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【第一章】はじめのドーナツボール
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「で、あなたはどんな妖なんです? あんまりこの辺りで見かけない顔だけれど」
「あやかし?っていうのはよくわからないけど、私、すずめって名前で……」
首を傾げる青年にすずめも合わせる。
少し傾いたまま向かい合う二人。
「すずめの妖? 夜雀か送り雀でしょうか?」
「えーっと、すずめは私の名前です、稲月すずめ」
そこまで言い終わった途端、すずめはぐいと肩をつかまれた。
青年が顔を覗き込んでくる。
「痛いですって、何するんですか」
抗議の声を上げるすずめの前で青年は体を離すと、真っ青な顔で頭を抱えた。
「ど、どうしよう。あなた人間じゃないですか。どうしてここに……」
「どうしてって、気が付いたらここにいて。それにあなただって人間でしょ? さっきの二人だって……」
「さっきの二人は鬼です。髪型でよくわからなかったかもしれないけど、角だってありましたよ。あの二人がおやつに気を取られてあなたが人間だって気づいてなかったからよかったですけど……」
すずめは青年の言葉が信じられず、いやいや、と笑って返す。
が、青年はあくまで真剣な顔をしているから。
「冗談にしてもちょっとタチが悪いですよ?」
「冗談なんかじゃ」
そこまで言ったところで、青年がびくりと肩を震わせた。
「ちょっとすみません!」
「え!?」
ひょいっと青年に片手で小脇に抱え上げられた。
細身の体からは想像がつかないほどの力で、縁側から家の中へ運ばれていく。
「何するんですか!」
すずめの抗議の声は、唇に当てられた青年の指に遮られる。
「しっ、少しだけ黙ってここにじっとしていてください」
「え? なんで隠れないといけないんですか?」
「いいから、早く!」
青年はぐいぐいとすずめを部屋に押し込む。
そこは厨房のようだった。
あずきの煮える匂いが部屋を包み込んでいる。
仕方なくそこに所在なげに立っていると、遠くから声が聞こえて来た。
「なんだかいい匂いがするじゃないか」
「え、ええ、新作のおやつができましたので」
「ふうん、なんだか人間の匂いがした気がしたんだがねえ」
「そんなことあるわけないじゃないですか」
すずめはそおっと戸の隙間から声の方を覗いてみた。
「っ!」
慌てて両手で自分の口を覆う。
青年が案内していたのは、蛇の顔をした男の姿。
お面ではない、喋れば口が動き、牙や揺れる舌まではっきりと見えた。
「新しいおやつか、それは今食べられるのか?」
「お待ちいただければ」
「うんうん、待つのは得意だ」
そんな会話をしながら、厨房の手前で廊下を曲がり去ってゆく。
すずめは今のうちに逃げるしかないと出口を探しウロつくが、その手が捕らわれる。
「あやかし?っていうのはよくわからないけど、私、すずめって名前で……」
首を傾げる青年にすずめも合わせる。
少し傾いたまま向かい合う二人。
「すずめの妖? 夜雀か送り雀でしょうか?」
「えーっと、すずめは私の名前です、稲月すずめ」
そこまで言い終わった途端、すずめはぐいと肩をつかまれた。
青年が顔を覗き込んでくる。
「痛いですって、何するんですか」
抗議の声を上げるすずめの前で青年は体を離すと、真っ青な顔で頭を抱えた。
「ど、どうしよう。あなた人間じゃないですか。どうしてここに……」
「どうしてって、気が付いたらここにいて。それにあなただって人間でしょ? さっきの二人だって……」
「さっきの二人は鬼です。髪型でよくわからなかったかもしれないけど、角だってありましたよ。あの二人がおやつに気を取られてあなたが人間だって気づいてなかったからよかったですけど……」
すずめは青年の言葉が信じられず、いやいや、と笑って返す。
が、青年はあくまで真剣な顔をしているから。
「冗談にしてもちょっとタチが悪いですよ?」
「冗談なんかじゃ」
そこまで言ったところで、青年がびくりと肩を震わせた。
「ちょっとすみません!」
「え!?」
ひょいっと青年に片手で小脇に抱え上げられた。
細身の体からは想像がつかないほどの力で、縁側から家の中へ運ばれていく。
「何するんですか!」
すずめの抗議の声は、唇に当てられた青年の指に遮られる。
「しっ、少しだけ黙ってここにじっとしていてください」
「え? なんで隠れないといけないんですか?」
「いいから、早く!」
青年はぐいぐいとすずめを部屋に押し込む。
そこは厨房のようだった。
あずきの煮える匂いが部屋を包み込んでいる。
仕方なくそこに所在なげに立っていると、遠くから声が聞こえて来た。
「なんだかいい匂いがするじゃないか」
「え、ええ、新作のおやつができましたので」
「ふうん、なんだか人間の匂いがした気がしたんだがねえ」
「そんなことあるわけないじゃないですか」
すずめはそおっと戸の隙間から声の方を覗いてみた。
「っ!」
慌てて両手で自分の口を覆う。
青年が案内していたのは、蛇の顔をした男の姿。
お面ではない、喋れば口が動き、牙や揺れる舌まではっきりと見えた。
「新しいおやつか、それは今食べられるのか?」
「お待ちいただければ」
「うんうん、待つのは得意だ」
そんな会話をしながら、厨房の手前で廊下を曲がり去ってゆく。
すずめは今のうちに逃げるしかないと出口を探しウロつくが、その手が捕らわれる。
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