【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

文字の大きさ
52 / 72
第十三章 聖女と魔女

6

しおりを挟む
「私に敵うわけがないでしょう? 今の貴女は溜め込んでいた力の全てを使い果たしたばかり。しかも魂と肉体の繋がりを絶たれている状態では力の回復も殆どできないのに」
 一体何でできている鎖なんだろう、体がまったく動かない。
「これはね、私の魔力で編み上げた『光繋ぎの鎖』。光の魔力を吸い上げて、それを拘束する力に代えるから、光の魔力を使う者には神であれ人であれ良く効くのよ。ケイの中でいつか復讐できると信じて、少しずつ少しずつ作っていたの。すごいでしょう?」

 ケイナーンが強く杖を引くと、鎖はギリギリと私の体を締め付けて来た。
「ふふ、女神はこの神域に縛り付けて、見ているだけしか出来なかった私の気持ちをしばらく味わってもらうわ。その後は私の力の供給源にでもしましょうか。そっちの貴女はあとからゆっくり力を魂ごともらってあげる。安心して、体も私が有意義に使ってあげるわ。そうして私、今度こそ殿下の元に行くのよ」
「殿下……」
 私自身の事よりも、もしかしてルルタが狙われているのだろうかと、私は焦る。
「隣国の王子、ルトルゥ殿下よ。直接お会いしたことはないけれど、伝信の魔法道具越しに見る姿は百年前に私を愛してくれていた殿下とそっくりなの。……きっとあの方の生まれ変わりだわ。この国を捧げれば、私を妃にすると約束してくださったのよ」
「そん、なの、本当か……わからないじゃない、ですか」
 私は苦しい息の中で、必死に言葉を紡ぐ。
「黙りなさい!」
 一層強く鎖を引き絞られて、私は呻いた。

 そこに、歓喜の声が上がった。
「まあ! 向こうから来てくれるなんて、手間が省けました」
 ケイナーンが嬉しそうに手を振るうと、それに合わせてぼんやりと動く人影が見えて来た。

「聖堂の様子が見えるわ、ほら、あなたの体がこっちに来てくれたのよ」
「私の、体?」
 私は言われるままに顔を上げる。
「ルル! 院長!」
 そこには私の体を抱きかかえたルルタと、その後ろで支援するように立つカルスが見えた。
 
「魂が聖堂から繋がるこの神域にあると思って、駆けつけて来たのね。体を魂から離しすぎない様に」
 ケイナーンが唇を歪める。
「これで舞台は整ったわ。女神の方は後回しにして、まずは貴女の魂を私の物に……それからゆっくりと貴女の体もいただきましょう」
 ケイナーンの手が私の心臓の辺りに押し当てられた。触れたところが、ぞっとする程に冷たい。逃げようと体を捩るが、鎖のせいでまったく動けない。

 そこに声が響いた。聖堂の二人の声の様だった。
「メイ、聞いてるかな? カルスも覚悟したね?」
 カルスが悔しそうに、顔を伏せる。
「認めたわけじゃないからな!」
 その返事に頷くと、ルルタはほんのり赤い顔でぎゅっと目を瞑り、口を開いた。

「早く戻ってこないと、ここで口づけ以上のことをするよ! メイ!」
 予想を大きく外れた発言に、神域の私もケイナーンも呆気に取られる。
 しかも、言葉だけではなく、ルルタの顔が魂が入っていないとはいえ私の顔に覆い被さって……。

「せ、聖堂でなんて不謹慎な事をするんですかー!」

 私は、全ての力を振り絞って、叫んでいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放後に拾った猫が実は竜王で、溺愛プロポーズが止まらない

タマ マコト
ファンタジー
追放された元聖女候補リラは、雨の森で血まみれの白銀の猫を拾い、辺境の村で慎ましく生き始める。 猫と過ごす穏やかな日々の中で、彼女の治癒魔法が“弱いはずなのに妙に強い”という違和感が生まれる。 満月の夜、その猫が蒼い瞳を持つ青年へと変化し、自らを竜王アゼルと名乗る。 彼はリラの魔力が“人間では測れない”ほど竜と相性が良いこと、追放は誤解と嫉妬の産物だったことを告げる。 アゼルの優しさと村の温かさに触れ、リラは初めて「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...