背後は壁、進む以外の選択は無い。
 仕方なく細い通路を恐る恐る進む。
 
 心臓が痛いくらいに跳ね回る。呼吸が浅くなる。

 通路をしばらく進んだところで、不意に、ぎ、ぎぃ、と背後から音がした。
 振り返ってはいけない、でも何が起きたのかを知らなくてはいけない。
 相反する気持ちに狂いそうになりながらそおっと体を捻り、懐中電灯で後方を照らす。
 そして男は、飛び出しかけた悲鳴をぐっと飲み込み、床を蹴り付け全力で駆け出した。

 『何か』が、扉から出てきていた。
 赤黒く、てらりと光る、『何か』。
 それは人の臓物に似て、けれど動く、『何か』。

 懸命に走りながら、頭の中、いや身体中が恐怖でいっぱいだった。
 
 肩越しに時折、明かりを向けて確認する。徐々に『何か』と自分の距離は縮まってきていた。
 確実に自分を認識して追ってきていると感じて、息をする間さえ惜しむほどに必死に走る。

「そんな……」
 目指す先に行き止まりが見え、絶望が口から漏れた。手当たり次第近くの扉を開けようと試してみるも、どこも鍵がかかっているのか開かない。

 回らないドアノブをガチャガチャと揺すっていると、ふと、首筋に生暖かい風が吹きつけた。
 壊れたおもちゃの様にぎこちなく、後ろを振り返る。

「——————ぁあ」

 悲鳴のつもりが、気の抜けた声だけが喉から漏れた。
 視界いっぱいに赤黒く、ぬらぬらと光る肉塊が迫ってきていた——。
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