【完結】喫茶マヨイガの縁切り猫

オトカヨル

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夜歩くモノ

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レトロな雰囲気の喫茶店、扉を開けると微かにピアノの旋律とコーヒーの香りが漂う。
 飴色の丸いテーブルが行儀良く並んだ店内は、通りに面した大きな窓からの日差しで隅々まで明るい。
 一番奥の窓側の席には、エニが今にも泣き出しそうな顔の女性と向かい合っていた。

「縁を切りたいけど、相手が誰だかわからない?」
 エニは相手の言葉を反芻して目を瞬いた。
「そうなんです」
 項垂れてそう返すのは、SNS経由で『縁切り猫』に連絡をくれた女性。確か梨花というアカウント名だったはず。
「梨花ちゃんだっけ、それってどういう事?」

「変なことを言ってるのは、わかってるんです。でも週に一度家で誰かと一緒に過ごしている記憶はあるのに、その『誰か』が思い出せなくて」
「えーっと、夢で見たとかじゃなくて?」
 悪夢のせいならサトウラがまた悪さをしている可能性もある。
 そう思ったが、彼女は左右に首を振る。

「違います。来た時に何をしてるかは覚えてるんです。一緒にご飯食べたり、映画観たりして楽しかったって、それは覚えてる。ちゃんと家の中にはその記憶通りの痕跡もあるんです。それに会っている間は、こんなふうにおかしいなんて感じることもなくて」
 エニはぎゅっと眉根を寄せる。
「でも、会っていない間はその相手の事が思い出せない……?」
「そうなんです。 相手がわからないからどう対処していいのかもわからなくて。段々と怖くなって来ちゃって。もしかしたらお祓いとかそういうののほうがいいのかもって思ったんですけど、そんな時に『縁切り猫』さんの投稿を見かけたんです」

 『どんな縁も切ります』
 そう謡うエニのアカウントを見つけられるのは、切るべき悪縁を持つ相手だけ。
 だとしたら、彼女に繋がっている縁は、切らなければならないものなのだろう。

「週に一度来るって、曜日は決まってる?」
「水曜日の夜です。会社が定時日なのでゆっくりできるねって、いつも話してるので」
「水曜って、今日かー」
 エニは腕を組んで、あまり遅くなると朱莉が心配するかもと思い、少し悩む。
 だけど、彼女の話からはどことなく『ワルモノ』の匂いがする。
 この縁切りを終えたら、朱莉が喜ぶ話が聞かせられるかもしれない。

 だとしたら。

「今からそっちの家にお邪魔してもいいかな?」
 エニの提案に梨花は、縋るような目で頷いた。
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