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第五十六話 競技祭4 まさかの解決策

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 サリーの無意識に放ってしまった魔法が爆発しグランドの中心から水蒸気が上がっている

 突然の事に会場からは不安な声が次々と上がっている

 カンナ「あいつ……負けた腹いせにリナを攻撃しやがったなクソったれ」

 リナが攻撃を受けてしまった為カンナは飛び降りリナの名前を叫びながら水蒸気で見えないグランドの中心に向かって走っていく

 シドウ「あのアンポンタン 考え無しに飛び出しやがって いいか?お前達はここにいろ 人数が多くなるとややこしくなるから」

 カンナの後に続いてカリータやフレイも飛び出そうとするがシドウが引き止めた事によって引き下がる

 文句を言いつつシドウも観客席から飛び降りてカンナの後を追い爆発の方へと向かうと人影が見えてきたので「無事か!?リナー」と叫びながら駆け寄っていくとカンナが立ち止まっているのが見える

 カンナ「パック……お前」

 蒸気が消えて視界が良くなるとリナが横向きに倒れているが無傷でありその前にはパックが防御魔法を展開してリナを庇っていた

 パック「おいお前 いくら勝負に負けたからってそれは駄目だろ?」
 
 サリー「いや……その……私そんなつもりじゃ」

 自分でも理解の追いつかない行動にサリー自身も戸惑っているがリナを傷つけられそうになったパックは冷酷な目でサリーを睨みつけている

 パック「言い訳せずに答えろ!!さもなければお前を」

 カンナ「馬鹿パックやめろ!!それじゃお前もこいつと同じ」

 パックはサリーと同じ魔法で攻撃しようとするが直前で止め笑顔でカンナを見つめる

 パック「冗談だって そんな事俺にも分かるよ」
 
 カンナ「おお……そうか(でも目が笑ってないから相当怒ってるな)」

 シドウ「問題を増やそうとするな それはそうとしてサリーちゃん いくら悔しくてもやっちゃ行けない事ってあるだろ?そんなんじゃ先生のレージュちゃんが泣くぞ」
 
 サリー「だって……」
 

 やれやれと言った感じでシドウも後から来てサリーに優しく声をかけるが混乱している為答えが帰ってこない

 レージュ「だからちゃん付けは辞めてって言ったでしょ!!シドウ」

 サリー「せ……先生」

 シドウ「ほら あんたのボスのお出ましだぞ」

 レージュ「あんたって人は(また後ででいいか)……それとサリー あなたは何をしたか分かっているの?」

 適当な事をいうシドウを受け流しサリーに問い詰めるが本人は何も言わずに黙っている

 レージュ「私の講義を受けておきながらこんな事に魔法を使うとは 私が常に言ってることをあなたは忘れてしまったのですか?」

 サリー「…………」

 リナ「大事なのは魔法を扱う知識ではなくそれを扱う人の心 ですね」

 沈黙を続けるサリーの代わりにリナが答える この言葉はレージュが常にゼミの生徒達に教えている事である

 レージュ「あなた 私の生徒ではないのによく知ってましたね」

 リナ「はい……一応レージュ先生のところ志望してたんですけど 色々あって」

 レージュ「そう(知ってるわよ 何でシドウなんかのところに行っちゃったのよーー)」

 シドウ「なんか悔しがってないか?」

 カンナ「うーん 何かそんな感じします」

 勘の良い二人はレージュの一言から色々感じとるが深くは突っ込まない事に決める

 レージュ「(勘だけはいい奴ら)それでさっきから黙ってないで何か言ったらどうなの?」

 サリー「……悔しくて Eクラスの奴に負けたのを認めたくなくて」

 レージュ「そう……悔しい気持ちは否定しないけど だからと言って教えを裏切っていい理由にはならないわ」

 パック「確かに先生の言う通りだな 俺が言うのもなんだけどあんたはそうやって他人を見下したりしてるから負けてしまったんじゃないのか?」

 シドウ(似たような事をやってた奴からの言葉は説得力があるな)

 サリー「だから何よ 孤高のパックの癖に」

 パック「……そうだな 俺はシドウ先生のゼミに入るまで一人ぼっちだったがそんな俺でも受け入れてくれる人がいて変われたんだよ」

 サリー「だから何よ 少し群れるようになって対して変わらない癖に」

 パック「だから言いたいのは他人を見下してるあんたと俺は同じって事だよ」

 サリーとパックの言い争いが始まってしまうがシドウがすぐに止めに入る

 シドウ「落ち着け 取り敢えずリナに大きな怪我は無かったがこれは学園の生徒としてよろしくない行いだな」

 サリー「…………」

 シドウ「もしかしたらこの学校を退学になるかもしれないぞ」

 カンナ「退学に!?」

 リナ「待ってくださいシドウ先生 いくら何でもそれは……」

 レージュ「……学園の中だけならまだしも今はいろんな人に見られてる状態でこの騒ぎだからそれが妥当かもしれないわね」

 こんな騒ぎを起こしたとはいえ教え子である生徒なのでレージュは感情を押し殺してサリーに伝えている

 サリー「……先生 私はどうしたら」

 レージュ「……一つ言えることは私にはどうにもできない 決めるのは学長よ」

 その時シドウが腕につけている連絡用の魔法道具が光り出したので返事をする 相手は学長のようでシドウら色々と話を聞いている

 シドウ「……はい 分かりました」

 レージュ「それで……学長は何て言ってたの?」

 シドウ「……その子を許すつもりなら今の騒ぎを観客に納得できるように説明してみせろ だってさ」

 レージュ「……そう どうしたら……」

 カンナ「シドウ先生 これならどうですか?」

 パック以外の人間があれこれ考えている中カンナが真っ先に作戦を思いつきシドウに耳打ちをする

 それを聞いたシドウは笑った後に「良い作戦だ!!」と言いそれを実行することに決めたのだ

 リナ「カンナ 一体どんな作戦を?」

 カンナ「まー見てた方がいいと思う それとパックは少しスッキリするかも……しれない」

 これをパックは疑問を浮かべるがシドウは全員に黙っているように指示を出してスピーカーを手に取り騒ついている会場に向かって声をあげる

 シドウ「えー この度は観客の皆さんに不安を与える事態になってしまい申し訳ありませんでした!! 決してこの爆発が生徒が意図的に攻撃して起きたものではないと理解していただきたいのです」

 観客「本当かー?」 「その女子生徒が悔しそうに見つめてたよな?」

 観客からは否定的な声が上がるがシドウは続けて

 シドウ「確かにそう見えた方もおられるかもしれません……この爆発 実は……」

 言うことを知っているカンナとシドウは笑いそうになっていおり全員の謎が深まるばかりであるが次のシドウの一言で会場は笑いに包まれることとなる

 シドウ「実はこの爆殺はこの生徒がしたオナラなんですよ」

 シドウはサリーを指さして観客にそう説明する

 サリーは火傷しそうなくらいに顔を赤くしてシドウに文句を言おうとするが同時に観客の爆笑が起きたのでかき消されてしまう

 リナ「笑いは起きましたけど……サリーさんが……」

 まさかの嘘に観客は騙されており爆笑の嵐の中リナはサリーのことを気遣っている

 パック(リナは優しいな 俺なんて気分がスッキリしているのに)

 レージュ「……即興劇にしてはまずまずだとは思うけど サリーの今後が心配になるわね」

 シドウ「(生徒思いな先生だな)これで退学にならずに済むから安上がりだろ?しっかりと反省するんだな」

 サリー「はい……」

 シドウ「……そんなに落ち込むな 実はこのスピーカーで発言した言葉や出来事は一日経つと忘れるようになっているからお前が変なあだ名で呼ばれる事はないから心配するな」

 サリー「そっ そうなんですか!?……良かったです」

 シドウ「普段見下されたり悪口を言われたりする気持ちを少しは味わってみるんだな そして深く反省するんだ」

 サリー「分かりました……」

 最後にシドウが観客に向かって謝罪をし全員が観客席に戻ることができたので丸く収まった方なのかもしれないがサリーはその日一日中色々と言われる羽目になってしまう

 そして何事もなかったかのようにして競技は再開しこの後に出場する種目がないカンナは精一杯クラスメイトを応援したのであった

 その後の競技にエナやシア クラスメイトの勇者達も全力で挑んでおり競技祭は観客とともに白熱した試合を繰り広げ全クラス僅差レベルの得点差となり競技祭の1日目が終了したのであった。
 
 
 

 
 
 
 

 
 

 

 
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