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間話 縁なき花嫁
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「そら、この娘がお前の花嫁だ」
言葉と共に柔らかなおくるみに包まれた赤子を手渡され、エニシは目を丸くし、言葉を失った。
「どうしたそんな顔をして。ずっと言っていただろう、人の縁ばかり結ぶのは虚しいと。 だからお前にも縁を結んでやろうと連れてきてやったのだ」
その人はエニシの顔を覗き込んで笑顔で言うが、エニシは自分の手の中に委ねられた無垢な命を前に身動き一つ取れない。
正直にいうならば、動けばこの小さな温もりを失ってしまうのではないかと、怖くてしかたなかった。
「お前の腕に安心しきって眠っているではないか」
そんなエニシの気持ちを知らず、赤子はすやすやと寝息をたてている。
「姫様、いったいどこからこの子を拐かしてきたのですか?」
腕の中の赤子が目を覚さないよう、声を抑えつつも強くそう問う。彼女は長い黒髪を揺らし、ふいっと横を向くと吹けもしない口笛を吹く仕草をする。
エニシが姫と呼んでいるのはこの『御縁神社』の祭神だ。
女神であり、地元の氏子たちからは『ムスビ姫』や『オムスビ様』と呼ばれている。
よくふらふらと出かけてしまい、最近はすっかり縁結びを行うのもエニシの仕事になりかかっていた。
だから『人の縁ばかり結ぶのは虚しい』と、暗に姫に『自分の役目を果たして欲しい』と訴えいていたわけで。
……それがこんな結果に繋がるなんて思いもしなかった。
「早く親元に返しに行きましょう」
エニシがそう言い歩き出そうとすると、服の裾を姫が掴み引き留める。
「その娘をよく見てみるといい」
言われるままにじいっと見つめて、それからエニシは息を呑んだ。
「縁がどこにもつながってない?」
「そう、この子には帰るところなんてないんだよ。本来なら縁が繋がっているはずの両親は自らその縁を手放し、そのせいでそこから更に連なるはずの誰とも縁を結ぶことなく置き去られた天涯孤独の小さな命さ。だからこそ神の花嫁に相応しい。お前とともに神域に暮らせばすぐに人でなくなるだろう。望むように育て、花嫁として愛でれば良い」
腕の中の赤子は小さく、軽く、そうして温かい。
ずっとそばにいてくれる存在が手に入ると言うのなら、それは嬉しいことだろう。
だけど。
「そういうのは、なんかちょっと違うんですよ」
顔を上げて、エニシはそう言い切った。
言葉と共に柔らかなおくるみに包まれた赤子を手渡され、エニシは目を丸くし、言葉を失った。
「どうしたそんな顔をして。ずっと言っていただろう、人の縁ばかり結ぶのは虚しいと。 だからお前にも縁を結んでやろうと連れてきてやったのだ」
その人はエニシの顔を覗き込んで笑顔で言うが、エニシは自分の手の中に委ねられた無垢な命を前に身動き一つ取れない。
正直にいうならば、動けばこの小さな温もりを失ってしまうのではないかと、怖くてしかたなかった。
「お前の腕に安心しきって眠っているではないか」
そんなエニシの気持ちを知らず、赤子はすやすやと寝息をたてている。
「姫様、いったいどこからこの子を拐かしてきたのですか?」
腕の中の赤子が目を覚さないよう、声を抑えつつも強くそう問う。彼女は長い黒髪を揺らし、ふいっと横を向くと吹けもしない口笛を吹く仕草をする。
エニシが姫と呼んでいるのはこの『御縁神社』の祭神だ。
女神であり、地元の氏子たちからは『ムスビ姫』や『オムスビ様』と呼ばれている。
よくふらふらと出かけてしまい、最近はすっかり縁結びを行うのもエニシの仕事になりかかっていた。
だから『人の縁ばかり結ぶのは虚しい』と、暗に姫に『自分の役目を果たして欲しい』と訴えいていたわけで。
……それがこんな結果に繋がるなんて思いもしなかった。
「早く親元に返しに行きましょう」
エニシがそう言い歩き出そうとすると、服の裾を姫が掴み引き留める。
「その娘をよく見てみるといい」
言われるままにじいっと見つめて、それからエニシは息を呑んだ。
「縁がどこにもつながってない?」
「そう、この子には帰るところなんてないんだよ。本来なら縁が繋がっているはずの両親は自らその縁を手放し、そのせいでそこから更に連なるはずの誰とも縁を結ぶことなく置き去られた天涯孤独の小さな命さ。だからこそ神の花嫁に相応しい。お前とともに神域に暮らせばすぐに人でなくなるだろう。望むように育て、花嫁として愛でれば良い」
腕の中の赤子は小さく、軽く、そうして温かい。
ずっとそばにいてくれる存在が手に入ると言うのなら、それは嬉しいことだろう。
だけど。
「そういうのは、なんかちょっと違うんですよ」
顔を上げて、エニシはそう言い切った。
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