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4-1. 公爵令嬢と皇后陛下
「――それで、幼い妹が”このお花はおいしいんじゃない?”なんて言うものですから、私と兄は笑いを堪えられなくて。この花を見るといつもそのことを思い出してしまいますの」
「ふふっ、そうなのですね」
「ええ。花束を贈ってくださった方もまさか砂糖菓子と間違えられるとは思っていなかったでしょうね、きっと」
イザベラとの会話が和やかに弾んでいく。ほのぼの、穏やか。天気の良さも相まってそんな表現が似合うほどのまったり感だ。
皇城の庭はどこも美しいが、場所によって雰囲気がガラリと変わる。僕が暮らす皇子宮の周りは樹々が多く、凛とした印象なのだが皇后宮へ近づくにつれ花々が増え、華やかな印象へと変わっていく。今いるこの辺りは背の低いふわりとした色合いの花が多く、その中でもひときわささやかに咲く小さな白い花を見て、イザベラが幼き日の思い出を語ってくれたのだ。
「そんな可愛らしい妹も今ではすっかり大人になって昨年隣国へ嫁いでいきましたの。そのせいか、最近は不思議と昔のことを思い出すことが多くて。感傷的というのはこういう心持ちなのかもしれません」
どこか遠くを見るような顔つきでイザベラはそう語った。離れて暮らす妹へ思いを馳せるような、あるいは幼い頃の微笑ましい思い出を懐かしむような横顔だ。
イザベラの妹、つまりメドウブリュー公爵家の次女が隣国・シリル王国へ嫁いだことは公然の事実とされている。なにせ彼女の妹はシリルの現王妃だ。
婚約が発表された当初、大きな話題になったという。というのもアスティリオン帝国にとってシリルは単なる友好国ではない。シリルは帝国の現皇后、つまりイリヤの母であるエレノアの祖国なのだ。
かつて両国が戦火に巻き込まれた時代、シリルの王女であったエレノアは帝国に嫁ぐこととなった。言うまでもなく、同盟を目的とした政略結婚だ。そして戦が終わると同時に、両国の良好な関係を示すかのようにイリヤ皇子が誕生したのだという。
(だから実はイリヤとイザベラは親戚なんだよなぁ。血のつながりはないけど。あ、でもメドウブリュー公爵家って確か何代か前に皇族の姫が嫁いでるはずだし、そういう意味だと多少は同じ血も流れてるのかな?)
とはいえ、皇族や王族は国内の高位貴族と結ばれることがほとんどなので親戚関係を辿ったところでさほど意味はない。国の上層部、みんな親戚!みたいなことがどこの国でもザラにある訳だ。政治的には理に適った仕組みだが、倫理的にはどうなんだろうと若干思わなくもない。
「ふふっ、そうなのですね」
「ええ。花束を贈ってくださった方もまさか砂糖菓子と間違えられるとは思っていなかったでしょうね、きっと」
イザベラとの会話が和やかに弾んでいく。ほのぼの、穏やか。天気の良さも相まってそんな表現が似合うほどのまったり感だ。
皇城の庭はどこも美しいが、場所によって雰囲気がガラリと変わる。僕が暮らす皇子宮の周りは樹々が多く、凛とした印象なのだが皇后宮へ近づくにつれ花々が増え、華やかな印象へと変わっていく。今いるこの辺りは背の低いふわりとした色合いの花が多く、その中でもひときわささやかに咲く小さな白い花を見て、イザベラが幼き日の思い出を語ってくれたのだ。
「そんな可愛らしい妹も今ではすっかり大人になって昨年隣国へ嫁いでいきましたの。そのせいか、最近は不思議と昔のことを思い出すことが多くて。感傷的というのはこういう心持ちなのかもしれません」
どこか遠くを見るような顔つきでイザベラはそう語った。離れて暮らす妹へ思いを馳せるような、あるいは幼い頃の微笑ましい思い出を懐かしむような横顔だ。
イザベラの妹、つまりメドウブリュー公爵家の次女が隣国・シリル王国へ嫁いだことは公然の事実とされている。なにせ彼女の妹はシリルの現王妃だ。
婚約が発表された当初、大きな話題になったという。というのもアスティリオン帝国にとってシリルは単なる友好国ではない。シリルは帝国の現皇后、つまりイリヤの母であるエレノアの祖国なのだ。
かつて両国が戦火に巻き込まれた時代、シリルの王女であったエレノアは帝国に嫁ぐこととなった。言うまでもなく、同盟を目的とした政略結婚だ。そして戦が終わると同時に、両国の良好な関係を示すかのようにイリヤ皇子が誕生したのだという。
(だから実はイリヤとイザベラは親戚なんだよなぁ。血のつながりはないけど。あ、でもメドウブリュー公爵家って確か何代か前に皇族の姫が嫁いでるはずだし、そういう意味だと多少は同じ血も流れてるのかな?)
とはいえ、皇族や王族は国内の高位貴族と結ばれることがほとんどなので親戚関係を辿ったところでさほど意味はない。国の上層部、みんな親戚!みたいなことがどこの国でもザラにある訳だ。政治的には理に適った仕組みだが、倫理的にはどうなんだろうと若干思わなくもない。
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