【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

オトカヨル

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第十四章 女神と魔女

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 ふわふわ、ぽかぽか気持ちいい。
 
 私は、良く回っていない頭でそう考える。
 手も足も、何かに包まれているみたいに暖かくて心地よくて。

 「いい?」

 何を聞かれているのかも良くわからないけど、その声は好き。
 だから「うん」と、答える。

 答えると、いっそう全身暖かくなる。日の光の中で昼寝をしている時みたい。

 気持ちいいに包まれる感じ。

「ずっとこうしていたいな」
 私の言葉に、冷たい何かが私の頬の辺りに落ちる。
「そう、だね」
 切れ切れの声が返る。泣いてるのかな。

 私は両手を伸ばして、声の主をぎゅうっと抱く。
 暖かいをくれるあなたが、悲しくないように。泣かなくていい様に。

「ずっとこうしていたいね」
 優しい言葉が雫と一緒に降ってくる。私はきっとその時、嬉しくて笑ったんだと思う。



「メイナ様、メイナ様」

 私を呼ぶ声が聞こえる。混濁した意識から、私は私を引っ張り上げた。
「おはよう、ラウミ」
 薄く目を開けると、そこにはいつもならぴしっと背中を伸ばして立っているはずのラウミが、こちらに身を乗り出して私を呼んでいた。
 頭をぐるりと巡らせて見ると、肩越しにルルタが見えてびくりとする。
「あれ?」
「殿下はそのままで大丈夫です。メイナ様は一度こちらへ」
 なんだか悪い夢と良い夢を見ていた気がすると思いながら、私は身を起こす。……なんだか、体が重いし痛い。

 ラウミに伴われて、私は用意されていた浴槽に手をかけて、気づいた。
「そうか、元通りなんだ……」
 手が黒い靄の様なものに覆われていた。目を落とすと、足も同様だった。
「ああ、だから世話に慣れているラウミが居るの?」
「そうです。引き継ぎが終わるまでは陛下に温情をいただいていますので、もう少しだけお世話させてくださいね」
 ずっとでもいいんだけどな、と私は思うけれど、きっとそういうわけにはいかないんだろう。

 お湯にずるずると沈み込みながら、私は行儀悪く天を仰いだ。魔女ケイナーンは無事に私の中に封じられたんだろう。この真っ暗な体から、外に出ることはもう出来ない。

 目を閉じて自分の中に存在を探すけれど、随分と奥に居るのか、まったく何も感じられない。

「全部終わったの?」
「そのように聞いております。くわしくは、後ほどカルスがこちらに説明に来るかと」
「そう」

 私は崩した姿勢を戻し、ラウミが髪を洗うに任せる。丁寧に髪を漉きながら洗うラウミの指が心地いい。

「女神様、大丈夫だったんでしょうか」
「先ほど神官が解放され、早速に神託があったと聞いています。女神様のお力の回復には時間がかかるものの、大地の魔力の巡りには問題はないと。力が戻ったらまたメイナ様をお呼びするという事でした」
「それなら良かった」
 私はまたちょっとふわふわした頭のままで、女神の無事を喜んだ。
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