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「全部終わったの?」
 ミクがぽつんと問う。
「はい、終わりましたよ。呪いは全部喰べちゃいました」
 ミクは恐る恐ると言った風に私に近づいてくる、私は久しぶりの満腹感に大きく伸びをした。

「あ、これお返ししておきます」
 私はミクにスマートフォンを渡す。
「ありがと」
 受け取り、ミクはそれから改めて私に聞いてくる。
「それで、結局サリってなんなの? 見通す魔女ってだけじゃ誤魔化されないから」
「うーん、そう聞かれると、『呪い喰いのろいぐい』です。としか」
「呪い喰い?」
 ミクは不穏なその名前に身を引きそうになるが、ぐっと堪えて踏みとどまってくれた。
「……ちょっと怖そうな名前だけど、サリは怖くない」
「ありがとうございます」
 その言葉が嬉しい。頬が緩むのを感じながら、私は口を開く。

「私、『呪殺』を家業にしている家で育ちまして」
「じゅさつ?」
 ミクが首を傾げる。
「呪い殺すってことですね」
「そんな事サラッと言う!?」
「え、だって聞かれたので」
 そこで言葉を切り、私は自分の胸の辺りに手を当てる。

「私は万が一呪いが返された時に備えて、呪いを『食べる』役割を持つ『呪い喰い』として、外に出ることを許されず育てられた、まあ囚われの身だったんですが」
「その家から逃げてきたの?」
 私は首を振った。
「『呪殺』用に育てていた『呪い』に家ごとまるっと飲まれまして。結果、私だけが元気に生き残りました」
 皆が『呪い』に食われた後で、それを食い破って外に出た、なんて物騒な話はミクは知らなくていいだろう。
 本当なら助けられたのを、見て見ぬふりをした事も。

「外に出られたのはいいんですが、生きるだけでもお金って必要じゃないですか。なので、何かできることが無いかな~って色々とやってみて一番向いてそうだったので、『見通す魔女』をやってます」
 私はそう言うと、指で作った輪から目をパチパチと瞬かせそう言う。
「呪い食べるのと、その『見通す魔女』っていうの、どう繋がりがあるの?」
 首を傾げるミク。
「ずっと家から出してもらえなかった間、デジタル機器だけは好きなだけ与えられたので、家族が『呪い』を育ててるみたいに、私も私なりの『呪い』をPC上で育ててまして。……感染すると、どんな端末でも裏口から私が入り放題になるっていう『呪い』なんですけどね」
 ミクは、手元のスマートフォンを思わず見つめる。
「安心してください、ちゃんと消してます」
「入れてたんだ……」
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