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浮かぶ悪夢

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「おはようございます、ユリア様!」
 少し低くなったが元気な声と共に、アレクが部屋に顔を出す。
 私はその顔をじっと見た。目を何度瞬いても、アレクはやっぱりおっきいまま。
「今日は朝からジョンさんを迎えに行くんですよね?」
「……そうね」
 記憶の中から引っ張り出して来た青年『ミスミ』の姿と、目の前のアレクを重ねてみる。目の色と髪の色が違うけど、そのままだ。

「アレク、昨日の夜……」
 部屋に来たことを知っているかと聞きたかったけど、ミスミにアレクは何も知らないと釘を刺されたのを思い出す。
 そして、『アレクの家のことを調べてみてください』という、言葉も一緒に。

「昨日の夜、何かありましたか?」
「なんでもないわ、それよりジョンを迎えに行っている間に、朝食の支度をしておいて」
「はい!」
 少年らしいその言動と青年の姿。でも思ったよりも違和感はない。
 身支度の為に甲斐甲斐しく動き始めたアレクを前に私はちょっとだけ安心して、ふっと息を吐いた。意識してはいなかったけど、昨日は色々起こりすぎて気持ちが張り詰めて居たのかもしれない。
 おっきいアレクの姿も、ジョンが戻って来れば今まで通りの光景として受け入れられそうだと、そう思った。



 転移でたどり着いた神殿の入り口には、すでにジョンが身支度をして立っていた。

「無理しないで部屋で待っていればよかったのに」
「少し外の風に当たっていたかったものですから」
 背筋を伸ばし微笑む姿に、神殿での治癒魔法の成果を見て私は心底ホッとする。昨夜も問題ないように見えてはいたけど不安は残っていたから。
「さあ、城に戻りましょう」
 馬車が壊れてしまったので、そのまま転移で戻ろうとジョンに手を差し出す。
「ご面倒をおかけいたします」
 彼は恭しく私の手を取った。


転移の魔法を展開。何度か空間を跳躍して、私達はゆっくりと城の前庭に降り立った。

 城へ入ろうと歩き出して気づく。そういえば、昨日の騒動でミスミが助けに来た時にはジョンは意識を失って居たし、その後のおっきいアレクの事も当然知らないのだった。
 これは、伝えておかないと驚くはず。

「驚かないで聞いてほしいのだけど、昨夜、城に帰ったらアレクが急成長していて」
「なるほど、成長期が来たのでしょう」
 さらりと返され私は首を振る。そんなものではないのだ。
「一気に青年になっていたのよ?」
「アレクシスのように他の種族の血を併せ持つ者には珍しく無いようですよ」

 他の種族の血を併せ持つ?
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