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不審者

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自室に転移。それから呼び出しのベルを鳴らした。
 ほどなく、バタバタという足音がして、扉の向こうに人影が現れた。その姿に私は言葉を失う。
「ユリア様! 何処にもいないので心配しました……。ジョンさんも戻ってこなくて」

「……………」

「ユリア様?」
 私は目を何度も瞬き、それから恐る恐る問いかける。
「まさかとは思うのだけど、あなた、アレク?」
「? はい、アレクシスです。……俺、どこか変ですか? あ、風邪をひいちゃったみたいで、ちょっと声が変に……」

 私は無言で壁際の姿見の鏡を指差す。彼はその前に立ち、バッと飛び退ると、私を庇うように手を広げた。
「ユリア様、逃げてください! お部屋に不審者がいます!!」
「……アレク、落ち着いて聞いてくれるかしら」
「はい」
「あの不審者、あなたよ」

 整った顔の青年がそこにいた。
 サラサラの金の髪、細身ながら鍛えられている事が分かるしっかりとした体躯。
 私の言葉を聞いた彼は、驚いてアイスブルーの瞳を極限まで見開いた。そのまま瞳が転げ落ちてしまいそうなくらい。

「俺がすぐに大きくなりたいって願ったから、叶えてくださったんですか?」
「違うわ、それに急いで大きくならなくていいって言ったでしょう?」
 やりとりしてみた感じ、中身はアレクに間違いない。なのにその姿は今日、私を助けた青年そのものだった。
「アレク、あなた今日、私を助けてくれた?」
「ユリア様をですか? そうできたらっていつも思ってますけど……」
 似てるなんてものではない、声だって。なのに中身があの時の彼とは、まるっきり違う感じがする。

「嘘はついていないわよね」
「俺がユリア様に嘘をつくなんて事、絶対ないです」
 青年が首を振る。ちょっと切なげな表情が似合うなと思いながら、私は一旦気持ちを切り替えた。
「そう、それならいいわ」
 わからない事は一度置く事にする。

「とりあえず、今日は心配をかけたわね。ジョンも無事よ。朝から迎えに行くから、戻って来たら何があったのか説明するわ」
 捨てられた子犬のような、心もとない顔をして青年が頷く。
「俺、どうしちゃったんでしょう……?」
「あなたの方は何かの魔法の影響かもしれないから、そちらも明日調べましょう」
 表情に負けて、思わず頭を撫でてしまった。

 撫でられて嬉しそうに笑う彼の表情は、確かにいつも見ているアレクのもの。誰かが私を騙そうと仕込んだ事にしてはお粗末だし。今は、彼の中身はアレクだと信じるしかない。
 なにせ、今日は色んな事がありすぎたし、魔法を使いすぎてくたくたなのだ。
 今は、とにかく休みたい。

 その意思を伝えると、アレクはベッドを整えて静かに退室して行った。
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