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第十二話 新たな出発

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時刻は朝の七時半をむかえ海斗は自然と目が覚め気持ちの良い朝を迎える

 今日からエナとクシアと共に妖精族の長である大妖精に会いに行くため各自で準備をしていた

 しかし準備といってもリリィからもらったお金以外は特に持ち物などは持っておらず大抵のものは海斗の影に収納することができるので海斗とクシアの二人は何も持っていないのに対してエナはかなり大きめのリュックを背負っていた

 エナ「二人とも荷物はどうしたの?」

 長旅になるかもしれないのに手ぶらな二人にエナは驚いているので海斗が自分の能力にいて話す

 エナ「便利な能力持ってたね、さすが勇者 ということで」

 便利な能力に関心したエナは持っている荷物を全て海斗に預ける

 フラガ「これから遠く行くのになんかしっくり来ないな」

 見送りに来たフラガは荷物が無く最低限の装備だけをしている三人を見て苦笑いをした後に思い出したかのように海斗に話しかける

 フラガ「そうだった……海斗お前にこの手紙をルーゼってやつに渡してほしい」

 白色の手紙を受け取った海斗はフラガに理由を聞くとこの手紙の持ち主は古い友人で今から海斗達が向かう妖精の森の近くにあるセルク村という場所に住んでいるとのことだった

  エナとアスフェアはフラガに友人がいる事に驚いておりどんな人なのかを聞くが「会えばわかる」と詳しくは教えなかった

 フラガ「まあともかく……無理はするなよお前達」

 ミリア「どこかでまた会えるよ……きっと」

 ニコス「エナ姉ちゃんも自分のやりたい事を叶えてねー」

 それぞれ別れの挨拶を済ませると三人は海斗達を見送っていた、その様子はどこか悲しそうにしていたがまたどこかで会えると信じフラガ達もやるべき事をやるために店へと戻る


 お世話になった店から海斗達は朝から賑わっている街を歩きとある場所を目指していた

 海斗「ギルドって所に行って妖精族の依頼を受けて妖精の森に行くんだったな」

 クシアに背負われた海斗は予定を確認していた、最初は女性におんぶされるのは恥ずかしがっていたがここ一週間で海斗は慣れてしまっていた

 海斗「そんなことよりも……何でお前まで」

 予定を確認した海斗は機嫌悪そうに目を向けるとそこにはアスフェアがいる

 アスフェア「私がいないとあんた達が迷いの森で迷子になるからに決まってるでしょ」

 アスフェアは威張って海斗を上から見下ろしている、アスフェアと海斗は大したことない事での衝突が多くお互いにいがみ合っておりクラスメイトの亜紀と似たような関係性になっていた

 エナ「人前ではあまり騒がないでよ……」
 クシア「ふふっ 私は嫌いじゃないですよ」

 喧嘩する一人と一匹を二人は眺め楽しそうにしながらギルドまでの道を歩き続けていると目的地まで辿り着いてしまう

 エナ「……とても久しぶりに見た気がするな」

 目の前にはフラガの酒場よりも何倍もの大きさの建物が建っておりその周りには鎧を着た男や杖を持ち歩いている女性など色んな人達が集まっており賑わっている

 エナ「まず最初はクシアを冒険者として登録しにいってからかな」

 クシア「そうですね!!そうしないと依頼を受けられませんからね」

 まず始めに冒険者登録をするためにエナは海斗をその場に降ろしクシアと二人でギルドの中へと入ろうとする

 海斗「あれ……俺はやらなくていいの?」
 エナ「海斗は多分登録できないと思う……というか絶対無理よ」
 アスフェア「大怪我してる奴に依頼なんて出すわけないじゃない 少しは考えたら?」

 考えれば分かる事だったがアスフェアの正論にただ頷くしかなく、エナはアスフェアを落ち着かせると二人に留守番を頼みクシアを連れてギルドの中へと入っていき留守番になった二人の間に沈黙が流れていた 

 海斗「…………おいアスフェア」

 しばらくの沈黙の後に海斗が話しかけると機嫌が悪そうな声でアスフェアはそっけない返事をする

 海斗「…………暇だな」
 アスフェア「そうね」

 海斗「…………俺のこと嫌いなのか?前よりも当たりが強くなった感じがするんだが」
 アスフェア「……嫌いよ……あんたが来なかったらエナが危険なことをしなくて済んだかもしれないし本当に迷惑よ」

 ハッキリ言うとこの旅にエナが着いてくる理由が全く無くアスフェアは彼女の幸せを願っているのかこの旅に否定的な様子を見せる

 海斗「そこまでハッキリ言われるとな……」

 勝手に着いて来ただけだろ?と言えばそこまでなのだがアスフェアの正論に海斗はすこし落ち込んでいると

 アスフェア「もー本当に馬鹿ねあんた……迷惑なんて思うわけないじゃない、すこーし本音っぽく言うとすぐに 真にうけるんだから」
 この会話を境に二人は人目を気にせず醜い言い争いを繰り広げてしまう

 エナとクシアの二人も戻って来るがいつも通りな二人に頭を抱えつつも二人の中を遮るように声をかける

 エナ「もーう……クシアの登録がさっき終わって次は依頼が来てるか見にいくからもう一回アスフェアとここに居て 私達2人で行ってくるから」


 海斗「また俺だけハブるのかよ」


 エナ「海斗は手続きとかいろいろ分かるの?」


 海斗「俺は留守番しときます」


 エナ「よろしい」


 再びエナとクシアは依頼があるのかを確認しにギルドへと入っていき先ほどと同じように二人は取り残されまた沈黙が続いてしまいしばらくした後に海斗は疑問に思った事を質問する

 カイト「おいアスフェア」

アスフェア「何よ」

カイト「エナってさ 戦えるのか? 少し前襲われそうになったのを見て本当に大丈夫なのか不安なんだよ」

 いくらシルバーランクの冒険者だったとは言っても海斗はしっくりこないでいた

 アスフェア「魔法がメインになるけど戦えるほうだと思うわよ 」

 カイト「へぇーそうなのか 戦ってるところ見たのか?」

 アスフェア「そーね1回しか見たことないんだけど、過去に私を助けてくれたのよ その時は魔法で盗賊をやっつけてくれたの」

 海斗「そうなのか……だからお前はエナに付きっきりなのか」

 エナの意外な過去を知り衝撃を受けると同時にアスフェアとエナは深い絆で結ばれていると確認できた海斗はもう疑うような真似は馬鹿馬鹿しくなっていた

 海斗「アスフェアが一回盗賊に襲われたことがあるのか?」

 アスフェア「まーね 森を抜けたところでバッタリ遭遇して そこから...」

カイト「辛いなら言わなくていいんだぞ」

 気になったことを聞くとアスフェアは辛そうにして過去の話をし始めて海斗は同情するように聞いている

アスフェア「いや 私は本当に運が良かったのよ本来なら高値で売られて金持ちのペットになっているところだったのに」

カイト「酷い話だな  」

アスフェア「ありがとう でもよくある話よ だから私は助けてくれたエナに少しでも恩返しがしたいの 別にあんたを助けるためじゃないわ エナがあんたを助けるっていうから間接的に助けてるだけよ そこは勘違いしないでよね」

 思ったよりも辛い過去に海斗は同情して心配していたのだが最終的には嫌味を言われるのでまたヒートアップして言い争いをしてしまう
 

カイト「はいはい 分かったよ」

アスフェア「反応がムカつくわね 留守番野郎の癖に」

カイト「ああっ!? お前も一緒だろうがよ」

アスフェア「私はあんたが寂しくないようにするための見張りよ エナの優しさに感謝することね」

 元の世界でやっていた亜紀とのやり取りに似ているからか海斗は少し懐かしさを感じており少し楽しそうにしている

 エナ「もう……またやってる」
 クシア「元気でいいじゃないですか」

 相変わらずの二人にエナは呆れているようだが何故か笑顔を浮かべクシアはお淑やかに笑っている

 またそれらの様子を不思議そうに見つめる男女がいてエナはその男女を連れて喧嘩をする二人の元へと向かっていく
 
 
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