【完結】真っ暗聖女と白い結婚を 〜女神様の体を整えてこの結婚から貴方を解放するはずが、なぜか執着されています〜

【番外編】僕を取り戻した日に

2

「もう、終わった事だからそんな顔しないで」
　メイナは、朗らかにそう言うルルタの顔を心配そうにじっと見る。
「ルル、無理してない？」
「大丈夫だよ。それにね」
　そこで言葉を切ってルルタは目を閉じ、ゆっくり続きを口にした。

「彼らは今も労働奴隷として採掘場で頑張ってもらってるから」
　王の血に連なるものに手を出して、無事で済むわけはない。たとえその事を知らなかったとしても。
　しかも金の出所は、辿っていけば亡き王妃。それを横取りしてたわけだから一生外に出られるはずもない。

「贅沢三昧してたあの人達にとっては、死ぬより辛いだろうからね。なんか色々とスッキリしてる」
　それが本心からの言葉だと感じて、やっとメイナの手から力が抜けた。

「恨んで、何かが得られるってこともないし、ね」

　ルルタは、いまだイウリスの母である亡き王妃についても、許してはいない。でも、イウリスを恨んでも憎んでもいない。

『お前は俺の弟だ、こんな所で、こんな扱いを受ける様な事は、決してあってはならない』
　イウリスはあの日、震える声でルルタにそう言ってくれた。

声が震えていたのは怒りだったのか、もしかしたら悲しみだったのかもしれない。
　どちらにせよ、こちらを思ってくれているというのが伝わってきた。
　だから、差し出された手を取る事を迷う事がなかった……。

「あと、陛下も一発殴らせてもらったから、それでいいかなって」
「お、お咎めが無くて良かった……」
「だよねえ」

　青い顔でそう言うメイナを、ルルタはぎゅっと抱きしめる。
「それに、メイに会えたんだから、僕としてはそんなに悪い経験でも無かったって思ってるんだ」
　肩口に顔を埋めてルルタがそう言う。メイナは優しく腕を回し背を撫でた。

「これから先は、もう辛い事が降りかからないよう、私が守るよ」
　力強いメイナの宣言に、ルルタの胸がほんわり暖かくなる。

「ありがとう。僕もメイを守るから」
そう返しルルタが顔を上げる。目が合ってどちらからともなく微笑む。

　小さな頃の拙い約束が叶ったことを、そうして二人ゆっくりと確かめ合った。