【完結】悪役失格 〜どうにも年下騎士の執着から逃げ切れる気がしない〜

オトカヨル

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魔王出現

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「ユリア様、最近少し調子が悪いように見受けられますが」
「そんな事ないわよ」
 私はジョンの言葉にそう返したが、指摘されている事の原因には気づいていた。

 剣術大会の前日に出てきて以来、ミスミが現れないから。
 おかげで、すっかり寝不足で、調子が悪い日が続いている。

「見回りも滞りなく、魔獣も契約通りの数を仕留めているわ。何も問題はないでしょう」
「ええ、それは……」
 顔色が悪いとか、書類にちょっとしたミスが続いているとか、私にも自覚はあった。でもそれを認めるのは嫌だった。
「気のせいよ」
 そう言い切ると、ジョンはまだ納得がいかないというように目で追ってきたが、私は振り切るように背を向けた。

 そこに、扉が開く大きな音。
「アレク、もっと扉は静かに開け閉めを……」
「大変なんです、ユリア様、ジョンさん!」
 買い出しから戻ったアレクはジョンの指摘をスルーして、抱えた荷物をテーブルに乗せ、一枚の紙をこちらに差し出して来た。

 ジョンがまず受け取り、目を見張る。
「何かあったの?」
 私の問いに、ジョンは新聞の号外にも見えるその紙をこちらに手渡す。
 
「国からの通達ですね。隣国より魔王出現の報せあり、騎士を求む、と」
「そんな……」
 アレクを育てて魔王を倒すまで10年かかるのではなかったんだろうか、まだ2年経ってないくらいなんだけど、魔王出現が早すぎる。

 私は、女神が言った言葉をなるべく正確に思い出す。
『10年主人公を虐めて、最後にちゃんと主人公に倒されたら、元の体に戻してあげますね!』

 確かに、魔王が10年後に出て来ます、とは言っていない。

 私は頭を抱える。ざっと流し読んだ本の概要から行くと、魔王は『氷の城の女主人ユリア』の氷魔法を得た騎士アレクが倒すことになるはず。
 だとすると、もしかしてアレクが倒しに行くまでの間、リオート大陸の人々は魔王に苦しめられる、ということ?

「魔王出現ということであれば、急ぎこの国からも騎士を送らなくては、隣国はあっという間に蹂躙されてしまうことでしょう」
「魔王というのはそんなに恐ろしいの?」
 私の問いに、ジョンは頷いた。
「通常、氷の大地で魔獣と向き合うユリア様にとっては、脅威とは思えないかもしれません。しかし、『魔王』は、『王』の名がついていますが、自然現象に近いと考えられています。前兆なく生まれ、多数の魔獣を連れて大陸を横断する巨大な影、それが『魔王』です」
「そんなもの相手に、騎士を送ったとして対応できるの?」
「それは……」

 ジョンの反応で、答えを察して私はため息をつく。
「隣国とは同盟を結んでいたわね。だからこそ、何かしら手を打ったという形が欲しいということなのかしら」
 苦い顔でジョンが頷いた。それなら、国が求めているのは『生贄』と同じ。

 それなのに。

「俺、行こうと思うんです」
 アレクが笑顔でそう言った。
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