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五話
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宿へ向かう道筋、芽衣はエルネストに支えられながら、生まれて初めて外を歩いた。最初、エルネストは抱き上げようとした。そっちのほうが早く着くし、芽衣に負担がかからないと判断したからだ。だが、芽衣に断られた。芽衣が言うには外を見たことがないから、見てみたいということだった。
(軟禁されていた? 彼女の能力は戦闘用のものではないのか)
そういうことであればと、エルネストは彼女の要望を聞き、ゆっくりと歩きながら、芽衣と共に風景を見ながら歩いていた。
草を踏みしめる音、木に触れても感触は戻っていなかったが触れたという初めての体験に芽衣の心は踊る。
「エルネスト、あれ、綺麗」
芽衣はもうほとんど声がちゃんと出るようになっていた。声帯が安定して、ころころとした鈴の音ような声で喋る。前世より透き通るような声になっているが、芽衣は肉体が変わったのだからありえると考えていて、あまり驚かなかった。
「ああ、アイリスか。ここらへんに咲く花らしい」
エルネストはちゃんと歩けていたら芽衣はあっちこっち走っていってしまうだろうなと想像して苦笑する。
「すごい大きな木。登ったらいい眺めみれそう」
「もう、ずっと昔から立っているそうだよ」
「そうなんだ。すごい長生きなんだね」
羨望の混じった目で芽衣は木を見ていた。そこらへんにあるただの木をまるで、初めて訪れた地に感動する旅行者のようだ。まだ、出会ってあまり経っていないのに、彼女と一緒にいると今まで、そこにただあるだけだった風景が初めて色をづいたように見えた。
時間はかかったが、エルネストたちはノーランド王国の王都の入り口にたどり着いた。東西南北に門があり、どの門にも兵士たちが交代で番をしている。西門から入った地区は中層の市民の住居が多い。
警備していた兵士たちがエルネストを見てから、芽衣のほうを見て目を見張る。そっとエルネストはそれを遮るように芽衣の隣に立った。
「この子は保護した精霊だ。あまり不躾な視線はよして欲しい」
「はっ、申し訳ございません!」
兵士は慌てて頭を下げて、エルネストたちを通した。芽衣は不思議そうにエルネストと兵士を見る。
「エルネスト?」
「ん?なんだい?」
「エルネストは有名人なの?」
「教団の騎士だから」
「そうなんだ。頑張って、お仕事してるんだね」
芽衣の無邪気な答えにエルネストは視線をそらす。街で見かける子供が親を誇る視線に似ていたからだ。人からも向けられたことがあるが、その言葉は心に響くことがなかった。けれども、欲しかったはずの精霊からの賞賛は息苦しく苦しく感じた。
(この子と契約できたとして、本当に自分は彼女にふさわしいのだろうか)
エルネストは今まで考えたこともないことだった。得ることばかり考えて、その後はどうにかなると思っていた。
ぽつぽつと明かりが灯る家の間を歩きながら、エルネストは新しく浮いてきた疑問に頭を悩ませることになる。歯切れの悪くなった相槌に気づいた芽衣は、エルネストが悩む姿を見て、悲しそうな顔をした。
(ねえ、エルネスト。気づいてる? この街についたときから、ずっと苦しそうだよ。ほんの少しの変化だから気づかない人も多いけど、やっぱり私が負担なのかな)
自分のことで悩むエルネストは芽衣の表情に気づかない。二人のそんな食い違いがあとで、とんでもない悲劇の引き金になるとは思いもしなかった。
(軟禁されていた? 彼女の能力は戦闘用のものではないのか)
そういうことであればと、エルネストは彼女の要望を聞き、ゆっくりと歩きながら、芽衣と共に風景を見ながら歩いていた。
草を踏みしめる音、木に触れても感触は戻っていなかったが触れたという初めての体験に芽衣の心は踊る。
「エルネスト、あれ、綺麗」
芽衣はもうほとんど声がちゃんと出るようになっていた。声帯が安定して、ころころとした鈴の音ような声で喋る。前世より透き通るような声になっているが、芽衣は肉体が変わったのだからありえると考えていて、あまり驚かなかった。
「ああ、アイリスか。ここらへんに咲く花らしい」
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「そうなんだ。すごい長生きなんだね」
羨望の混じった目で芽衣は木を見ていた。そこらへんにあるただの木をまるで、初めて訪れた地に感動する旅行者のようだ。まだ、出会ってあまり経っていないのに、彼女と一緒にいると今まで、そこにただあるだけだった風景が初めて色をづいたように見えた。
時間はかかったが、エルネストたちはノーランド王国の王都の入り口にたどり着いた。東西南北に門があり、どの門にも兵士たちが交代で番をしている。西門から入った地区は中層の市民の住居が多い。
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「はっ、申し訳ございません!」
兵士は慌てて頭を下げて、エルネストたちを通した。芽衣は不思議そうにエルネストと兵士を見る。
「エルネスト?」
「ん?なんだい?」
「エルネストは有名人なの?」
「教団の騎士だから」
「そうなんだ。頑張って、お仕事してるんだね」
芽衣の無邪気な答えにエルネストは視線をそらす。街で見かける子供が親を誇る視線に似ていたからだ。人からも向けられたことがあるが、その言葉は心に響くことがなかった。けれども、欲しかったはずの精霊からの賞賛は息苦しく苦しく感じた。
(この子と契約できたとして、本当に自分は彼女にふさわしいのだろうか)
エルネストは今まで考えたこともないことだった。得ることばかり考えて、その後はどうにかなると思っていた。
ぽつぽつと明かりが灯る家の間を歩きながら、エルネストは新しく浮いてきた疑問に頭を悩ませることになる。歯切れの悪くなった相槌に気づいた芽衣は、エルネストが悩む姿を見て、悲しそうな顔をした。
(ねえ、エルネスト。気づいてる? この街についたときから、ずっと苦しそうだよ。ほんの少しの変化だから気づかない人も多いけど、やっぱり私が負担なのかな)
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