竜の末裔と生贄の花嫁

砂月美乃

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27・竜のしるし 後 ☆

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 そのまま重なり合うように倒れると、ヴィルフリートは頭の両脇に肘をついて身体を支え、また唇を寄せる。
 初めての晩とは、ヴィルフリートへの気持ちが違う。それでもやはり急だし、心の準備が出来ていない。耳の奥で胸の音が響き渡り、アメリアはシュミーズの前でぎゅっと両手を握り合わせた。

「アメリア、やはり怖いか?」

 そういうヴィルフリートの声も、いくらか震えているようだ。

「いいえ、ヴィルフリート様」
「だが……」

 ―――ああ、このままではヴィルフリート様は、また私のためにご自分を抑えてしまう。

 どれほど不安でも恥ずかしくても、言葉にしなくてはきっとこの人には伝わらない。アメリアは首を振り、懸命に言葉を紡いだ。

「こ、怖いのは……初めてのことだから、です。ヴィルフリート様が怖いのでは、ありません。だから……」

 そこまで言って、アメリアは頬を真っ赤にして視線をそらした。どうしても、それ以上は言えない。

 さすがのヴィルフリートも、その意味を取り違えることはなかった。きつく握りしめ、それでも震えるアメリアの手をそっと解き、自分の両手と絡め合わせる。
 その指先にそっと口付けて、ヴィルフリートは再び身を屈めた。


「ん……、あ……っ!」

 アメリアの顔じゅうに何度も何度も口付けた唇は、いつしか首筋を辿って胸元へ降りてきていた。白い喉に、鎖骨の窪みに、そして柔らかな胸のふくらみに。触れられる度にアメリアは身体を震わせ、繋ぎ合わせたままの手にきゅっと力を入れてしまう。
 そしていつの間にか小さく声が洩れていることに、まだ自分では気がついていなかった。

 そんな「つがい」の変化を、ヴィルフリートは敏感に感じ取っていた。布の下から淡く透けていた乳房の先が、次第にツンと立ち上がり、シュミーズを押し上げていることも。
 初めての晩に一度だけ目にしたアメリアの裸身が頭に甦り、ヴィルフリートの腰は早くも疼いた。そのまま本能に従って、愛らしい尖りにも唇を寄せる。

「ああっ!」

 アメリアは全身をびくりと震わせた。布の下でそれがより一層固く尖り、シュミーズから零れるふくらみが紅く染まる。ヴィルフリートはそっとアメリアの手を放し、シュミーズの前を押し広げた。

「ああ、ヴィルフリート様!」

 アメリアは両手で顔を覆った。零れ出たふくらみは、先端を桜色に染めて彼を魅了する。いつかは触れることなく終わったそこに、ヴィルフリートは今度こそ手を伸ばした。

「はあ……ん」
「ああ、アメリア、なんて……」

 ヴィルフリートは夢中になった。その柔らかさ、滑らかな肌。そっとふくらみを撫で、先端を指で転がす。その度にアメリアの洩らす声と吐息、ひくりと震える身体が愛おしい。たまらず赤い実を口に含んだ。

「やぁ……っ!」

 今ならもう分かる。彼のつがい、アメリアは自分を受け入れてくれる。そして、肌を合わせることは初めてながら、彼は何故か知っていた。早くも疼き始めたこの己の昂りを、どうしたらいいかを。
 だがもちろん、書物で得た知識がそれを制した。やみくもに突き進んではいけない。なるべくアメリアが辛くないようにしなくては……。
 これこそが竜の本能なのかもしれないが、ヴィルフリートにはアメリアの反応が我がことのように感じ取れた。自分のひと触れにアメリアの身体に走る震えや、次第に熱くなる身体、弾んでくる呼吸。どこをどう触れたらアメリアが喜ぶのか、分かるような気さえした。

「や、ヴィルフリートさま……」

 頬を紅潮させ、珊瑚色の唇を半開きにして、アメリアは譫言のように呟いた。ヴィルフリートが触れるところ全てが、今まで知らなかった感覚をもたらした。今なら町の娘たちの言っていたことが、少し理解できる気がする。
 ヴィルフリートの手がシュミーズを脱がせ、ドロワーズの紐に手をかけた。

「あ……っ。待って、ヴィルフリートさま……!」

 思わず伸ばした手は、ヴィルフリートに掴まれた。

「すまない、アメリア。もう待てない」
「ああ……」

 するりと紐が引かれ、緩んだ腰に手が入り込む。アメリアはきつく目を閉じた。





 雨が止む気配を見せないまま、外は次第に暮れてきた。二階から下りてきたレオノーラに、料理番が尋ねる。

「レオノーラさん、そろそろお食事をご用意してもいいですかねえ?」
「ああ、ええと……お休みのようなので、後で軽く食べられそうなものを作っておいてくれます?」
「あらまあ、ヴィルフリート様が。珍しいこともあるもんですねえ」

 首を振り振り厨房へ戻って行く料理番を見送ってから、レオノーラはもう一度階段の上を振り返った。
 びしょ濡れだった二人が大丈夫だったか心配になり、レオノーラはそっと様子をうかがいに行った。そして雨音にかすかに混じる、アメリアの細い声を聞いてしまったのだった。

 ―――今日はもう、下りていらっしゃらないかもしれない。良かった、外で何があったのか分からないけれど、お二人はひとつ越えられたのかしら……。

 レオノーラはほうっと息を吐き、ホールから出て行った。

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