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第五章 真っ暗聖女、初めてのデート?
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「どうした?」
馬車前方の小窓を開け、ルルタが鋭い声を投げた。
「申し訳ございません、馬車の前に人がおりまして……」
戸惑い混じりの返事に、ルルタは御者越しに小窓から道の先を確認し、小さく……本当に聞き違いではと思うほどに小さく舌打ちした。
ゆっくりとルルタが扉を開ける。
「見ていたかのようなタイミングの悪さだね」
「馬鹿言うな、最高のタイミングだっただろう?」
外から聞こえたその声に、私は慌ててルルタの背を追い外へ顔を出した。
「院長!?」
私の呼びかけに、片手を上げて応える人。
「治療院の外では、『お父様』って呼んでくれよ」
村の治療院の院長であり、孤児である私の育ての親、カルスがそこに立っていた。
「今まで一度たりともそんな上品な呼び方した事ないでしょう、院長。大体なんでここに? それに、村からならもっと時間がかかるはずなのに?」
矢継ぎ早の私の質問に、カルスは馬車を指差した。
「まあまあ、積もる話は中でゆっくり、な」
片目を瞑って見せるカルスに、ルルタは大人しく馬車への進路をあける。
「とりあえず乗ってください」
「じゃあ、お言葉に甘えて~」
軽快な足取りで馬車に乗り込んできたカルスは、迷いなく私の隣に腰を下ろした。
車内に戻ったルルタがそれを見て、嫌な顔をする。
「あと半月はかかると思ったのに」
ため息と共に吐き出したルルタの一言。
カルスはしてやったりといった感じで、にやりと笑ってみせた。
「それで、どうやってこんなに早く?」
「馬を変えながら飛ばしてきたからな、魔道具による伝信で『娘が結婚した』って事後報告されたから飛んできた」
言われてみれば確かに、いきなりそんな事を聞いたら驚いて飛んできてもおかしくはない。
「でも、よく私の居場所がわかりましたね?」
「メイナの魔力は独特だから、すぐわかるさ」
「だからって、馬車の前に飛び出したら危ないでしょう」
轢かれたらどうするつもりだったのか。
「大丈夫だよメイ、この人、馬車ぐらい片手で止めるよ」
誤魔化すようにそっぽを向いたカルスに代わって、ルルタがそう答える。
「いくらなんでも片手では無理、両手ならなんとかいけるかなあ」
嘯くカルス。まあ、これ以上責めても仕方ないので、私は一番気になっていた事を聞いてみる。
「そういえば……二人は知り合いなんですか?」
「魔物浄化の露払い担当の僕達と、カルス達神官は、現場で良く顔を合わせるからね」
「え? 院長……魔物の浄化に参加してたんですか?」
驚く私に、カルスは軽く返す。
「サボってばっかりだと思ってただろ? 実は、世界を守ってたんだぞ~?」
「そんな軽く言われても、信用できないんですが」
私の言葉に、カルスは声を上げて笑った。ルルタは渋い顔のまま口を開く。
「こんなだけど、現場では役に立ってたよ」
「こんな、とか言うなよ。助けあった仲だろう?」
「仲が良いんですね?」
「「良くない!」」
二人の答える声が重なって、私は思わず笑ってしまった。
馬車前方の小窓を開け、ルルタが鋭い声を投げた。
「申し訳ございません、馬車の前に人がおりまして……」
戸惑い混じりの返事に、ルルタは御者越しに小窓から道の先を確認し、小さく……本当に聞き違いではと思うほどに小さく舌打ちした。
ゆっくりとルルタが扉を開ける。
「見ていたかのようなタイミングの悪さだね」
「馬鹿言うな、最高のタイミングだっただろう?」
外から聞こえたその声に、私は慌ててルルタの背を追い外へ顔を出した。
「院長!?」
私の呼びかけに、片手を上げて応える人。
「治療院の外では、『お父様』って呼んでくれよ」
村の治療院の院長であり、孤児である私の育ての親、カルスがそこに立っていた。
「今まで一度たりともそんな上品な呼び方した事ないでしょう、院長。大体なんでここに? それに、村からならもっと時間がかかるはずなのに?」
矢継ぎ早の私の質問に、カルスは馬車を指差した。
「まあまあ、積もる話は中でゆっくり、な」
片目を瞑って見せるカルスに、ルルタは大人しく馬車への進路をあける。
「とりあえず乗ってください」
「じゃあ、お言葉に甘えて~」
軽快な足取りで馬車に乗り込んできたカルスは、迷いなく私の隣に腰を下ろした。
車内に戻ったルルタがそれを見て、嫌な顔をする。
「あと半月はかかると思ったのに」
ため息と共に吐き出したルルタの一言。
カルスはしてやったりといった感じで、にやりと笑ってみせた。
「それで、どうやってこんなに早く?」
「馬を変えながら飛ばしてきたからな、魔道具による伝信で『娘が結婚した』って事後報告されたから飛んできた」
言われてみれば確かに、いきなりそんな事を聞いたら驚いて飛んできてもおかしくはない。
「でも、よく私の居場所がわかりましたね?」
「メイナの魔力は独特だから、すぐわかるさ」
「だからって、馬車の前に飛び出したら危ないでしょう」
轢かれたらどうするつもりだったのか。
「大丈夫だよメイ、この人、馬車ぐらい片手で止めるよ」
誤魔化すようにそっぽを向いたカルスに代わって、ルルタがそう答える。
「いくらなんでも片手では無理、両手ならなんとかいけるかなあ」
嘯くカルス。まあ、これ以上責めても仕方ないので、私は一番気になっていた事を聞いてみる。
「そういえば……二人は知り合いなんですか?」
「魔物浄化の露払い担当の僕達と、カルス達神官は、現場で良く顔を合わせるからね」
「え? 院長……魔物の浄化に参加してたんですか?」
驚く私に、カルスは軽く返す。
「サボってばっかりだと思ってただろ? 実は、世界を守ってたんだぞ~?」
「そんな軽く言われても、信用できないんですが」
私の言葉に、カルスは声を上げて笑った。ルルタは渋い顔のまま口を開く。
「こんなだけど、現場では役に立ってたよ」
「こんな、とか言うなよ。助けあった仲だろう?」
「仲が良いんですね?」
「「良くない!」」
二人の答える声が重なって、私は思わず笑ってしまった。
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