【完結】悪役失格 〜どうにも年下騎士の執着から逃げ切れる気がしない〜

オトカヨル

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時の狭間の(ミスミ視点)

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 今回は、ソフィア姫に操られてあの人の心臓を剣に捧げた。
 ある時は、俺を守ろうと黙って魔王に対峙したあの人が命を落とした。
 またある時は、魔王出現の煽りを受けて一気に増えた魔獣によってあの人が……。

 そして毎回、悲しみのあまり俺自身が『魔王化』して、世界を壊しかける。

「俺に起きた事はわかりました、だからってあの人を取り戻せるとでも?」
「ええ、できるわ」

 俺は、その言葉に必死に声の主を探す。
「落ち着いて、あなたに私達は見えないし触れられない。こちらから何らかの力を与えることもできない、だけど助言はできるわ」
「信じていいのか?」
「他に、あなたにできることがある?」

 どれだけ魔力があったとしても、魂だけになっている自分にできる事は無い。

「貴方は、これからこの闇の中を通り過ぎる『ユリア』の魂に着いて行きなさい。そしてしっかりと彼女の側で見守っていて。『ユリア』の中で。動くべき時が来たら、知らせるから」

 他に手がない今は、その声に従うしかない。
「わかった」

 そう言うと俺は彼女の魂が通り過ぎるのをじいっと待った。
「今よ!」

 声に従い、通り過ぎる光に無理矢理に追い縋る。ぴたりと、離れない様に。一つの魂に見える様に、魔力で自分を包み込んで。




 彼女の中で一緒に異世界を擬似体験し、彼女にだけ『ミスミ』という青年を見せた。
 名前の由来は、あちらの世界で一番最初に姿を見せた、小さな公園の名前から。

 元の世界に戻ってからは、今度はアレクシスの体に移った。
 アレクの意識が眠っている間しか体をコントロールできない中で、時々聞こえる『助言』に沿って動く。

 『氷の騎士物語』の開くページをコントロールし、時にアレクの成長を促してジョンを助けに飛び、ソフィア姫の洗脳魔法に抵抗し、マニュアルの最後のページを差し替えた。

 女神が力を蓄えるために眠っている間に、少しずつ少しずつ世界の流れを変えて。

『このタイミングでアレクが暴走しても、あの子の力は回復が足りず、直近までしか世界を戻せない。そこで力を使い果たせば、下手な介入はしばらくできないわ。その間に今度こそ世界を進めて彼女を取り戻して。あなたの手で』

 言われなくても、やってみせる。彼女を取り戻す最後の一手を打つ。

 ……そうして、は『魔王』としてこの世界にもう一度生まれ落ちた。
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