魔導師ミアの憂鬱

砂月美乃

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13・魔導師の試し 上

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 私の魔力が顕現して、1年になる。私は20歳になっていた。


 私はまだ、ルカ様の館に暮らして、ルカ様の指導を受けていた。魔力は少し前に伸びるのを止め、8830が私の最大値ということになった。
 見た目の変化も身長の伸びも止まり(ちなみに胸はもうひとサイズ大きくなった)、私はいつの間にか「エメラルドグリーンの髪と瞳の、4属性持ち」として知られてきている、らしい。

 らしい、というのは、私は自分ではこの村から出たことがないからで、村の人が聞いてくる、外の噂で知ったのだ。
 まあ、今この国に4属性持ちは私しかいないそうなので、噂になるのは仕方のないことだ。ここに暮らしている分には別に何もないので、私は気にしないことにしていた。


 この一年の間に、エリンもリタも巣立っていった。エリンとは抱き合って泣いて別れを惜しんだ。エリンは私に次いで顕現が遅かったが、焦らず待っていてくれた隣村の婚約者のもとへ嫁ぐのだ。

 リタは、型どおりの挨拶をした後、何やらもじもじしていたが……最後に一言「ごめんなさいっ!!」と叫んで走り出ていった。リタは顕現は早かったけど魔力はあまり高くはなく、大きな宿を営む実家の看板娘として働くのだ。顕現が早いおかげで早く家に戻ってくることになり、ご両親は喜んでいるらしい。


 他にも、当時からいた子の半分以上が巣立っていき、顕現前の私を知るのは数人しかいない。その子たちは今も私を「ミアさん」と呼んでいるけれど、その後入ってきた子たちは何故か「ミア様」と呼ぶ。
 初めは戸惑ったが、彼らからみれば、候補とはいえ魔導師の私はルカ様と同じように思えるのだから、と今は納得している。


「ミア様、これでいい?」
最近顕現できたばかりの子が、嬉しそうに水差しを差し出した。中には半分ほどの水が入っている。この子の魔力は1200。初めはこのくらいが限度だろう。
「うん、充分だよ。よくできたね」
私が誉めると、その子は目を輝かせた。

 私はルカ様のお手伝いもして、彼らの指導もさせてもらっている。ルカ様のいるこのクルム村のように、どの町や村にも必ず魔導師がいるわけではないので、旅の魔導師には、顕現前後の子供たちを導くことは重要な仕事。
 いずれこの村から旅立つだろう私も、しっかり身につけておかなくてはならない。

「じゃあ、次はこの水を、もっと増やしてみよう? まず……」
こうして教えていると、ルカ様が私に教えてくれた時のことが次々に浮かんでくる。ルカ様の想いを追体験しているようで、私には楽しい時間でもあった。





 ある日、ルカ様に呼ばれ部屋に行ってみると、ルカ様の机の上に大きな鳥がいた。それは王宮からの使いで、ルカ様は手紙を開いて顔をしかめている。

「ルカ様?」
「……ミア、王宮に呼ばれた。明日発つぞ」
「はい、行ってらっしゃいませ。留守中のことは……」
ルカ様は手紙を私に押し付けた。
「違う、おまえも行くんだ」

 ルカ様に渡された手紙は、なんと国王様からのもので。文面は予想外にざっくばらんな雰囲気だったけれど、準備が整ったので私を連れて王宮へ来い、魔導師の認定をするから……というようなことが書かれてあった。

「ええっ! ルカ様、これ……?」
「見てのとおりだ。これで晴れて一人前の魔導師になれるぞ」
「……はい!」





 魔導師認定のためには、当然フルチャージが必要で。

 一年経っても、私はベッドに入るとルカ様に翻弄されまくり、息も絶え絶えになる。ルカ様も普段は絶対に見せない、思い出すのも恥ずかしいあれやこれや……を私にはさらけ出す。

 その夜も、終わった後でルカ様が私を引き寄せて、私の胸に顔を埋めた。これもルカ様の意外な一面で、ルカ様はこれがお気に入りらしい。……まあ誰かに言っても、絶対に誰も信じないだろうけど。


「顕現して、1年と1ヶ月か……。思ったよりも早かったな」
「ルカ様……?」
ルカ様の声に、わずかに憂いが感じられて、私は心配になって尋ねる。
「やっぱり……私では、まだ早いとお考えですか? もしそうなら、私は……」

「そうではないよ、ミア」
ルカ様は顔をあげて微笑んだ。
「可愛い小鳥を放つ時が、いよいよ近づいてきた、ということだ」
「ルカ様……」
「大丈夫だ、ミア。おまえならどこへ出しても文句など出ない。自信を持って挑め」
「はい、ルカ様……」





 翌朝。
「行ってらっしゃい、ルカ様」
「ミア様、頑張ってね!」
館の子たちに見送られて、私とルカ様は出発した。

 ちなみに私やエリンがいる時は良かったけれど、今は年の若い子たちしかいないので、今回の留守中は村長の奥さんが見てくれることになっている。それでもなるべく早く戻りたいところだ。


 皆が見えなくなったところで、私とルカ様は魔法を使って風に乗った。空を飛ぶわけではない。ほんの少し浮くだけだ。そして追い風を受けて進む。これで、通常は一泊しないとたどり着けない王宮に、半日で着けるのだ。

「鳥みたいに高い所を飛ぶのと、どちらが良いのですか?」
「もとが鳥ではないからな。まあ、楽しくないとは言わないが、私はこのほうが効率がいいし、楽だ」
「そうなんですか?」
「一度やってみれば分かるさ。意外に疲れるぞ」

 そんな緊張感のない、それでも魔導師ならではの話に興じているうちに、本当にお城が見えてきた。


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