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第十章 ファンになってほしいんです
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「昨夜は、すまない」
ぎゅっと寄せた眉根の辺りを押さえたルリにそう声をかけられて、私は笑顔を返す。
「いえ、キリカさんに相談もできて、『箱庭温泉名物』の見通しも立ちましたし、問題ないです!」
元気に言い切ったが、どうも、ルリの顔を見るたびに『雛鳥』という彼の発言がチラつく。
確かに、過保護だなあとは思っていた。絶対勘違いだからと自分に言い聞かせていたとはいえ、ほんの少しの期待もなかったかといえば嘘になる。
でも『雛鳥』というルリの言葉が、一縷の望みもない事を突きつけてきて。
キリカには、「優しい良い人だなって思ってます」なんて言ったくせに……。
「もうすぐツツジがギンスイさんを連れてくる、そこに座っていてくれ。コーヒーを淹れよう」
「ありがとうございます」
今考える事じゃないなと私は首を振り、気持ちを切り替えてソファーに収まった。
店の奥にあるいつもの応接室、私はローテーブルに手帳とスマートフォンを乗せて、この後の話をどう伝えたら分かりやすいかと考える。
そこに、ふわりとした柔らかい何かが足元を過ぎた。
「お待たせしたわねえ」
トン、と軽い音を立てて猫又のギンスイが机に飛び乗る。ツツジもその後ろからやってきて、私の斜向かいに座った。
「ツツジちゃんから簡単に話は聞いてるんだけど、何をすればいいのか教えてくれる?」
「はい、お二方にお願いしたいのは、『箱庭温泉』のマスコットとして『ファン』を作っていただく事です」
「『ファン』ねえ……」
ギンスイが二つの尾をゆらゆらと揺らす。
「それは、具体的にはどういう事になるのかしら?」
私は机の上のスマートフォンを手に取り、ギンスイが私でも見ることができるようにしてくれた『妖と神様専用SNS』のアイコンに指先で触れる。
まずは、ギンスイのユーザーページを開いた。
「ギンスイさん自体、すでにファンがついています。じゃあ、そこに『箱庭温泉』が宣伝を上げていけばいいかというと、それは違います。見ている人は、『ギンスイ』さんが見たいので、そんな事をしたらファンが離れてしまうだけです」
「私も、そこの方向性を変えるつもりはないわ」
ギンスイの言葉に私は頷く。
「なので、今回は『箱庭温泉』のアカウントを新しく作ります。アイコンはこんなイメージです」
私は、手帳を開いて、手書きのラフな案を見せる。
ギンスイとツツジがそのページを覗き込んだ。
丸い窓の向こうからギンスイとツツジがこちらを招いているような、そんな絵。
「『箱庭温泉』での日々をお二方が気に入っていて、楽しんでいるということを共有する。私が提案したいのはそれだけです」
ぎゅっと寄せた眉根の辺りを押さえたルリにそう声をかけられて、私は笑顔を返す。
「いえ、キリカさんに相談もできて、『箱庭温泉名物』の見通しも立ちましたし、問題ないです!」
元気に言い切ったが、どうも、ルリの顔を見るたびに『雛鳥』という彼の発言がチラつく。
確かに、過保護だなあとは思っていた。絶対勘違いだからと自分に言い聞かせていたとはいえ、ほんの少しの期待もなかったかといえば嘘になる。
でも『雛鳥』というルリの言葉が、一縷の望みもない事を突きつけてきて。
キリカには、「優しい良い人だなって思ってます」なんて言ったくせに……。
「もうすぐツツジがギンスイさんを連れてくる、そこに座っていてくれ。コーヒーを淹れよう」
「ありがとうございます」
今考える事じゃないなと私は首を振り、気持ちを切り替えてソファーに収まった。
店の奥にあるいつもの応接室、私はローテーブルに手帳とスマートフォンを乗せて、この後の話をどう伝えたら分かりやすいかと考える。
そこに、ふわりとした柔らかい何かが足元を過ぎた。
「お待たせしたわねえ」
トン、と軽い音を立てて猫又のギンスイが机に飛び乗る。ツツジもその後ろからやってきて、私の斜向かいに座った。
「ツツジちゃんから簡単に話は聞いてるんだけど、何をすればいいのか教えてくれる?」
「はい、お二方にお願いしたいのは、『箱庭温泉』のマスコットとして『ファン』を作っていただく事です」
「『ファン』ねえ……」
ギンスイが二つの尾をゆらゆらと揺らす。
「それは、具体的にはどういう事になるのかしら?」
私は机の上のスマートフォンを手に取り、ギンスイが私でも見ることができるようにしてくれた『妖と神様専用SNS』のアイコンに指先で触れる。
まずは、ギンスイのユーザーページを開いた。
「ギンスイさん自体、すでにファンがついています。じゃあ、そこに『箱庭温泉』が宣伝を上げていけばいいかというと、それは違います。見ている人は、『ギンスイ』さんが見たいので、そんな事をしたらファンが離れてしまうだけです」
「私も、そこの方向性を変えるつもりはないわ」
ギンスイの言葉に私は頷く。
「なので、今回は『箱庭温泉』のアカウントを新しく作ります。アイコンはこんなイメージです」
私は、手帳を開いて、手書きのラフな案を見せる。
ギンスイとツツジがそのページを覗き込んだ。
丸い窓の向こうからギンスイとツツジがこちらを招いているような、そんな絵。
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